軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン:『光の楽園』(2)

そうして俺達はダンジョンの奥の方までやってきた。

「少し休憩するか、ムゾー」

「ああ、そうしよう。イチカとケーマさんもいいか?」

「ええでー」

「了解。んじゃ、休むとするか」

ダンジョンのフロアの区切りのスロープになっている通路で休憩をとる。

区切り付近はモンスターがあまり出ないらしい。

……言われてみれば、ウチでも区切りになっている場所ではモンスターの管理が面倒だから、あんまり混ざらないように寄らせないんだよな。

「しかしあれやな。ウチが一番足引っ張っとるなぁ。やっぱ腕ぇ鈍ってるわ」

「普段、食っちゃ寝してるもんな、イチカ」

「ん、んなこたぁないし? ご主人様よりちゃんと働いとるし?」

俺はほら、オフトン教教祖は寝るのがお祈りだから。

実際多分魔力も上がってるから。

「ほら、あれだけ食ってもウチ、ちゃんと体型維持しとるやん!?」

「それはまぁ、少し思ってたけど」

「なんなら脱がして確かめてもろぅてもええねんで? ご主人様」

「それは遠慮しとくわ」

なんやかんやロクコが居るからね、俺には。

「……よくあの誘惑を退けられるな。凄い胆力だと思わないかムゾー」

「それな。俺なら秒で飛びつくぞ、ウゾー」

「安心せぇ、お前らには色仕掛けせんから。甲斐性を考えろ甲斐性を」

しっし、と払うように手を振るイチカに、「俺達もBランク冒険者なんだが……」と落ち込む二人。

うん、正直こんな賭博癖と食道楽で金を食いつぶすのが得意な女より、もっといい相手がいると思うよ。

ウチの村の女は色々アレだから、ツィーアとかドラーグ村とかで探すのが良いと思う。

「……ツィーアで婚活パーティー開いても良いかもな? 領主様に打診してみるか」

「ちょっとまて。今領主様と言ったか? 聞いたかムゾー」

「聞こえたぞウゾー。領主様に打診とか言ったぞ。気軽に打診できるのか……」

ウチの教会に週一でお祈りに来るからな領主。娘のマイオドールもウチの村に住んでるし。

マイオドールはニクと婚約してて、なんかこのまま結婚する気満々だ。

……まぁ、マイオドールもそろそろ貴族学校があるらしいし、そこでいい相手を見つけるだろう。多分。

「今のうちに食事も済ませておくか……って、ケーマさん? それは?」

「ん? 飯だが? ウゾームゾーも食うか? 今はパーティーだし、タダでいいぞ」

「本当か! じゃあ遠慮なく!」

と、俺はウゾームゾーに【収納】から取り出したハンバーガーを渡す。イチカはもう食べてる。

「ご主人様、おかわりー!」

「はいはい。一つまでだぞ」

「これが甲斐性か……俺らもお代わりしていいのか?」

「くっ、俺達の食べてた携帯食が木の板に感じてしまうぞ、ウゾー……!」

ちなみにウゾームゾーは自家製の干し肉を食べようとしていたようだ。

ハンバーガーの代わりに少し貰ったが、ホントに硬い。ソトならこういうのもパクパク食べるんだけどな。

「せめて固焼きのスティックパンも一緒に持ってこいや。干し肉とパンを一緒に水筒にツッコんで戻しておいて、スープとして食うのが一番マシなんよな」

「へぇ、そんな食べ方が。さすが食欲魔人」

「水筒複数持ちを前提にしてるあたりガチだよな」

食欲魔人はイチカの古い二つ名だな。納得しかない。

「さて、それじゃそろそろ行くか。……イチカの嗅覚で目的のアンブロシアがどこにあるか分かったりしないか?」

「おいおいご主人様。そういうのは犬獣人のニク先輩に言うべき話やで」

それもそうだけども。

「とはいうても、くんかくんか……うん、あっちの方に甘い匂いがする気がするわ!」

「だそうだけど、どうするよ二人とも」

「……まぁ、他にアテもないしそっち行くか? ムゾー」

「そうだな、ウゾー。俺も構わないぞ。食べ物相手なら信頼性が高そうだ」

と、イチカの鼻で行く方向が決まった。

途中、槍を持った歩く花をへし折ったり、イノシシの如き突進をしてくる巨大な種を割ったり、甘い香りの蜜を垂らしている食人植物にイチカが寄っていかないよう首根っこを押さえつつ燃やしたりした。

尚、その蜜は麻痺毒だった。これはこれで売れるらしい。

「麻痺毒って解ってるんだから、舐めるなよ?」

「ウチ毒耐性あるから多少は大丈夫やで。はぁー、痺れる甘さ」

とはいえ、村で食べるスイーツの方が甘くておいしいので、食べ過ぎることもなく奥へ。

「む、この先に何やらヤバそうな、いや、不可解な気配があるな……」

ムゾーがそう言って足を止める。

「どういう気配だ? ボスってことか?」

「分からん。が、こういう気配の時は避けておいた方が無難だ。どうするケーマさん?」

ウゾームゾーの勘を信じるなら、引き返す方が良いだろう。

だが、俺達は割と強い。大抵の敵には勝てると思う。

「よし、ここは俺が偵察してこよう。俺の魔法なら多くの状況に対応できるしな」

念のため【気絶耐性Lv9】もオンにしておく。

「わかった。腰にロープをつけておいてくれ、倒れたりしたら引っ張って回収する」

「頼んだぞケーマさん!」

「帰ってきたら、ウチのこと好きにしてええからなー」

と、見送られて俺は一人先行して様子を見に行く。

そっと胸ポケットに忍ばせていたフロストリザードのゴンタが顔を出す。ウゾームゾーがいないなら、こいつも戦えるからな。フッフッフ。

「さぁいくぜ……!?」

と、足を踏み入れたその部屋には。

「あらケーマ。遅かったわね?」

「やっほー! いやー、おじちゃんの活躍みてたよ! 楽しいな!」

「いらっしゃい。ようこそ、歓迎するよロクコのマスター」

背もたれ付きの白い椅子にもたれかかり、白いテーブルの上の紅茶を飲んでいるロクコ。

茶菓子に手を伸ばすイグニ。

そして、この茶会のホストと思われる紅茶を注ぐ金髪の男装の麗人……無駄に高い位置からよく零さず淹れられるな?

日の差し込む明るい部屋。黄色い果実の生るその木の下で、その3人がお茶会をしていた。