軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ツィーアにて

今回の面子を改めて整理すると、まず俺達のパーティーが俺、ニク、イチカ、ロクコ。

次にチームバッカスのゴゾー、ロップ、ワタル。

おまけでツィーアの貴族令嬢マイオドールとそのメイド。あと残念エルフのシキナ。

御者を除いても計10人の大所帯だ。このうちマイオドールとメイドはツィーアで離脱するので8人で帝都に向かうことになる。

ちなみに馬車と御者はツィーア家提供である。二頭立てで、紋章まで入っている立派な屋根付き扉付きの貴族御用達な馬車だ。幌馬車ではない。がっしりした箱タイプの馬車。そして10人全員が乗れる大きさだ。

とりあえずツィーアまではこの馬車で行くことになる。荷物は【収納】があるからスッキリしてるのがいいよね。

出発前にゴゾーが話しかけてきた。

「おいケーマ。あー、その、サラマンダー殿は?」

「フレイムドラゴンの教育があるのと、面倒だからツィーア山から出たくないってさ。置いてきた」

「そ、そうか。呼んだら来てくれたりするのか?」

「どうやって呼ぶんだよ。手紙出すのか?」

「え、いやそれは契約的な何かがあったりするんじゃないのか? ほら、『火焔窟』の時もそうだっただろ」

「あれは元々あそこに隠れてただけだ。あいつは基本『火焔窟』でダラダラしてるからな」

イッテツの公開情報にダラダラしているサラマンダー……ダラマンダー設定が追加された。

まぁ 娘(イグニ) からは実際そう思われてるらしいし、別にいいよな?

「なるほど。ケーマと気が合ったのはそこか……やはり鍵となるのはオフトン教なのか?」

知らんがな。

まぁそんなわけで、俺達は帝都へ旅立つのであった。

レイ、宿とダンジョンの事、任せたぞ!

