軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旅の支度

結局、その日のうちに帝都行きが決まった。お呼び出しだそうな。

討伐隊メンバー以外にもなぜか……いや、当然のようにロクコも含まれていたが。これ絶対ハクさんの仕業だよね。他に考えられないもん。

そして翌日。ニクと一緒に宿に顔を出すと、シキナとマイオドールが出迎えてきた。

「ケーマ師匠! この度はお疲れ様であります!」

「クロ様! あとケーマ様、話は伺いました。さすが私の婚約者ですわね……ぽっ」

相変わらずのダメエルフと縦ロールだ……なんか安心したようなそうでもないような。

そしてマイオドールはいつの間にかニクにベタ惚れなんだけど、ニク、マイオドールに何かした? ん? なにもした覚えはない?

そうか。じゃあ貴族の生態か何かなんだろうか。婚約者の近くに居るだけで惚れていく的な。政略結婚が多い貴族が前向きに生きるための習性としてだれか学会に発表してくれ。

「それで、ワタル先生から話は聞いたであります。帝都へ行かれるそうですね! 自分もお供させていただくであります!」

「……え、なんで?」

「それはもちろん、今月分の授業料払ってありますし……帝都へ行くとなると1ヵ月以上かかるでありますよね? 当然、同行しなければ!」

ぐっ! なんて正当な理由だ。でも俺、授業と言いつつあんまり大したこと教えてないんだけど。戦闘関連とか常識関連とかニクとイチカに丸投げしてるんだけど。

まぁ今回はそのイチカとニクも同行するからさらに仕方ないんだけどね。

俺はこのエルフに何を教えてるんだろうか。せいぜい算数くらいか。

「帝都、楽しみですわねクロ様」

「……ご主人様」

「あ、マイ様は当然留守番ですからね? むしろツィーアにお帰りになられても良いですよ」

「そんなケーマ様。私、こうみえて旅には慣れておりますのよ」

「何かあった時には責任がとれないので、ご了承ください」

「むぅ……責任、責任と。大人は皆そう言いますのね」

といって、ニクの腕に抱き着くマイオドール。都合のいい時ばかり子供として振舞うのは幼くとも貴族らしいと言えなくもない。

「クロ様は私を守ってくださるでしょう?」

「いえ。ご主人様を守るので、邪魔しないでください」

「……職務に忠実なクロ様も素敵ですわっ」

あ、ダメだコレ。ワタルと同じパターンだわ。

「……あー、メイドさん。その、俺らが居ない間は……」

「はい、ツィーアの屋敷にお戻りいただきますので、ご安心ください」

お付きのメイドさんがちゃんとそう答えてくれたので、俺はほっと一息ついた。

「ケーマ村長ー! ボクと模擬戦しよっ! ドラゴン倒したケーマ村長と模擬戦! たぎるっ!」

と、そこにバイトのセツナがたゆんたゆんと胸とケモ耳を揺らしてやってきた。うん、お前とはもう模擬戦しないから!

「村長! 帝都に行く間、 村の防衛(るすばん) は任せてもらっていいから、また模擬戦してほしいの!」

「……ってか、ワタルに模擬戦してもらえよ」

「ネルネさんに『ワタルといえどお客様なのですからー、迷惑かけちゃだめですよー?』って言われたの」

ネルネ? お前が言っていいのそれ? あと「ワタルといえど」って低い! 勇者の立場がめっちゃ低い! あーもう、ワタルに同情したくなってくるよ。しないけど。

「……はぁ。俺が許可する。ワタルがいる間に稽古つけてもらえ、そしてかわりに俺に模擬戦を申し込むな」

「やったぁ村長は話が分かる! 了解なの!」

セツナはスキップで去っていった。

「って、そうか。防衛か。ゴゾーとロップも一緒に行くんだよな」

ニクはもちろん、ゴゾーのパーティーはこの村の代表的冒険者だ。戦力の低下は否めない。

……まあ、セツナがいれば村が盗賊に襲われたとしても大丈夫だろう。多分。

そもそも冒険者ギルド肝入りのこの村を襲う輩がいるとは思えないけどな。

村的に戦闘力が必要となる不安があるとすれば、ダンジョンからモンスターが溢れてくるくらいか。絶対ないと断言できるけど。

はぁ、支度しないとなぁ。とりあえずワタルが言ってたように、料理はたくさん持っておこう。【収納】に入れておけば時間が止まるから、いつでも出来立てを食べられるのがいいよね。

