軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

川の町ドンサマ(南)

ドンサマの町を横断する川を渡ったのち、俺はとても疲れたので宿に直行。そして翌朝出発する直前までぐっすり寝た。

いやぁ体を動かした後はよく眠れたな。

「北も南も変わりないように見えるんだけど、ほんと何が違うのかしらね」

「冒険者ギルドは対立してるわけじゃなくて何よりだよな」

もっとも俺達旅人にとっては対立していようがどうでもいい話だ。

せいぜい宿で「昨日は北に? それはそれは。南の方が温かくて快適でしょう」とか言われたくらいだ。違いが分からねぇよ。と思いつつも愛想笑いで返しておいた。

「さて、それじゃあ今日はドンサマを発つわけですけど、なにか忘れ物とかないですか?」

「屋台で魚も食ったし、晩飯にも魚を食った。まぁ大丈夫やろ、食い忘れがあっても帰りに食えばいいしな」

「イチカさんはさすがですね。ケーマさんは」

「こっちも特にない。あとは冒険者ギルドで依頼を受けて行くだけだろ?」

「宿屋親子の確執を解決とか」

「しないから」

というわけで南ドンサマの冒険者ギルドにやってきた。北ドンサマで預かった荷物については昨日のうちにワタルが届けていたようで、特に渡すものもなくあっさり次の町と帝都向けの配達依頼を受ける。

さっさと出ようかとしたところ、ワタルが呼び止められた。

「ワタル様。たった今、ワタル様を指名してコーキーへの護衛依頼が出されました。お受けになられますか? 護衛対象はあちらの商人の方です」

「ふむ? どうしますかケーマさん」

あれ、俺に聞くの? と思ったけど、そういえば俺がワタルを護衛に雇ってる 体(てい) だった。

となれば、依頼主である俺に決定権があるわけだ。ちなみにコーキーってのが次の大きな町の名前だ。馬車で片道3日。

「あの商人を馬車にのせろっていうのは狭いから無しだぞ」

「馬車は持ってますよ。普段なら移動のついでに受けてるところです」

ワタルは受付嬢から受け取った依頼票を見つつ言う。

ちなみになんでこちらの行き先がコーキーだと分かったのかは、ワタルが普通に周りにも聞こえる声で「コーキー経由で帝都へ行くのですが、配達依頼ありますか?」とか言ってたからだろう。特に不審な点もないようだが……

「なんでワタル指名なんだ? 勇者様への依頼料となれば相当高いだろうに」

「たまにありますよ。コネ目当てというか、勇者に護衛してもらうということ自体が目的ということもありますが」

勇者とお近づきになりたいということか。なるほど。腐っても勇者だもんな。……でもワタル相手に3日の護衛で金貨1枚はやっぱり高い気がする。

「ま、受けなかったら受けなかったで普通の護衛依頼に切り替わって適当な冒険者が護衛しますよ。なので、ケーマさんが好きに決めちゃってください」

「じゃあ受ければいい。ワタルが商人の馬車に乗ればうちの馬車が1人分広くなるしな」

「えぇ……まぁいいですけど」

そう言うと、ワタルは依頼を受理することを受付に告げに行った。商人が大喜びでワタルに握手を求め、ワタルもそれに応えていた。

……こういう飛び込み依頼みたいなのもあるんだなぁ。

と、挨拶を終えてワタルが戻ってきた。商人は急いだ様子で外に向かっていく。

「もっと荷物増やすから少し待っててほしいとのことです」

「なるほど。確かに勇者の護衛がつくならまず安全だし、指名料金掛かった分取り戻さないと損ってわけだ」

「まぁ元々ここからコーキーはそんな治安悪くないです。……1つ襲ってきそうな盗賊団の目撃情報がありましたから、それを釣るには丁度いいでしょうね、一応馬車4台までとは指定しましたし」

