軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハクさんの頼み事。

お茶会の後、というかそのままの流れで「頼み事」の話をすることになった。

ロクコも同席している……というか、ハクさんの膝の上に移動している。

そのせいか、いや確実にそのため、ハクさんはめっちゃ笑顔だ。

……いやまぁ、ハクさんの目の前でロクコが俺にハグしてきたんで、拗ねたハクさんをなだめるためにロクコがハクさんの膝の上に座って抱き着いてるわけなんだけどね。

でもまぁ、頼み事の話だ。きっと面倒ごとに決まっている。

「それで姉さま。頼みたいことって?」

「頼みたいこと、っていうのはダンジョンバトルよ」

ほらきた。しかもダンジョンバトルとか厄介事すぎる。

「……えーと。それはあれですか、またハクさんと俺達でバトルを?」

「え、またハク姉様と戦うんですか? リベンジなら受けて立ちますよ! ケーマが」

「あ、違うわよ。ロクコちゃんが戦う訳じゃないの。というか、今回ロクコちゃんは手を出す必要無いわよ」

にこやかにロクコの頭を撫でるハクさん。

「ケーマさんに頼みたいのは補佐……というか、アドバイザー、いえ、プロデューサーというべきかしら」

「プロデューサー、ですか?」

この世界では聞きなれない言葉に俺は思わず聞き返す。

プロデューサーと聞いて真っ先に出てくるのはアイドルとかのプロデューサーだ。

もっともどういう仕事かはよく知らない。少なくともリズムに合わせて画面をタップするだけのような仕事じゃないことは確かだろう。

「最近、帝国と魔国の丁度間くらいにある草原にダンジョンがあることが判明してね。……何もないところだと思われてたんだけど、 600番台(最新ロット) のダンジョンがあったわけ」

