軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

とても不安になる村長代理

「――と、まぁそんな経緯で今は私が次期村長として 辣腕(らつわん) を振るってるんですよ」

「……うん? ウチの村の村長ってそんな大変な仕事ないだろ? 全部人に丸投げするだけだぞ。せいぜい飾りとして執務室に座ってるだけで」

「私やパパにとってはそうでも、慣れてないアメリアさんにはキツかったみたいですよ? 元々蛇足だから椅子が合わなかったんですかねぇ」

にっこりとソトが笑って答える。

と、ここでソトが寝袋のようなものを手にしていたことに気が付いた。

「で、その寝袋みたいなのはもしかして」

「はい! アメリアさんの抜け殻です! さすが亜神級ラミア、このまま寝袋にしても大丈夫な品質ですよ。……あ。あげませんよ? 今後アメリアさんの脱皮蛇皮は全部私のものですからね!」

「ちょっとまて。今後全部って」

「だって一回こっきりなんて一言も言ってませんもん」

ソト、恐ろしい子……ッ!?

「そのくらい貰わなきゃ働いてられませんからね!! 代謝がよくなって脱皮しやすくなるように毎日アメリアさんのヘビ足に回復魔法かけながら撫でてあげてるんですよ」

「さすがに村から帰ったら勘弁してあげなさい」

「えー? じゃあ帰ってから5本くらいで許してあげるとします」

まったく、アメリアさんがこんな悪魔な契約を交わしてしまうとは……そんなに追いつめられていたのだろうな。

「人に任せりゃいいのに、アメリアさん真面目なんだなぁ」

「まったくですね。ま、おかげで抜け殻貰えるからいいんですけど!」

「ケーマ、ソト。それはもういいから村の様子でも教えてくれる?」

「あ、はい」

ロクコに促され、ソトは村の様子について話す。

「と言っても、特に四天王の皆さんとその関係者が働いてるくらいであまり変わったことはないですね。しいていえば、ドルチェさんの配下のレイスがひとり口説かれて村の男と結婚式を挙げたくらいで」

「は? ちょっとまて。俺らが出てまだそんな時間たってないのに……電撃結婚だな」

部下を定住させることで村に監視を仕込んだか……おのれドルチェさんめ。

「ソト。その結婚は却下しなかったのか? 村長代理の反対があれば引き延ばしなりなんなりできただろ」

「それが『勇者ワタル告白記念公園』の『伝説の木の下』で告白されての結婚だったので、却下するわけにもいかなくて」

「……それは、ああ、してやられたな」

現状、ワタル公園の伝説を作るべく、そこでの告白が成功したら反対するわけにもいかない。政策を利用された感じだ。

「……ケーマ、それって私のせい、かしら。ごめん……?」

「気にするな。見られて困ることはあるが……スパイと分かってるならしっかり見張ればいいだけだしな」

「あ。ママ、パパ! そのレイスちゃんは私がしっかり躾けたので大丈夫ですよ! 定住にあたってドルチェさんから買い取りました。スパイ技能を仕込まれてるレイスだったので少し高かったですが、私の【収納】ダンジョンの所有モンスターになりました」

にやり、と笑うソト。

「……それは、よくやったな、でいいのか? ウチのダンジョンの一番の機密はソトの能力にまつわるところと言っても過言じゃないんだぞ? 大丈夫か?」

「大丈夫です。それよりも買取につかった分を経費として請求したいです」

「まぁ、それは当然だな。許可しよう……いくらかかったんだ?」

というか、ソトの 手持ち(こづかい) で足りたんだろうか。

「キヌエさんの靴下5足でした」

「……え? 靴下で買ったの?」

「はい。コレクションから。……まったく、ドルチェさんってば靴下に興味ないフリして価格を吊り上げてくるなんて!」

逆に、靴下で買われたレイス(スパイ技能仕込み済み)が居るの?

「……あー、まぁ、キヌエさんには俺からも言っとくとして。ドルチェさんは本気でそれでいいって言ったのか?」

「はい。なにせレイスちゃん本人も強く希望してましたからね! 熱烈に口説かれたそうで、本気で惚れちゃったそうで。あ、ウチの配下になってから命令で確認しましたがガチです。今後は人間として生きていくそうです」

「そこまでの覚悟で!?」

それほど熱烈に口説いたヤツ誰だよ。驚きだよ。

「交渉が靴下5本でまとまった時にはあまりの高値にレイスちゃんもホロリと感動の涙を流していました!」

「それは絶対違うと思うが……まぁ、危険が無いならいいけど」

「いやー、クーサンさんにも春が来ましたねー」

ウチの村のメイン大工じゃねーか。

……まぁ、元々ハクさんの手配で送り込まれた大工(本人自覚なし)らしいし、ある意味丁度いいといえば丁度いいのだけど。

「まぁそんなわけで、概ね平和です! パパ達は安心して引き続き旅を楽しんでくださいね!」

「お、おう。……ロクコ、これ大丈夫かな」

「まぁ……大丈夫じゃない? ケーマが居ないなら、最悪ゴーレムまわりについての切り札は隠しきれるでしょ」

俺達はもう少しだけ親子水入らずで過ごし、船へと戻った。

……村はしばらくソトに任せるとしよう。

そして、さらに数日後。俺達はようやくワコークへと到着した。