軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハクさんの離宮にて

謁見も済ませた後、俺とロクコはハクさんの離宮に呼び出された。

正確には俺達のパーティー全員を招待したが、恐れ多いので代表として男爵になった俺とそのパートナーであるロクコのみが出向く形になっている。

サリーさんが「表向きは全員呼んでいますが、そういうわけなので辞退してください」とちゃんと他の面々には説明したら、全員は当然のように頷いた。ニクだけはしぶしぶといった感じだったが。

……俺も辞退したくはあったが、名指しだ。行かないわけにもいくまい。

そんなこんなで、俺達は久々にハクさんの住まう「白の離宮」までやってきたのだ。

男装執事サキュバスのクロウェに出迎えられ、案内される。

早速俺達は中庭でお茶会と洒落こんでいた。……俺の席もちゃんとあって何よりだ。

「やっと私の離宮に呼べたわね」

「ハク姉さま、改めてお久しぶりです」

「ええ、会えて嬉しいわロクコちゃん。あとケーマさんも」

「はい……で、早速ひとつお聞きしたいんですが」

なにかしら? と口角を上げるハクさん。

「……皇帝陛下はどこまでご存じで?」

「それを聞きたかったの? そうね……あの子には、私がダンジョンコアであることまで教えてるわよ。この帝都が私の支配下にある領域ということもね」

あれ。深読みしすぎたかな。もっと浅い情報しか渡してないかと思ったけど。

「ただ、ケーマさんが思ってる通り、ダンジョンマスターについては教えてないわ」

「……なるほど」

「当然でしょう? あの子はマスターじゃないんだから、教える利点が無いし」

「あら? そうなるとハク姉さまは皇帝にケーマの事を隠したかったのね」

ぽそっと、ロクコがそう言うとハクさんは目を見開いて驚いた。

かくいう俺も驚いた。

「だって、そうでしょ? 私の事は妹って紹介したけど、ケーマのことは特に何も言わなかった。これって、私に注目を集めさせて他から目を逸らすための手、よね?」

「…………ケーマさんの入れ知恵?」

「いいえ違います。お、おい。ロクコ、お前何か変なものでも食べたのか?」

「何よ、失礼ねケーマ」

むすっとそっぽ向くロクコ。

確かに言われてみれば、そういう風に思い返せる。

俺に余計なことを言わせたくなかった、というのは合ってるだろう。だがその目的が俺を隠すためだとは想像の範囲外だった。

「……成長したわね、ロクコちゃん」

「それはまぁ、色々考えてますもん」

「まさかロクコちゃんに見破られるとはね。……ええ、ケーマさんも分かってると思うけど、そうよ。ケーマさんの存在をできるだけ隠したかったの」

そしてハクさんは、あっさりとそれを認めた。

すみません、そこまでは分かってませんでした。

「ダンジョンマスターの存在は、私たちのダンジョンの最重要機密。マスター以外のニンゲンにバレるわけにはいかないの。……なのにケーマさん、自分がどれだけ注目されるか分かってやってるのかしら。あまり目立ちたくないって言ってるくせに」

黒髪黒目で明らかに勇者の血筋。

それが開拓を行い順調に成功しており、白神教が容認している新興宗教の教祖でもあり、さらにドラゴン退治の英雄ときたら……勇者と同列に扱い、Sランク冒険者にして伯爵にして更にパレードでもしようかという話もあったらしい。

が、ハクさんが全力で握りつぶしてくれたとか。ありがてぇ……!

「でもって、私が妹であると皇帝に話したことでパレード諸々を潰した違和感を消したと。ケーマのそばにいる私の存在を大きく出したくなかった、という口実で?」

「そんな意地悪なこと言わないでロクコちゃん。そのロクコちゃんを衆目に晒したくなかったからって思惑の方がメインよ?」

「本当ですか姉さま?」

「本当よ。あ、ほらベリータルト食べる? 美味しいわよ?」

ハクさんはロクコにタルトをあーんと差し出し、ロクコは少し拗ねつつもはむっとそれを食べた。

……なんということか。ロクコがハクさんを手玉に取っている……だと……?