「600番台、なるほど私と 同期(同ロット) ですね」

「はぁ、それで?」

「で、このダンジョンのコアが私たちに助けを求めてきたのよ。魔国の奴に殺されるから助けて、って」

「……え? ハクさんにですか?」

っと、思わず口をはさんでしまった。

「私だと何か不味いのかしら?」

「えっと、『火焔窟』のコアから裏切者と呼ばれてるって聞きましたが」

「ああそれね。どうやら魔国の乱暴者にウチの派閥に入ってるダンジョンと判断されたらしくて、既にダンジョンバトルを挑まれたらしいの。今は準備期間ってところね」

魔国か。魔国のコアといえば、思い浮かぶのは666番コア、アイディだ。

自称ロクコの親友(ただし仇敵とも書く)らしいが。

「そういえばアイディも決闘決闘って言ってましたもんね。魔国のコアってけんかっ 早(ぱや) いのかしら」

「そうね、あいつらは挨拶がわりに決闘するような蛮族だから。それで、基本的に命までは取らないけど、敗者は勝者に絶対服従がルールなのよね」

挨拶かわして勝負して負けたら即奴隷みたいな? 何それ怖い。

「……その、助けを求めてきたコアって元々派閥には入ってなかったんですかね?」

「動物系だから獣王派閥だったんだろうけど、連絡が付けられなかったらしいわ。……連絡ついても場所が悪すぎて助けられないでしょうし」

あー、連絡手段限られてるもんな……。

その上で魔国と帝国のちょうど真ん中に板挟みとか、最悪すぎる。横から獣王派閥とやらが入り込んできたら戦争に発展して大ごとになり過ぎそうだ。

「そんなわけで私に責任取って助けてくださいってドゲザしてきたわ」

「そいつが魔王国に寝返る、とかいう可能性は?」

「あとスパイって可能性もあるわね。どうなのかしら?」

「どちらも無いわね。嘘はついていないことは分かってるし、あの国では『弱者は死ね。もしくは死ね』と言われてるもの」

……「もしくは」の使い方おかしくないっすか? と思ったけど、今すぐ死ぬか、役に立って死ぬかのどちらか、という事らしい。結局「死ね」は変わらないのか……

尚、魔国では毎年トーナメントが開かれており、そこでコア単体の武威を示す必要があるとか。ここで無様な姿を晒すと……その後の扱いはお察しの通りだとか。

「ちなみにこのコアはウサギ型で、戦闘力は皆無といっていいわね」

「……そりゃ魔国には所属できそうにないですね」

修羅の国でウサギが1匹。あからさまに餌だ。

「まぁ私たち帝国側としては、あのコアが死んだところでどうでもいいんだけど。元々何もないと思っていたところが何もなくなったところで、それこそ何も変わらないわ」

「……ならどうして俺達に助けるように話を?」

「ケーマさんなら、魔国の連中に一泡吹かせられるでしょう? 勝てなくてもいいわ、相打ちでもね。そのあたり、ケーマさんならうまく演出してくれるでしょう?」

ああ。なるほど。だからアドバイザーではなくプロデューサーなわけか。

……翻訳機能さんのお茶目かもしれないけど。

「ウサギ型……姉さま、それってもしかして629番ですか?」

「そうよ。あ、ロクコちゃんをいじめてたって話だったら見捨てるわよ? ケーマさんに上手く始末してもらう?」

「ああいや、むしろ629番は普通に接してくれてたので」

「なら助けてあげましょう。その方向でよろしくケーマさん」

どうやらロクコの知り合いらしい。そして命拾いしたな、629番。

「……それで、報酬とかは?」

「報酬は、先払いしたでしょう。ロクコちゃんのハグの許可よ」

「アッハイ」

「負けたらハグ許可取り消しね」

「ケーマ、頑張ってね! 応援してるわ」

ハクさんはニコニコと笑う。やべぇ、本気かどうか分からない。

「……ところで、一度ダンジョンに戻っておきたいところなんですが、それからでも間に合いますかね? ここまで来るのに何日もかかったんですが」

「問題ないでしょう。『白の浜辺』まではすぐだし、そこから『欲望の洞窟』へ帰るなら一瞬でしょう? ワタル達にはケーマさんたちは私の【転移】で送ると伝えればそれで良いでしょう」

ああ、言われてみればそうか。元々あったルートを忘れていた。

ちなみに【転移】は距離と人数が魔力消費量と比例関係にあるため、ハクさんでも帝都⇔『欲望の洞窟』間の【転移】は1、2日休まないといけないレベルらしい。宿ができる前はツィーアで一泊とかしてたそうな。

そんなわけで『欲望の洞窟』までは魔力がかかり過ぎて送迎バスならぬ送迎【転移】は厳しいが、『白の浜辺』までなら何も問題ない。実際、前のダンジョンバトルの時に送ってもらったわけだし。

「いっそこの機会にケーマさんにも【転移】でも覚えてもらおうかしら。【転移】スクロール1枚、マッサージ椅子3台と交換でいいわよ」

おおっと、これはかなりお買い得。普通にDPと交換したら数千万の【転移】のスクロールがマッサージ椅子3台でいいとは、買いだな!

「それはありがたく……って、そういえばハクさんとか単体で【転移】使ってますけど、【転移】ってそもそも集団で使う魔法スキルって言ってませんでしたっけ?」

「ケーマさんならできるわよ。さすが勇者ね、魔力量が尋常じゃないことになってるもの。とりあえず、帝都から『白の浜辺』までくらいならだれか1人を連れて【転移】で往復できると保証してもいいわ」

ハクさんからお墨付きをもらってしまった。……でもこれって多分、ロクコ連れて帝都まで遊びに来いってことだよね。

あと尋常じゃない魔力量でもその距離までしか保証されないって、ハクさんはどんだけ魔力あるんですかね。

「姉さま、私は?」

「ロクコちゃんは……んー、まだ危ういところね。あと100年あれば確実かしら。でも今の成長ペースだと、ヘタすれば10年……いや、数年で使えるようになるかも?」

魔力量っていうのは(極論ではあるが)長生きしていればそれだけ増える。だからハクさん及びハクさんとこの幹部は単体で【転移】が使えると……(ただしミーシャを除く)

「……よし、ケーマ! 【転移】を覚えましょう、そして帝都でデートしましょう!」

「でっ……ぐ、くぅっ……! ……ロクコちゃん、デートは私としましょう? ね?」

「もちろんです姉さま。姉さまともデートしたいです!」

「ロクコちゃん……!」

うーん、ロクコこれ本当に素でやってんの? いや、素なんだろうけどさ。ハクさんが百面相してるぞ、俺が言うのもなんだが手加減してあげて。