軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作成、『暴食』ギミック

さて、ナリキン達が聖王国に向かっている間にダンジョンも改築してしまおう。

まぁ締め切りや納期のある仕事ではないのでのんびりと。あんまり急に変えて転換期とか言われても困るし、じっくりと。

まずは『暴食』である。

従業員休憩室にて、イチカに『暴食』ギミックについて意見を聞いてみたときのことを思い出す。

「ん? そやなぁ。『暴食』っちゅーことは食欲を刺激する罠にするってことやろ? そんなら美味そうな良い匂いのする毒でも用意したらええんちゃう? 命を取らないなら下剤とかで。そんな都合のいい毒があるかどうかはさておき」

「美味しそうな毒、か。ふむ」

まぁそんな都合のいい毒があるかどうかと言われると、えーっと。素人の料理したフグ刺しとか? ……ないな。

「他にはないかな」

「他……んんー、お金入れたらダンジョン内でキヌエの料理が出てくる場所があるとか?」

「キヌエさんの負担がヤバいな」

時を止めて相対的には一瞬で料理を作れるキヌエさんだが、お金を入れられるたびにキヌエさんが頑張るんじゃ大変だろう。

「つか、『強欲』も『色欲』も『怠惰』も足止めトラップなんやろ? うっかり死ぬことはあるかもやけど。そんなら、美味い食べモンで部屋に繋ぎ止めるんが『暴食』なんとちゃう?」

「お、一理ある」

「ちゅーわけで、美味い食べモンの試食が必要ならウチが手伝ったるから絶対声かけてな!」

というわけで、まぁ足止めする食事トラップである。ついでに他のトラップも足止め、時間稼ぎに徹する形で実装しようと基礎コンセプトを決めた。

でだ。具体的にどういう実装にするかというと――

『席に着くと、美味しい食事を1から作ってくれる罠』、だ。

途中退席は認められない。煮込み料理を1から作って完成するまで席から離れてはいけないという足止めトラップだ。

勿論、これはキヌエさんの負担が増さない形で実現しようと考えている。当然コックはゴーレムになるわけだ。

「というわけで、キヌエさんには最初だけ料理するところを見せてもらおうと思ってな。悪いけど1回だけお願いできるか?」

「勿論構いません、マスター。それでは【料理人】スキルを使わずに料理しますね」

【料理人】スキル使うとおいしさがアップするけど観察もできないからな。

「と、その前に。食材はどうするのですか? 料理をするには食材が不可欠でしょう」

「都度DPで補充、ってのはさすがに手間だからな……ミカンのところの草スポーンみたく、食材がスポーンするものを使おうかと」

「……そんな夢のような代物が?」

確かに食材がスポーンするとか夢のような代物だよな。働かなくて生きていけるもの。

「とはいっても、出てくるのはミノタウロスや植物系モンスターとかだな」

「え、それはつまり」

「モンスターを食材にすれば、実質スポーンで食材を呼び出せるようなもんだ。ミノタウロスとか植物系モンスターの必要な部分だけとって残りは処分、ということになるけど。あと初期投資もかなりのものになるけど……」

倫理的に考えたら非常にアレなところなのだが、生憎アイテムスポーンとかいう存在はないのである。スポーンモンスターに魂は無いらしいのであまり気にしないことにしよう。食べるという事は命をいただくという事。

「なんとも贅沢ですね」

「『暴食』に相応しい贅沢さということでひとつ」

……まぁ実際は無駄にせず残飯処理でスライムを培養するようなシステムにできないかと思っている。食い逃げ犯をそのスライムに襲わせたりもいいな。スライム肉が食べられるならそれもまた食材にできるところ。食えるかは知らんけど、酸性ならお酢の代わりに使えるかもしれない。

「食材は……ミノタウロスとキラーウィード、キラートマトとかかな」

キラーウィード、キラートマトは、牙があって噛みついてくる草やトマトだ。キラーウィードは葉野菜代わり、部位によってコショウみたいな調味料にもできるらしい。イチカに聞いた。

「……マッシュ系も欲しいですね」

「キノコか。確かに煮込み料理の具にあると味が1段上がりそうだな」

「我儘をいえば、根菜があるとさらに良いのですが。ポテトやニンジン、あとタマネギも……」

キラーウィードやキラートマトの派生であるかなぁ……あ、ショットポテト? ジャガイモを弾に戦う植物系モンスター、こういうのもあるのか。ちゃんと食えるジャガイモなんだろうなこれ?

ニンジンは……スピアキャロット。敵を捕捉したら突き刺さるように飛んでくるニンジンか。なんなの、植物界で射撃系が流行ってるの?

タマネギは……おばけタマネギ? あ、ゴースト系じゃなくて単に見た目が怖いだけの雑魚モンスター。こういうのもあるのか。

「案外、見てみるとあるもんだなぁ食材になるモンスターって」

「モンスター食材は美味しいのも多いですよね。あ、ミノタウロス等でなくイッカクウサギのスポーンでもよいのでは?」

……うん、キヌエさんはミカンのダンジョン見てないからそういう事言えるよな。まぁ、ミノタウロスより遥かに安いし廃棄部位も少ないだろうから良いか。

というわけで、マスタールームにスポーン付きキッチンを用意した。やはり一度キヌエさんに料理してもらう。コンロの魔道具は以前からお宝に出ているのでそれを流用だ。

「ボタン一つで罠が作動して一角ウサギは肉になる。新鮮なら血抜きもいらないな」

「流れた分はレイのおやつにでもしましょうか」

それはレイが喜ぶかもしれない。吸血鬼がウサギの血でもいいのかは分からないけど。

と、一切の躊躇なくぽちっとボタンを押すキヌエさん。檻の中のイッカクウサギはあっさり肉になった。さらに毛皮をさくっと剥ぎ取るキヌエさん……あー、ここもゴーレムにさせないとだな。毛皮はお宝に回してもいいかもだ。

「事前の相談通り、イッカクウサギ肉をメインにしたシチューにしましょう。ウサギのミートパイもいいですが、パイでは小麦粉が必要ですからね」

「それじゃあ記録はしてるからいつでもやってくれ」

「はい、かしこまりました」

そうして、キヌエさんは調理を開始した。

……

……

……

いつもこんな手間暇かけてるのか……

「なんというか、大変だなぁ」

「【料理人】スキル発動中は料理以外の事ができませんし、手間をかけられるならかけられる方が暇がなくてよいのです」

「あー、その。なんていうか苦労を掛けてるな……」

「いえいえ、ダンジョンやマスターのお役に立てることこそ私たちの喜びですから」

料理をしながら、ぺこりと頭を下げるキヌエさん。

うーん、これは何か褒賞を与えるべきではなかろうか。

「……何か欲しいものはあるか?」

「では、マスターのお手製で新しいエプロンでも頂ければ」

「そんなのでいいのか?」

「そんなのがいいんです」

キヌエさんは嬉しそうにほほ笑んだ。

こうして、キヌエさん協力のもと『暴食』のギミックが大体できあがる。

一度手順を記録したので、あとはゴーレムで再現するだけだ。

味付け等の細かい調整は、約束通りイチカに手伝ってもらおうかな。