さすがにキヌエさんは連れてけないからなぁ……宿のキーパーソンだもの。

俺はロクコの部屋の扉をノックした。

「おーいロクコ。準備の方は進んでるかー?」

「あ、ケーマ。丁度よかったわ。ケーマ、赤と黒と白、どれが好き?」

「ん? ……黒かな」

「……大胆過ぎないかしら?」

何の話だろう。……気にしたら負けだ。男として。多分。

「入って大丈夫か?」

「大丈夫よ」

念のため再度確認してから部屋に入ると、メモを眺めつつ荷物をまとめているロクコがいた。

【収納】もあるが、それとは別に旅行鞄に色々と詰めているようだ。

……着替えは『浄化』があるからあまり持たなくていいのが楽でいいよな。

「なんだそのメモ?」

「ハク姉さまからもらったDPに関するメモよ。ダンジョンを離れるならあらかじめ自分で持ってる分しか使えないとか、そういう旅に使えそうな話を聞いといたの」

あ、『白の浜辺』経由のハクさん 直通最短便(ホットライン) つかったのか。いつの間に。

「……DPってほんと何なのかしらね。ダンジョンを離れるならあらかじめ自分で持ってる分しか使えないとか……そもそもDPを持つって何? って感じよ。実際できるから分かるけど」

「外でもDPが使えるなら、それなりにDP持っておけばいいだろ。別に持ち出した分が消えるわけじゃないなら使わなくてもいいし」

「そうね。別段重さがあるわけじゃないし。……魔力みたいなものかしらね?」

ロクコには分からないだろうけど、俺は電子マネーっぽいな、とは思っている。

「ダンジョンで使う分もあるけど、こっちはコアが置いてあれば補給されるから……うん、50万Pくらい持ってきましょう」

「そうだな。……ところでどのくらい離れるとダンジョンに置いてるDPが使えなくなるんだ? ツィーアまでは圏内かなぁ」

「よく分からないって。間に他のダンジョンがあったりとかで、状況によって変わるみたい。ま、50万もあれば足りないってことは無いでしょ。……ふふふ、こんな会話ができるほどDPを貯められてるとか、成長したわよね私っ」

確かに、俺が召喚された時のすっからかん(頭もDPも)とは比べ物にならないよな。俺は口に出さずに頷いた。

「出発は明日だから、忘れ物の無いようにな。まぁDPがあれば大丈夫だと思うけど」

「そうね。あ、置いてくダンジョンコアはどこに置いといたらいいと思う? やっぱりダンジョン内よね」

……ああ、 コア本体(光る玉) の話か。一瞬ロクコは来ないのかと思った。

さすがに遠出するのにダンジョンコアを宿に置いておくとかは怖いよな。泥棒とか。

「そうだな。前に帝都行ってた時みたいに隠しておけばいいだろ」

「ん、そうするわ、っと」

言いながら、ロクコはオフトン教の聖印を鞄につっこんだ。

……俺も布教用にいくつか持ってくか。うん。

「ねぇケーマ。宿と教会だけど、私たちが抜けて人手が足りるかしら?」

「教会はサキュバスいるからいいとして、宿は……まぁ元々サキュバスなしで宿と教会回してたんだ。俺たち4人がいなくても足りるだろ」

「あ、そうよね。サキュバスいるんだから足りるか」

「いっそ宿の方もサキュバスに手伝ってもらったらいいんじゃないか? オフトン教シスターの奉仕活動とか言って。まぁちゃんと給料払うけどさ」

「じゃあレイとキヌエにそのあたりも頼んでおきましょ」

こういう時ネルネが外れるのは、まぁ、うん。あいつ自分の研究に没頭するからな。

あとはスイラにも話を通しておけば問題なくいけるだろう。

レイあたりにサキュバスに教会が乗っ取られないように聖女とかの地位を持たせておくか……痛くないマッサージを『奇跡』とか言って。

あと、とりあえず俺は帝都までのルートを確認しとかないとな。……そもそも帝都ってどっちにあるんだっけ? ワタルはツィーアで馬車に乗っていくって言ってたけど。