軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

道中3

護衛対象の商人の馬車を4台つれて、川の町ドンサマを出てコーキーへ向かう道中。大きな岩がごろごろしている妙な草原で車軸が壊れて立ち往生している馬車を見つけた。

おおよそ1km先にあるわけだが……横を通れなかったり回り道できない絶妙なポジションで止まっていやがるな。で、1人の男がそれを腕を組んで困った風に見ている。

ゴゾーはそれを見て、武器がすぐに取り出せる位置に装備されてるかを確認した。

「ケーマ、ありゃ盗賊だぞ。戦闘準備しとけ」

「あ、やっぱりあれ盗賊なんだ?」

当然だろ、と首をゴキリと鳴らすゴゾー。

だよなぁ。露骨に怪しいもん。

「まずこんな道のど真ん中で立ち往生してる時点で8割怪しい。で、ここらじゃ一旦荷物を下ろしてでも馬車を退けるか端に寄せるのがマナーだ。んで、男手があるのにその作業をしてないあたりよほどのバカか盗賊だ」

「しかも馬もいない。明らかに壊れた馬車だけを置いとるなぁ。……こういう時は盗賊として処分していいことになってるんやで、得したなー」

イチカの補足に、ニクも馬車内で立ち上がった。

「馬車は借り物だ、特に貴族の紋章には傷つけるわけにいかねぇ。ここらで止めて歩いていくとしよう……さて、誰が馬車でお留守番するよ?」

「あー、なら俺達が残るとしよう。チームバッカスで盗賊どもを狩りに行ってこい。ついでにシキナもつれてけ、邪魔だし」

「自分、邪魔でありますか!?」

うん、昼寝の邪魔。

「折角だし、盗賊相手に一戦してこい、オークの時みたくならないように祈ってるよ」

「だ、大丈夫でありますよ!」

「ふむ。じゃあケーマのパーティーが留守番ってことでいいんだな? そんなら遠慮なく行かせてもらうとしよう。おーいワタル、聞こえたか」

「はーい。しっかり聞こえてましたよ」

と、一つ後ろの馬車の御者台に商人と一緒に座っていたワタルが答えた。

「んじゃ、行ってくらぁ」

「ロクコちゃんたち、気を付けてね」

「一応【エアバリケード】かけといたんで、弓矢は大丈夫だと思いますが……気を付けてくださいね」

こちらの先頭の馬車を盗賊から400mくらいの位置に止め、ゴゾーとロップ、それとワタルが馬車から降りる。そして、盗賊の方に一見無防備に「おーい、どうした、故障かー?」と言いつつ向かっていった。

あわよくば不意打ちする気なんだろうな。

さて、俺らはそんなアイツらをのんびりと眺めて留守番をしていようじゃないか。

俺が横になろうとしたとき、イチカは自分の武器である包丁を取り出した。

「いやぁ、腕が鳴るなぁご主人様」

「ん? どうしてだイチカ。俺らは留守番だし特にやることないだろ?」

「何言ってるん? 潜んでるやつらから馬と御者と馬車を守るのが留守番の仕事やで? 腕の見せ所やん。な、ニク先輩」

「はい、ご主人様にいいとこ、みせます」

「馬車4台やし、結構キツイとこあるけどな。まさかご主人様が自分から難しい方買って出るとは思わなかったで?」

えっ。

ニクもゴーレムナイフを抜いて臨戦態勢を整えるのを見て、俺が「そうだったの?」と聞き返――そうとしたところでゴゾーたちの戦闘が始まった。

同時に、弓矢が馬車めがけて飛んできて、ワタルの【エアバリケード】であらぬ方向へ飛んで行った。

「……おう、留守番って忙しい方だったのか」

「今の矢、的確に御者狙ってたなー。結構腕のいいアーチャー居るでこれは。さて、反撃といこか」

「援護は私に任せなさい!」

ロクコ、お前は座ってろ。あとボウガン装備するなら腰のレイピアいらなくね?

弓矢が効かないとみて、潜んでいた盗賊たちがわらわらと出てきた。ひのふの、いや、10人以上いるぞ。これはやばい。こんなの3人で守り切れるかよ。

「おう、これは圧倒的に人手が足りんな」

だが人手の足りないのを補うのは俺の得意魔法だ。……【クリエイトゴーレム】だと材料の土を抉るし、魔石のカモフラージュが面倒だ。ここは【サモンガーゴイル】で対応しよう。

「……【サモンガーゴイル】【サモンガーゴイル】【サモンガーゴイル】……ええいめんどくさい、10体くらい一気に来い、【サモンガーゴイル10】」

魔法名を唱えるのも面倒になったので省略したところ、馬車の周りに魔法陣が次々に現れてそこからガーゴイルがにょきにょきと現れていく。

「馬車を守れ、ガーゴイルたち!」

護衛対象の商人と御者は突然現れたモンスターに驚いていたが、俺の声と、盗賊相手に馬車をかばうように立っていたから味方と判断してくれたようだ。

が、盗賊も俺に目をつけたようだ。

「サモン系だ、術者共をやれば消える! 先頭の幌馬車の中だ!」

どうやらサモン系の対処法も心得られてるようだ。盗賊が物知りなのか、知れ渡ってるのかは知らんが……このまま馬車に居るのはまずいか?

