軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ただいま

「ただいまー」

俺はツィーアへの出稼ぎから帰ってきた。

一時的にロクコと距離をとるべく遠出したわけだが、なんやかんや出稼ぎ先でお茶会してるロクコと会ったりであまり距離をとれなかった気もしなくもない。

というか、いくらダンジョンコアだからって遠出したダンジョンの中でお茶会してるとか流石に想像の 埒外(らちがい) なんだが?

近場の町のダンジョンだから、これも近所付き合いの範疇、ってことになるのかもしれないけどさぁ。

「おかえりケーマ。お土産は?」

「……ほいよ」

イチカに言われて買っといてよかったよ。俺は露店で見つけたネックレスをロクコに渡した。素焼きの土をビーズのようにして組み合わせた、民芸品だ。

素朴なデザインが気に入ったのと、ロクコに似合いそうだと思って選んだのだ。

「わーい! ありがとうケーマ、愛してるわ!」

「うん。俺も……だぞ?」

「そこはしっかり言ってよ。あとネックレスなら、ケーマの手で私につけてくれなきゃ」

「お、おう。あいし、てぅ……ハズいから勘弁してくれ……」

俺が思わず顔を押さえてうつむくと、ロクコはにまぁと嬉しそうな顔をした。

なんだよその顔はよぅ……!

「え? ケーマが可愛かったから」

「可愛いとか言うなし……」

「いいじゃないの。そうやって顔を真っ赤にさせてるところ、すごく好きよ?……それはそうと、このネックレス、ネルネにも見せたいわね」

「ん?」

はて? と俺は首をかしげる。

「どうしてネルネを?」

「え? ケーマ、それ狙ってこの土のネックレス買ってきたんじゃないの?」

「いや、俺は単にロクコに似合いそうだなって思って買っただけだが」

「そ、そうなの。へぇ。へぇー……?」

と、ロクコが照れながらその手にあるネックレスを弄る。

改めてネックレスを見る。……模様が刻まれている焼いた土、ネルネ、とくれば――ああ、なるほど。

「ネックレス型の魔道具を作れるな」

「そうよ。そう言うと思ってたのよ。……私に似合いそうだってだけとかぁ……許す」

「? 何をだ?」

「なんでもないわよっ!」

うーん、分からん…

「ということがあったんだが、俺は何を許されたと思う、ネルネ?」

「えー? それを私に聞きますかー?」

だって俺の配下で恋人持ちなの一応ネルネだけじゃん。ニクとマイオドールはなんか謎に婚約継続してるけど、恋人というか友達だし。

ついでにロクコからネックレス型魔道具についての話があったので会う理由もあった、というのもある。

まぁ、たまたま宿のスタッフ休憩所で会ったわけだけど。

「でもまー、そーですねー……何かの記念日ー、とかー?」

「記念日……」

そういわれて何かあったかと思い返す。

……誕生日、とかか? いや、俺そもそもロクコの誕生日知らんな?

「ワタルは結構マメでしてー、出会った記念日とかー? プレゼントもらいましたー」

「ワタル、そんなこまめに日付覚えてるのか。凄いな」

「私も覚えてなかったのでー、今日が記念日でとか言ってましたー」

うーん、俺とロクコが出会った日……っていうと、多分もうちょっと先だよな。

たしかダンジョン集会の少し後のはず。

「ではー、結婚記念日ー?」

「いやいやいや。まだあの公園できてからも1年経ってないぞ?」

「……じゃあなんでしょうかねー?」

俺の気付いていない記念日がある、とかか?

気になるが、本人に確認するわけにもいかない気がする……

と、そこにレイがやってきた。

「おやマスター、それとネルネで何の相談です?」

「おう、レイか。……いや、ちょっと恋愛相談?」

「恋愛……ネルネ相手にですか? 相手が間違ってませんか? ネルネですよ?」

熱でもあるんですか、と言わんばかりのレイ。確かにネルネだもんなぁ……

「俺も正直どうかと思ったけど、人と話すことで考えをまとめたりすることもできるからな。それに、意外とまともに役立つ指摘ももらえたぞ」

「なんと。やりますねネルネ」

「えへへー、それほどでもー」

そうだ、ついでにレイにも聞いてみようかな。

「なぁレイ、ここ数日前後で、ロクコ関連の記念日を何か思いつかないか?」

「え?……ロクコ様の記念日というと……マスターと情を交わして何か月目、とかそういう感じのでもいいんですか?」

「……! その発想はなかった。マンスリー、ハーフアニバーサリー、その視点はなかったぞ。さすがレイだ」

「確かにー。当日だけ、とは限りませんよねー。さすが大幹部ー?」

「いやはやそんな。ええ、もっと褒めてください。私は褒められて伸びますので」

得意げなレイを更に褒めていく。

いよっ聖女! マッサージの名手! 忠実なる吸血鬼!

「ふへへへ……あっ、そういえばマスター」

「ん? なんだ?」

デレデレと照れていたレイが改めて言う。

「イチカ先輩との旅行はおたのしみでしたね。ロクコ様も『イチカが側室かぁ……やっぱりニンゲンの女が良いのかしら』とか言ってましたよ」

……おう。

「それだぁああああ!! 違うぞ、違うからなロクコーーー!?」

「え? 何がです?」

「あれー、ちがったんですかー?」

その直後、俺はロクコに対して必死で言い訳したのは言うまでもない。

誤解だからぁあ! イチカとはそういうのは何もないからッ! マジでッ!!