もうロクコは俺を超えたんじゃないかな。

あ、でもひとつ気が付いてしまった。

「……俺が目立ってない方が排除しやすいから、ってわけじゃないですよね?」

「あらやだ、うふふ」

否定はしないんですね。おお怖い怖い

「……姉さま、ケーマのこと排除したりはしないですよね?」

「しないわよ、ケーマさんが身の程をわきまえているうちは」

「私のパートナーなんだから、ダメですからね?」

「私の敵にならなければ大丈夫よ」

その「ハクさんの敵」の定義がどうなっているかが非常に物議をかもすところだと思いますよ俺は。

「ところでロクコちゃん。マスターじゃなくてパートナーって呼んでるのは、マスターって言うのを隠すためよね?」

「え? 違いますけど」

「そう」

あ、それ敵の定義に入っちゃいますか? なんか背筋がゾクっとしたんですけど、殺気ですよねコレ。

ハクさんはそこで何も言わずに紅茶を一口飲んだ。

「で、ケーマさんはどう考えているのですか?」

「……ハクさんと敵対する気はありませんよ」

「そう。つまり、 そういうこと(・・・・・・) と見ていいのね?」

「さて、意味が広すぎてどういうことかは分かりませんが。俺は、ロクコが嫌なことはしませんよ」

俺も、ここで紅茶を一口飲んだ。

「……ロクコちゃんが望むなら、まぁ、百歩譲って? 手を握る、いや、ハグまでは許しましょう。…………それ以上は―― ツィーア家のご令嬢(ロリ) も、 へっぽこ女騎士(おバカ) も気に入らないようだしどうしましょうか?」

「……やはり、あの2人はハクさんの差し金ですか」

「何のことかしらね? 私はそういう報告を受けただけよ。……そうだ、奢ってあげるからそういうお店に行ってきたら? 帝都にもあるわよ」

ハクさんはにこりと微笑んだ。

「……まぁ、俺は睡眠欲特化なんで。あとロクコが望まないんじゃないですかね。だろ、ロクコ?」

「ケーマ……! んー、とりあえずハグしましょう、ハグ。ハク姉さまから許可も出てるしいいわよね! ところでそういうお店って何かしら、私もケーマと一緒に行ってみていい?」

ゴフッ! と俺とハクさんが同時に咳込んだ。

これ、わざと言ってるなら大したもんだよ。顔を見る限り本気で分かってない感じだけど。

「ケーマさん……」

「待ってください、これは俺のせいじゃない」

「……そうね。ちょっと、色々とロクコちゃんには教えておかなきゃいけないことができたわ。あとで一緒にお風呂入りましょう、そのついでに色々教えてあげます」

「? はーい」

なぜ教えるのにお風呂へ……いや、深い理由はないに決まっている。言葉通りついでなんだろう。

俺にハクさんと敵対する意思は無いので、これ以上は突っ込まないことにした。ふぅ……

「でもこれでようやく……非公式とはいえ、堂々とロクコちゃんを妹として扱えるようになったわね」

非公式なのに堂々とはこれいかに。

非公式と言いつつも貴族連中にはバレるとかなのか。恐るべし非公式の闇よ。非公式ならいろんなことができるもんな、二次創作の薄い本とか。

「 皇帝(ライオネル) はロクコちゃんが実の妹だとは思ってないでしょうけどね」

「あら、そうなの姉さま?」

「そうね、多分妹というより私が特別に目をかけている存在、って認識じゃないかしら。実際、他のコアだって弟妹になるんだから正しい認識ではあるんだけど……」

そう言えば、全員同じ「父」から生まれてるわけだから イッテツ(112番) や アイディ(666番) 、三竦みトリオもハクさんの弟妹になるもんな。それらをいちいち人間と同じく血縁扱いしてたらキリが無い。

「もちろん、私が妹として扱うのは、ロクコちゃんだけよ?」

そう言ってロクコの頭を撫でるハクさん。

ロクコは機嫌を直して、むふー、と笑顔を見せた。

「まぁ、いいですけどね。ハク姉さまの妹って名乗れるようになったわけですし」

「そうよ、非公式だけど皇帝の認知済みだからね。いざとなったら使いなさい?」

「はい姉さま」

にこやかにキャッキャウフフしてる2人を見て、執事……クロウェさんが淹れ直した紅茶を飲む。ベリータルトも美味いぜ。あ、お土産にもらってってもいいですか? うちに腹ペコの子がいるんで。

……いやぁ、平和っていいなぁ。

「あ、そうそうケーマさん。この後ちょっと頼みがあるの。断っても良いけど?」

本当に平和っていいものだよなぁ、中々手に入らないからホントそう思う。……はぁ。それって実質命令でしょ? 断れるわけないじゃないですかーやだー。ギブミー平和。