「お任せください」

「ウチもやったるでー」

ニクとイチカが馬車に向かってきた盗賊の前に立ちふさがる。

「女だ! ずいぶんと身ぎれいな愛玩奴隷だな、貰ってやる!」

「お断りや。ウチの貞操はご主人様のモンやさかい」

「えい」

向かってきた盗賊どもをあっさりと切り伏せる2人。おい、ニクってば人間相手でも容赦なく首狙ってるぞ……なんて恐ろしい幼女だ。

「コイツ強いぞ!」

「下っ端ぁ、突っ込め! 数で押すんだ!」

と、盗賊の下っ端……首輪をつけた奴隷が、俺を守るニクとイチカに殺到する。

「ちょっと、私にもやらせなさいよ! ていっ」

ロクコがクロスボウを放ち……ガーゴイルにヘッドショットを決めた。

わぁい、フレンドリーファイア。座ってろ。

「貴族の女だ! 高値で売れるぞ、あまり傷つけるな、生け捕れ!」

「奴隷共が全滅しても余裕でおつりがくらぁ!」

おっと、ますます盗賊が俺たちの馬車に集中してきた。が、そうはさせない。

「追い【サモンガーゴイル】っと」

なにせ、こちらのガーゴイルは軍といえるくらい数があるからな。で、そうして足止めさえしていれば……

「ちぃ! だらしない奴隷共め、お――」

「はいそこまで」

ワタルが盗賊の司令塔を押さえた。これでチェックメイトだ。早かったな。

ちなみにシキナは地面に倒れ伏してビクンビクンしてたので、やっぱり盗賊もダメだったんだろう。

戦闘が終了して、盗賊をそれぞれ拘束することになった。これはチームバッカスとシキナに任せている。

生きていれば犯罪奴隷として売れるのでお小遣いになるそうな。ちゃんとしたところに売るなら、五体満足ので1人あたり銀貨5枚、宿場町で売っても銀貨3枚は固い……って安いな犯罪奴隷。でも落ちてる小銭は拾う主義だ、余裕があれば。

「お疲れさまです、ご主人様」

「ニクもお疲れ。あまり殺さずに済んだな」

「はい、ご主人様のおかげです。ガーゴイルがいなければ片っ端から首を刎ねるしかありませんでした」

あ、それで対応できるのね。と言うかこの子やっぱ思考が物騒だわ。頼もしいけど。

「見事な物量作戦やったな。つーか見せて良かったん? ガーゴイル」

「問題ない、というか、これくらい使えると見せておいた方が今後言い訳がたつからな」

「まぁ、せやな。サモン系が使えるのは囮にするにも使いっ走りにするにも便利やし……量はちーっとばかし……いや、だいぶ異常やけど」

さっき盗賊も「術者 共(・) 」って言ってたけど、やっぱり量は異常か。

「はぁ、私、1人くらい 殺(や) っておきたかったわね」

「ロクコ、お前かなり物騒だな。昔からそういう血なまぐさいところあったけど……」

「いやアレよ、私が外で人殺したらDPが増えるかどうかとか見たかったのよ。別に人殺しが目的じゃないわよ?」

……なるほど。確かにそれは気になるな。ダンジョンの外でDPを増やす方法があるなら把握しておいて損は無いし。とりあえずニクが殺した分では……入ってないな。うん。

でも今更盗賊を殺すのも不自然だし、またの機会に試してみるとしよう。

と、ワタルが近づいてきた。身内の話はこれくらいにしとこう。

「お疲れ様です。逃がした盗賊はいますか?」

「全員ガーゴイルで押さえてある。逃がした方がよかったか?」

「いえ、問題ないです」

「泳がせてアジトを見つけるべきだったか」というニュアンスを込めて聞いたところ、「すこし脅せば吐きますから」とワタルは答えた。

「しかし、ケーマさんすごいですね、これほどのガーゴイルを召喚して制御できるんですか……ワンマンアーミー(物理?)ってところですね」

「コツがあるんだよ。シンプルな命令を出したらあとは自主性に任せるんだ」

「それでもこの量はさすがに多いかと。ガーゴイルだと……普通の術者なら多くて3体、宮廷魔術師レベルでも2桁は難しいですよ」

……うん、20体くらい出してたな。

えーっと、まぁ暇になったヤツから順次消していくとしよう。送還送還っと。お疲れさん。

ちなみにこの後ワタルと一緒に盗賊のアジトにまで乗り込んだ。

もしかしたらアジトがダンジョンかも、と思ったけど別にそんなことは無くてただの廃村だったけどな。

ダンジョンが制圧されて盗賊や山賊の拠点になるとかはそうそうないらしい。

残党はワタルがあっさり片付けたよ。さすワタ。