軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン:『光の楽園』

「で、ツィーアに来たわけだが、こっからどうする?」

乗合馬車に乗ってやってきたツィーア。元々出稼ぎという予定だったウゾームゾーなら、何かしらのアテがあるのだろうと俺は聞いた。

「ああ。『光の楽園』というダンジョンがあるんだ。そこに稼ぎに行く予定でな。な、ムゾー」

「あれ? 『光の花園』じゃなかったか? ウゾー?」

「どっちも正解やで二人とも。一応ギルドの登録だと楽園の方やった気もするけどな」

イチカが補足する。そのダンジョンは楽園とか花園とか、そんな平和的な呼ばれ方をしているらしい。

「このダンジョンのおかげで、ツィーアは農業が盛んなんよ、ご主人様」

「ああ、ダンジョン回りってなんか作物がよく育つんだっけ? ウチの村でもそうだな」

ダンジョンから出るマナが植物の育成にいいらしい。

「それもあるけど、特に『光の楽園』は植物系の敵が多く出てな。ゴブリンよりいい肥料になるんよ」

「へぇ、そうなのか」

と、植物系のダンジョンと聞いて、俺は10番との闘いで共闘したマイコニド先輩を思い出す。

たしかマイコニド先輩は 植物戦士(ソルジャープラント) を使っていたはずだ。

「 植物戦士(ソルジャープラント) やマイコニドが出るのか?」

「せやな。特にマイコニドは焼くと美味いで! バター焼き食いたいなぁ」

「ハハハ、イチカさんは食欲旺盛だなぁ。なぁムゾー」

「そうだな。見ていて好ましいと思うぞ、ウゾー」

……もしかして、マイコニド先輩のダンジョンである可能性……あるかもな?

ギルドで挨拶を済ませ、俺達は早速ダンジョン『光の楽園』に向かった。

もちろんバターも忘れずに持っていく。

ダンジョンはツィーアの東、城壁の外にあった。

小麦畑に囲まれた中、ダンジョンの出入口の受付を兼ねた納屋が建っている。冒険者ギルドとは別に兵士もここに詰めているらしい。

受付でギルド証を提示する。

「2、3日潜る。ギルド証はこれだ」

「ウチはこちらの男爵様の奴隷やから、よろしゅうなー」

「はい、確認しました。Bランク冒険者でございますね。……ゴレーヌ男爵様、ウゾー冒険爵様、ムゾー冒険爵様。ご健闘をお祈りします!」

と、受付で丁寧に見送られて俺達はダンジョンに入っていく。

俺とイチカが後衛、ウゾームゾーが前衛となってダンジョンを進むことになった。

光の差し込む明るく緑にあふれたダンジョンだった。床や壁は緑色の瑞々しいツタで覆われている。植物系モンスターの存在を考えるとツタにはあまり近寄りたくない。いつこのツタが襲ってくるか分からないからだ。警戒は怠れない。

「戦闘では水魔法は避けた方がええな。ウチは【ファイアボール】で支援するで」

「火魔法使って大丈夫なのか? 燃えない?」

「枯れて乾いてるならともかく、こんだけ新鮮なツタならそうそう燃えへんよ。もし燃えたらそんときゃ頼むでご主人様」

とはいえ、浅い層は初心者向けということもあり、俺達はそれぞれ一人でも十分に進める実力を持っている(ということになっているBランクだ)。

警戒は怠らないが、雑談しながら進む余裕があった。

「にしても、冒険爵様呼びにはまだ慣れないな。ムゾー」

「そうだな。俺もだウゾー。ケーマさんはやはり慣れているのか?」

「いや。俺も男爵呼びされるのは滅多にないからすげぇ新鮮だわ。普段は村長で通ってるしな。……ところでイチカはなんで自分の冒険者証出さなかったんだ?」

「ちょっと安上がりになるからやな。ご主人様、税を免除されとるやろ?」

……そういやそんな特典もあったっけ?

「なんと! 税を免除されるほどの功績か……いや、それも納得だな。男爵になる程だものな」

「ああ。ケーマさんはとんでもないなぁ……おっと、早速敵が出てきたから倒したぞ」

と、雑談しながら潜る。出てきたのは茶色いゴブリンだった。土属性が強くていい肥料になるんだとかなんとか。ムゾーがさっくりと切り捨てた。耳だけ刈り取って死体は放置スムーズな手際だった。

おっと、今度は歩く食人植物……観察する前にウゾーが切り捨てた。花びらを回収している。

「随分と腕を上げたみたいだな」

「ケーマさんほどではないさ。が、まぁ、魔国でだいぶ揉まれたからな……」

「ああ。そう言ってもらえると嬉しいな」

褒めると謙遜はするが、若干得意げに笑うウゾームゾー。

魔国での俺の活躍を基準に話してるっぽいが、今の俺には毛布がない。あれくらいの防御力は期待しないでくれよ?

「それで、稼ぎの狙いはなんだ?」

「ああ。アンブロシアという果物だ。奥の方にあるらしい」

「高いポーションの材料になるんだと。常設だがBランク依頼だからいい金になるぞ」

ひとつあたり銀貨50枚になるらしい。一か所で複数個手に入ることが殆どなので、見つければ金貨数枚くらいの収入になるそうだ。

ほほう。と、こっそりメニューを立ち上げてどういうモノかを確認してみる。

1つ1000DP、黄色いリンゴのようだった。……最悪、手持ちに持ってきたDPで交換すればいけるな。割のいい仕事だ。

「……果物かぁ。じゅるっ」

「おいおいイチカ。納品物だぞ、食べるなよ?」

「いや、大量に見つかったら1つくらい食べてみても良いかもな。俺達も気になるし。なぁムゾー」

「そうだな、1つくらいは食べてもいいだろう。その時は俺が切り分けよう」

「おー! 話が分かるやん。嬉しいでぇ、ウゾームゾー! 食事は大事やしな! な!」

バシバシと二人の背中を叩き喜ぶイチカ。

まったく、随分甘い対応だ。やはりイチカに良いところ見せたいのだろう。俺も今回は息抜きに来てるようなものなので別に構わないけど。

「俺も少しは活躍見せておこうか。次の敵は俺がやろう」

「そうか? それは楽しみだ」

「ケーマさんなら任せられるな」

と、しばらく歩いていると出てきたのはツタで出来た身長2mほどの巨人。アイヴィジャイアントだった。ちょっとくらい穴が開いても効果が薄そうな奴だ。

【エレメンタルショット】とは相性が悪いな。

「まぁ素直に焼くか。……敵を素早く燃やし尽くせ――【ファイアボール】」

ぽいっと火の玉を投げてやると、ツタの巨人は一瞬で炎に包まれ、燃え尽きた。

うん、イメージ通り。

「……こいつは動く壁のような存在で、飲み込まれないように逃げるのが鉄則、だったんだがなぁ。まぁケーマさんだしこうなるか」

「……あ。ケーマさん。これだと素材や討伐証明部位が回収できないからもう少し手加減してくれていいぞ?」

「おっと。それもそうだな、すまんすまん」

まぁ俺達Bランク集団だからね。初心者狩場を荒らすのはほどほどにして、さっさと奥行こうぜ。