あ、盗賊団釣るんだ。ということは今度は対人戦すること前提の護衛ってことか……。

「ケーマさん、人殺しの経験は? したことないなら無理しなくていいと思いますが」

ダンジョンマスターとして一応あるけど、間接的だからなぁ。

盗賊に襲われたら……直接手を下すこともあり得るわけか。ううむ。緊張するな。

「ちなみに普通のCランクは護衛……つまり盗賊等の対人戦もできるレベルが求められます。ケーマさんはDランクでしたけど、その点どうですか?」

「強敵が出なければなんとかなるだろう。囲まれても時間稼ぎくらいはできるから危なそうなら助けてくれ」

「分かりました、お任せください」

俺には服ゴーレムだけじゃなくて魔法もある。何とかなると思う。

ゴゾーとロップはCランクだし、イチカは元々Cランクだったから大丈夫として……ニクもイチカ以上の戦闘力はあるし、殺す殺さないは関係なく制圧できるだろう。

ちなみに御者さんもCランク冒険者相当の戦闘力はあるらしい。さすが貴族御用達の御者だ。

問題はロクコだけか。服ゴーレムがあるとはいえ、あいつが戦闘してる光景が思い浮かばない。腰にレイピア差してるけどあれ飾りだろ?

人間じゃないロクコが一番の一般人とはどういうことなのか。

……まぁ、イチカあたりに護衛してもらおうか。

「それじゃ、僕らは待ち合わせ場所の南門前で待っておくとしますか」

「そうだな」

というわけで、俺達がドンサマの帝都側への道、南門前で待つことになった。

イチカとニクは近くの屋台まで食料調達に向かったようだ。……食い忘れは無かったんじゃなかったのか?

「それにしても、指名依頼だなんて……ワタルは有名なのね」

「勇者だからな」

「ウチの宿での扱い見てるとちょっと不思議なくらいよね」

「ワタルだからな」

俺とロクコがそんな風に雑談しつつ待ってると、ワタルがひょいと顔を出した。

「今僕の話してました?」

「してたしてた。お前、うちの村と外だと扱いが全然違うなって」

「そりゃぁゴレーヌ村が特別なんですよ。なんたって村長がケーマさんですから」

まるで俺が悪いみたいなことをいうワタルに、ロクコは「それもそうね」と頷く。なぜに。

俺が村長なのは関係ないだろ……なんたって俺はお飾り村長なんだぞ。副村長のウォズマや冒険者ギルドの受付嬢さん、あと冒険者代表ってことでゴゾーの方が権限があるはずだ。

「そういえば村で思い出した。ネルネとはどうなんだ?」

「ええ、ばっちり順調ですよ! 今度ネルネさんの予定が空いた時にツィーアにデートに行こうという話をしまして。というわけでロクコさん、ネルネさんの休みを調整してください。むしろお金払うので有給あげてください」

「しょうがないわね……今度ワタルが来た時にネルネを休みにしておくわ。貸しにしとくから」

「ありがとうございます!」

あれ? ワタルが来た時はいつもネルネは休みにしてるよな。存分に対応できるように。

別にツィーアへデートに行くくらい問題ないはずだけど……まぁいいか。

それからさらにしばらくして、護衛対象の商人がやってきた。

幌馬車が4台。荷物をたんまり載せているようだ。これ、さらに御者してる商人とかも【収納】とかつかってるんだとか。……しかし、荷物多すぎて車輪が壊れて立ち往生とかしないよな?

よそう、余計なことを考えてフラグになるといけない。

「それでは勇者様方、よろしくお願いしますぞ」

「ええ、お任せください。僕らが護衛していればドラゴンが出ても大丈夫ですよ」

「それは心強い」

こちらにもぺこりと頭を下げる商人。これから3日、こちらこそよろしく。

俺達は商人を連れて門を出て、次の町へ向かって出発した。

ワタルは襲撃を予測していたが……襲撃があっても、ワタルがきっと「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」というレベルで活躍してくれるんだろうな。