馬車で移動したが、特に何事もなくツィーアに到着する。

それにしても片道わずか2時間とは……昔はダンジョンからツィーアまで走ってくるのに6時間はかかってたのに。明るい時間の早馬なら1時間かからないそうな。

「さすが貴族の馬車は快適だな……にしても、マイオドール様がいると審査も要らなくて通行料がタダになるのか……さすが貴族」

「自宅に入るのに金はいらん、ってこったろ? そもそも馬車が身分証明になってるし」

「そうですよゴゾーさん。それに貴族でも通行料は必須ですよ? 僕だってちゃんと払ってますからね!」

「あぁ、そいやワタルも勇者だし一応貴族だったな。忘れてたわ」

というか、今回はそれ差し引いてもギルドから通行証をもらっているから馬車単位でタダになるそうだ。

ハクさん、さすが冒険者ギルドのグランドマスター。

「はぁ、もっとクロ様と一緒にいたいですわ」

「……そろそろ領主の館が見えてきたので、降りる支度を」

「大丈夫ですクロ様。支度はメイドに任せましたから、ギリギリまでこうしてお隣にいられますわ」

とりあえず領主の館へ送りつけることになった。

そして、領主ことボンオドール・ツィーア直々のお出迎えを受けることにもなった。

「おお、ケーマ殿。久しいね! ニシミ殿もお久しぶりです。マイ、元気にしていたかい?」

ちゃっかり挨拶で俺を最初にするあたり、なんだろうね。思惑があるんだろうか。

マイオドールを後にしてワタルを2番目にしたのを見るに、ただ娘を預けてた保護者だからという理由だけじゃないと思うけど。

「はいお父様。婚約者のクロ様との仲も、だいぶ深まったかと」

「そうかそうか! クロイヌ殿の事を愛称で呼ぶ仲となったか! いやぁお互い子供の成長は嬉しいものですなぁケーマ殿」

「ははは……まぁ、娘さんはこの通り無事お届けしましたので」

裏の意味で何を言っているかよく分からなかったので、とりあえず愛想笑いしておいた。

「婚約者のクロ様、ってなんですかケーマさん!? クロちゃん女の子じゃ……はっ! まさか、お、男の娘……!? ヤッ、オトコノコ、コワイ!」

「お、おう。戻って来いワタル」

「はっ。すみません、取り乱しました」

そういえばワタルは昔男の娘に結婚詐欺された経験があるんだったな。

「ケーマ様。私たちはここで一旦お別れですが、馬車と御者は是非このまま使ってください。この馬車であれば、道中の町への出入りもスムーズかと」

「うーん……」

……紋章入りなんだけどこの馬車。変えたい。

ちらりとボンオドールを見ると、目が合った。

「なぁに。気にしないでくれたまえ。娘の婚約者にはこれくらいの事、当然だよ」

「……紋章無しの馬車をお借りできませんか? 色々と面倒ごとが起きそうなんですが」

「逆に紋章なしの方が後々面倒ごとになると思うがね。ケーマ殿がそういうのであれば紋章の入ってない馬車を手配するが?」

もしかしてハクさんから何か口出しされてるのだろうか……道中盗賊に襲われたりしないか心配だなぁ。

と、ワタルが横槍を入れてきた。

「あ、ボンオドールさん。紋章入りの幌馬車でお願いします! やっぱり旅の馬車といえば幌馬車ですよね、ケーマさん」

「ふむ? ではニシミ殿の要望の通り、幌馬車を用意しましょう。ケーマ殿もそれで良いかな?」

「あ、はい。馬車はあまり詳しくないのでお任せします」

幌馬車で旅か。どこぞのRPGのイメージが強いな。倒したモンスターが起き上がって仲間になりたそうに見てきたりしてな。

「おいワタル。なんで紋章入りなんだ」

「ケーマさんの拠点、ゴレーヌ村はツィーアの近くでしょう? それなら、ボンオドールさんとの繋がりをハッキリ見せておいた方がいいですからね」

「……他の貴族からの介入を防ぐ、ってことか?」

「そういうことです。ここは素直にお借りした方がいいですよ?」

そういうものなのか。面倒な……

「ケーマ殿! 馬車を用意している間、お茶でもいかがかね? そちらのお嬢様の話もお伺いしたいのだが」

にこり、と領主様が俺とロクコを見て笑う。

「おおっと、俺はちょっと旅支度を整えなければ。ケーマ、ここは任せた」

「僕はちょっとギルドの方に頼まれてた書類を届けないといけないんでした。ついでに配達依頼とってきますね」

「ウチも行くで。共同依頼にするにはこっちのパーティーメンバー要るやろ?」

「あ、それなら自分も行くでありますよ! うへへ、ギルド貢献度の便乗させてもらうであります!」

「アタシはゴゾーと酒買いに行ってくるかね。ワタル、依頼はチームバッカスで受けといて」

蜘蛛の子を散らすように、気が付けば場に残ったのは俺とロクコ、そしてニク。

気を利かされた、というより、面倒ごとから逃げ遅れたって感じだな。うん。

「……じゃあ、折角だしお茶を御馳走してもらおうかしらね? ケーマ」

「……そうだな」

尚、お茶の席では貴族周りの知識で、マナーとかの結構ためになる話を聞けたので結果良かったと思う。

領主様から貴重なお話を拝聴している間に馬車は用意されて、早速あまり多くない荷物を入れ替えた。

ほとんど手荷物だからこれはすぐに終わり、あっという間にマイオドールとの別れの時がやってきた。

「皆様、どうかお気をつけて。クロ様も行ってらっしゃいませ……んっ」

「んぅ」

お、ニクの頬に行ってらっしゃいのキスを……やりおるマイオドール。ロクコにできないことを平然とやってのける。これが貴族の娘というものか。

「なっ!? や、やるわねマイ」

「ふふふ、ロクコ様もこのくらいできなければ、ケーマ様を盗られてしまいますよ?」

「だ、大丈夫よ! 私とケーマは死ぬまで切れない関係なんだから! ……大丈夫よね?」

大丈夫ダヨ。たぶん。

「んっんー? 大丈夫とは限らないでありますぞロクコ殿! なにせ自分がいるでありますからな!」

「変態エルフはすっこんでなさい。せめて7の掛け算を間違えなくなってから言うことね」

「ま、間違えたりしないでありますよ!? ……指を使えば」

いつの間にかロクコはシキナとも仲良くなってたのか。知らなかったな。

かくして、俺達はツィーアを出発した。今回はボンオドールとお茶を飲んだくらいだけど、ツィーアはいつでも来れるところだしこんなもんだろう。

……こっから先は初めて行くところ。何があるか少し楽しみでもある。

「とりあえず馬車で5日くらい行ったところに次の町がありますよ」

……結構遠いな!?