軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本戦大会(2)

「それにしても、魔国の魔道具って本当に進んでますね。このモニターとか」

「そうだな。帝国じゃ見たことないし、どういう仕組みかさっぱり分からん。専門家ならなんか分かるんだろうかね?」

試合を終えたワタルは、控室に戻ってきて俺の隣で試合を映すモニターを見てそう言った。

で、丁度今からニクの試合が始まるところだった。相手は蛇系獣人の毒手使い。

(手足があるのに蛇というのは不思議な感じだが、【完全獣化】というスキルで変身した場合は蛇になるかららしい)

モニター越しだが、しっかり応援させてもらおう。

「あの、ケーマさん。魔国的に毒は卑怯とか言われたりしないんですか?」

ワタルが、ニクと対峙する毒手使いを指さしつつ俺に尋ねてきた。

「それは『毒耐性がなくて、効く方が悪い』んだそうだ。……本戦出場するようなやつは毒耐性くらいあるだろうし、むしろ毒手使いと言って油断させて他の決め手を持ってるんじゃないか?」

「なるほど……ケーマさんはもはや帝国における魔国文化研究者の第一人者と言っていいのでは?」

「ははは、ないない。というかワタル、せっかく周りに魔国の人間がわんさかいるんだからそっちに聞いてみたらいいじゃないか? なんで俺に聞くの?」

「だって教える代わりに腕相撲で勝ってみろとか言いそうじゃないですか」

「……あいつらそれ聞いて『その手があったか』って顔してるぞ。今その懸念は現実になったよ」

ともあれ、ニクは毒手使いの攻撃をことごとく避けて攻めていく――が、少し動きが悪くなる。ニクを見慣れてる俺でなきゃ見逃しちゃうね。

「あれ、クロちゃん急に動きが落ちましたね。まさか気化した毒を吸ったとか?」

訂正。俺でなくても見逃さなかった。つか、戦闘のプロにはそんな『急に』とか分かるもんなのか、今の。ほんのちょっと鈍っただけに見えたぞ。

「……まぁ、呼吸止めてるのが限界になってきたんだろ」

「えっ」

「普通に戦えばいいのに息止めておく縛りでもしてるのかね。相手の毒を警戒してるのかな」

「いやケーマさん、クロちゃん開始からここまで息止めたまま戦ってるんですか」

「呼吸は隙なんだそうだ。わけわからんな」

「……あの剣筋といい、魔王流ですか」

良く分かるな。俺が魔国の第一人者とか言ってたけど、ワタルの方が詳しいんじゃないか?

そして、ニクには毒耐性なんてないはずなのだが、結局普通に毒使いに勝った。

戻ってきたニクはぴんぴんして、そのままパタパタと尻尾を振っている。よしよし良くやった、と頭を撫でてやった。

「というか大丈夫だったか? 少し爪かすったりしてた気もしたんだけど。あれも毒攻撃だよな……?」

「なんか平気でした」

「お、おう」

魔王流の特訓するにあたって毒耐性も身に着けたのかな……? うちの子の人間離れがひどい。

「お疲れクロちゃん! 良い戦いだったよ!」

「あれ、帰ってなかったのですかワタル? 今日は皆、1試合だけですよね?」

「ひどい! クロちゃんが終わるのケーマさんと待ってたんだよ?」

「そうですか。ありがとうございますご主人様」

「僕には!?」

この本戦だが、自分の出る試合が終わったら帰っても良かったりする。

ちなみにセバスはさっさと帰っていた。日課の修練をするらしい…… お嬢様(アイディ) の世話はいいのかよと思わなくもないが、まぁそういうもんなのだろう。

「というか、俺達は今日の試合全部終わるまでここで見てくつもりだけどな」

「え? あー、そういえばロクコさん貴賓席にいましたっけね……下手に入って連れ去るよりは、終わるまで待ってた方が気楽ですか」

うん、下手したら終わるまで俺達も大魔王の隣で観戦しろとか言われかねないもん。そんなの胃袋何枚重ねにしても穴が開きそうだからね。もうね。

大魔王からは逃げられないなら、そもそも戦いに行かなきゃいいじゃない戦法だ。

「ワタルはどうする?」

「お付き合いしましょう。そして一緒に帰りましょう!」

というわけで、俺達はその日の残りの試合を一緒に観戦することになった。

……あ、帰りは別々にさせてもらったよ。一回戦敗退したやつがこの機会にってワタルに決闘挑んできまくってたからね。精々稽古つけてやるんだな、俺達を壁に使おうったってそうはいかんのだよ?

はい、そんなわけで本戦2日目。今日も一日頑張るぞい! 昨日は本戦1回戦ということで人数が多く1試合のみだったが、本日は2試合だ。

そして今日を突破すれば明日には決勝の4人総当たり戦となる。是非身内で固めて準優勝賞品『神のパジャマ』のゲットを確実なものにしたい。

最悪、交渉して購入という形でもいい。

俺の相手はドラゴニュートで、ミニドラゴンに変身する『竜化』というスキルの持ち主であったが、俺に傷ひとつつけることなく敗北した。

なにせ俺は一応普通のドラゴンすら下した男だから……なんかゴメン。というか普通に強かったはずなのに『神の毛布』と【エレメンタルショット】の前にはただの馬くらいの大きさのトカゲだったよ。空も飛べてたからペガサスくらいの大きさっていうべきかな?

「というかケーマさん、昨日も使ってましたけどその魔法凄いですね?」

「ああ。だが詳細は教えないぞ? 敵に手の内を教えるわけにもいかないからな」

「ふっふっふ、ケーマさんとの戦い、楽しみにしてますよ!」

で、セバスとワタルも普通に勝った。

……ワタルはガイガンキン選手と激しいバトルを繰り広げつつ、観客を意識した魅せる戦いだった。余裕すぎる。

セバスは……ワタルとは対照的に相手の見せ場すらなく速攻勝利。どうやらアイディから戦い方の指示が出てるらしい。

そしてニクなんだが――

「すみません、負けてしまいました……」

「あー、うん。お疲れ様」

「残念だったね、クロちゃん」

――敗北した。

とはいってもニクが悪かったわけではない、相手が強かった。

正直な所、逆にホッとしたというのもあるけどな。ニクったらほんと強くなりすぎてて人間離れして魔人とかそういうのになっちゃうんじゃないかなって思ってたくらいだし。あるいはどこかで取り返しのつかない怪我でもしそうというのもあったし。

「相手の魔剣士さん、強かったですねぇ。あれは魔王流でしょうか」

「そうだな」

ニクも最近魔王流を身に着けてだいぶ強さを増したと思っていたが、より洗練された魔王流の使い手には及んでいないのだ。

しかしその魔剣士の事は(俺程ではないが)卑怯だと思っている。いや、本来ならこの大会に出てはいけない 類(たぐい) の人物であると確信している(ワタルほどではないが)。

ちなみにその魔剣士。今は控室で、俺達の後ろの方から 俺(・) に向かってちらっちらっと戸惑いと 焦り(・・) を隠せない熱烈な視線が向けられていたりするわけだが……こっそりメール機能でアイディにも確認したし間違いない。こいつは、俺達が知っている人物だ。

あとでちょっと話そうか? なぁ、564番君?