軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ちょっと、話しようか。

俺は、564番コアに話を聞いてみることにした。

人化してる姿を見るのは初めてだが、こいつが564番コアだということはアイディに確認済みだ。

バフォメット型ダンジョンコア――564番コア。かつて俺達とダンジョンバトルを行い、そしてデュアルコアとか言うシステムで629番コア、ミカンのサポートに成り下がった奴だ。

「ちょっといいかな」

「な、なんであるか!? 俺様は貴様に話などないぞ!?」

「いいからいいから、ちょっと来てくれる?」

俺が声をかけると564番コアは明らかに挙動不審に反応していた。

「ああワタル。しばらくクロのこと頼むよ。すぐ戻ってくるから」

「え、ああはい。分かりました」

「お気をつけて、ご主人様」

「ああ。……じゃ、行こうか剣士君?」

「よ、よかろうっ! 望むところよ!」

564番は、ハクさんによって俺の部下になったミカンの、さらに手下という位置付け。つまり俺の立場は564番の上司である。

故に564番は俺の命令には逆らえない。立場的に。……まぁ立場を隠してるプライベートっていうなら逆らっても良いのだが、564番は大人しく俺の呼び出しについてくる。

……ここらへんで良いか。

「こ、こんな人通りのない通路に連れ込んで何のつもりだ貴様ッ!? まさか俺様にいやらしいことをする気ではあるまいな!?」

「なんでそうなる!? なんで俺がいやらしい事をすると思った!?」

「む、だって貴様、顔が何か企んでる顔であるぞ? 企みといえばいやらしいであろう?」

「違うわ! 少し話を聞きたいだけだ!」

くっそ、謎理論! これも文化の違いなのか? いや、564番特有の考えか?

「む、そうか。この名無しの剣士である俺様に何を聞きたいというのだ?」

「……なんでこの大会に出てるんだ、564番?」

ずばっと名前を出して聞くと、564番コアは明らかに動揺した。

「ご、564番?! だだだ誰のことだ、知らんな! 俺様はそのようなカッコ良くて強い、バフォメットの魔族など知らぬ! お、俺様はその、な、名無しの剣士だぞ!」

「もうバレてるから。そういうのいいから」

「なぁッ!? く、くくく、よ、よくぞ見破ったな! この俺様の完璧な変装を!」

「お、あっさり認めたな」

「ふん、既に確信を得ている相手に今更足掻いても無駄と言うものよ。で、何の用であるか? 俺様はきちんと予選大会から勝ち抜いてきた立派な出場者であるぞ。ここにいることに文句を言われる筋合いはないッ!」

まぁそうだろうけど。むしろそうじゃなかったら文句言われてただろうに。

一応大魔王様も気付いているであろうのに見逃してるあたり、「ダンジョンコアとか関係ない一般枠ならいいだろう」という判断なんだろうが。

「そうかい。まぁ、大魔王様が何も言ってないならいいんだろうけど……で、なんで大会に出ているかって聞いてんだよ。お前追放とかされてただろ?」

「む、それか。いやなに、あのウサギの下についたものの仕事がなくてな。暇だったのよ」

どうやら暇だったらしい。

……やることないんだろうね、実際。ミカンの仕事はウサギカフェくらいで、564番コアの事なんて持て余すしかない。襲撃イベントも564番コアが出張らなくても良い話。

「暇だったのか」

「魔王派閥から追放されて領地も没収。DPもあのウサギの許可がなければ好きには使えず……自由に使っていいDPは1日100DPまでともなると、食い物を出しただけで消えてしまうだろう? そうなれば、やれることは修練のみであるぞ? 故に、近所でやっていた大会に出ることにしたのだ」

「……そうか、暇だったんだな」

魔王派閥から追放されたとはいえ、ダンジョンのある場所は魔王領の中。DP源となる領地は没収されたがダンジョンからそうそう離れられないコアである以上、大人しくするしかない。

せめてもの息抜きに、近所のお祭りに参加……ということか。

「まぁな。例年であれば魔族の大会に出ていたところなのだが……追放&破門された故な、仕方なく下位大会優勝からの参加を狙っておったのよ」

元々ダンジョンコア、つまり「魔族」として上位大会に出ていた身分である。しかも500番台なので長年大会に出てた実力者。実際強い。

ダンジョンバトルでこそ俺達に負けたものの、個人としての強さはアイディと同等程度――まぁ、これはアイディが600番台としては異例に強いのだろう――で、魔王流の師範代クラスの実力者だ。

うん、これは立派な優勝候補。とはいえ、この本戦に出るような連中だって大体 上位(魔族の) 大会に出ておかしくない実力の持ち主ばかり。油断してたら564番コアといえど負けてもおかしくないぞ?

「てか、魔王流使ってて良いのか? 破門されたのに」

「自ら魔王流であるとは名乗ってはいないのでセーフである! それに俺様の身体に染みついた戦い方だ、今更他の戦い方などできんわ!」

まぁ、ダメなら大魔王様が止めるだろ。俺からはこれ以上何も言わないことにした。

「……で、俺様はそんなわけだが、貴様こそなんでこんなところにいるのだ?」

「俺か? 俺は準優勝賞品の『神のパジャマ』狙いの参加だよ」

「ほう! 今年はそのような賞品であるか。珍しいな……まぁ俺様が優勝するので、準優勝は好きに争うが良い」

「え、お前ワタルに普通に勝てる算段なの?」

「所詮ニンゲンであろう? 本戦の試合を見たが、あのような連中と『いい試合』をする程度のニンゲンに俺様が負ける訳ないであろうが」

この言葉は信用しないでおこう。俺達とダンジョンバトルする時も629番のようなウサギコアに負けるはずがないとか言ってたに違いないし。

「まぁ……もし準優勝になって『神のパジャマ』手に入れたら俺にくれ」

「ふむ。俺様は優勝する予定なのだがな。だがまぁ、もし準優勝になって手に入れたらドゲザして頼むのであればくれてやっても良いぞ」

何、それだけでくれるのか。案外優しいじゃないか564番。

「契約成立だな。破ったらひどい目に遭わせてやろう」

「えっ。正気か!? ど、ドゲザであるぞ?」

「頭下げるだけで他の対価はいらないなんてなんて安上がりなんだ」

「む、むむ。まぁ貴様がそれで良いなら良いが……」

尚、魔国において 土下座(ドゲザ) はとても屈辱的な行為とされているが、別段セットでもれなく奴隷にとかいうこともない。つまり俺にとってはただのパフォーマンス。さらに言うと俺が土下座するとも言ってないから、なんならゴーレムに土下座させよう。

「ちなみに例年はどんな賞品なんだ?」

「うむ、武器や防具、魔道具が多いな。大魔王様お抱えの鍛冶師によるオーダーメイド――と言う名のDP製の魔装やアイテムもある」

「なるほど。……じゃあ『神の寝具』とかはものすごくレアなんじゃ……?」

「まぁ珍しい物が手に入った時にそれが賞品になることもある。そういうものだろう」

なるほど。運が良かったのか、それとも誰かの手回しがあったのかは謎だが、それでも『神の寝具』が手に入るなら乗らせてもらおう。

というわけで、俺と564番の間には無事話し合いが成立。俺は晴れやかな気持ちで控室に戻った。これなら無事に『神のパジャマ』を入手できそうだ。

……あ、そうだ。どうせ暇なら今後564番を練習相手としてアイディに貸し出ししても良いかもしれないな。有料で。