軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドラーグ村視察

温泉魔導具については、場所が原因で失敗する可能性もあるのでいくつか候補を見繕っておいてくれ、としておいた。これで万一ダンジョン領域外を指定されても「ここは場所が悪いな」と誤魔化せるだろう。なるべくダンジョン領域に指定しておくが。

起動の儀式についてもオフトン教の秘儀と秘匿することに同意してもらえたし、万々歳だな。

と、そんな約束をした上で俺達はシドにドラーグ村を案内され、見回っていた。

畑は魔道具を持ち込んでせっせと農業しているらしい。雨水をためておくタンクとかもあったが、ゴレーヌ村の畑の方が広い。

道具屋はウチのより大きいが、品ぞろえはあまり変わり映えしないな。若干パヴェーラ産の魚の干物とかが多く並んでるような、といったところ。

酒場は同じくらいかな。まぁ、冒険者が少ない分昼間は開いていなかったが。

宿屋は……なんとオフトンを使っていた。流石にスイートルームと温泉は無かったが、その分安い。いいね、客層も被らない。けどもっとこっちの客を奪っていって良いんだよ?

と、ここまで視察した感想だが――ゴレーヌ村からスローライフ成分を落として商売っ気を増したのがドラーグ村、という印象だった。生き急いでんな。村長の若さとやる気が影響してるんだろう。

そして祠だ。

神殿的な飾り柱のあるすこし大きい白い建物。中に入るといくつかの祠が設置されており、それぞれ信者らしき村人が祈りを捧げていた。商業神の信者が多いのはパヴェーラらしい、といえるらしい。( メイド仮面1号(イチカ) より耳打ち)

しかし、オフトン教はないんだな。……そういや祠とか考えたことなかった。誰も知らないから作れなかったのか。あり得る。

「そうだシド殿、オフトン教に入るか?」

「……それも友誼か?」

「そうだな、嫌なら別にいい。無理強いすることじゃないし。……オフトン教の事は知ってるか? 『ついで信仰』のサブ宗教だぞ」

「知っている。パヴェーラでも信者が増えていたからどんなカルトかと思って調べた……スラムの貧民からツィーア領主まで幅広く浸透していたぞ。パヴェーラでは行商人を中心に広がっているな」

確かに領主様がミサに来てたりしたけど。あと勇者も入ってるけど。

シドは一回頷いた。

「いい機会だ、俺も入ってやろう」

「よし。オフトン教になるには自己申告だから、今日からオフトン教名乗っていいぞ」

「それはあまりにも緩くないか!?」

だから幅広く広がってるんじゃないかな。入るも辞めるも自由だ。

「洗礼的な儀式がしたいならやってやるから今度教会に来い。聖印は自分で作るか? それとも買うか?」

「自分で作ったものをそのまま聖印にしていいのか? 本当に緩いな」

「聖印ってのは目に見える形が大事だから、見た目が合ってりゃいいんだよ。どうせ本人の気持ちが伴ってなきゃなんの意味もないただの穴あきコインだしな」

「……ケーマ殿は教祖でもあったな。教祖がそういうならそうなのだろう」

なにせ元のデザインは5円玉だから。聖印に深い意味などないのだ。

デザイン先行の後付け由来は色々あるけど。

「って俺は司祭なんだが……」

「オフトン教の聖典をダンジョンで見つけて広めた教祖なのだろう? 村人がそう言っていた」

この世界だとそういう基準で教祖になるのか? だとしたら確かに教祖だけど。

「あ、そうそう。お祈りの言葉は『オヤスミナサイ』だ」

「オヤスミナサイ? 寝る時の挨拶に似てるな……」

「 概(おおむ) ねその通り。というか、寝る時の挨拶だからな」

「なるほど。……ふむ……ところで、オフトン教の祠はどういうデザインや様式なのか誰も知らず、作れなかったのだ。職人がシスターに聞いてもさっぱり要領を得なかったそうだが、流石にケーマ殿は知っているだろうか?」

……しまった、やっぱりか。何かそれらしい祠を作らねばならないじゃないか。

これもレイとかに丸投げしようかな。俺が【クリエイトゴーレム】で作った方が早いけど。聖女が作った方がよさそうな……レイじゃ彫刻はできないから粘土こねて。

いやこれはどっか別の職人でも作れるようにするべきか。

うん。デザインはお任せで、共通して聖印とオフトンのシンボルだけあればいいことにしよう。

「適当にオフトンと聖印のレリーフでも入れておけばあとは適当でいい。オフトン教は形式にあまりこだわらない、その気軽さが売りでもあるからな。外でお祈りして眠られると危ないだろうし」

「適当って2回言ったぞ、いいのかそれで……そうか、寝ることが祈りだったな」

「良く調べてるじゃないか。ここじゃなくて宿に小さい祠でも付けとくか?」

神棚とかでもいいな。

と、その時ぐぅぅぅう、と腹の鳴る音が聞こえた。

音に振り向くとそこにはメイド仮面1号がいた。

「……腹が減ったのか?」

こくこくと頷くメイド仮面1号。

ちらっとシドを見る。

「……食事処ならあるが、行くか?」

シドのその言葉に、メイド仮面はぶんぶんと頭を横に振る。そうだよね、その仮面つけてたら食えないもんね。

「嬢ちゃん、食事処やけど、パヴェーラから仕入れた新鮮な魚が食べられるで?」

「……ッ!」

シドの護衛、ハーヴィの誘惑にメイド仮面1号がたじろぐ。

だが踏ん張るメイド仮面1号。身バレを回避のため頑張れメイド仮面1号、負けるなメイド仮面1号!

と、メイド仮面1号がすすすっと俺に近寄ってきた。……ん? 何だ? 耳打ちか?

「……口のトコ開いたタイプに改装してくれへん? ニク先輩のみたく」

妥協するらしい。まぁ仕方ないな、と、俺はこっそり一号の仮面を加工し、口の部分をあけてやった。

そして食堂でタダ飯を御馳走になって、今回の訪問は終わった。

お刺身盛り合わせ(『浄化』済み)美味しかった。

ただ味付けが塩と酢、主食が固焼きのパンをスライスしたものだったので、今度醤油と米を差し入れてみようかな。