作品タイトル不明
サキュバスたちとの交渉
このままではロクコの目論見通り俺が働くかロクコの言う事を何か1つ聞くことになってしまう。
はやく何とかしなければ。
とりあえず教会で策を練ってたら村人の冒険者が3人ほどやってきたので洗礼した。
……のだが、やはりもうちょっとなんかしてくれと言われたのでヒツゥディを数える儀式(昼寝)をした。起きたらなぜか2人増えてたが、まぁそいつらも入信した。
信者、簡単に増えるな……まだ2日目だぞ。
さて、昼寝をしながら考えたが……要は、今仕事が無い奴を引っ張ってくればいいわけだ。
つまり俺――ではない! 俺は寝る系の仕事が忙しいのだ。
いるだろう、このダンジョンには特に意味のない内職でコケシを彫って遊んでるやつらが!
そう、サキュバスを働かせるのだ!
「というわけでサキュバス村前まで来たんだけど、よく考えたら俺、ゴーレムとしてしか面識ないよね? それで村にある教会で働いてくれっていうのはいきなりすぎるよな」
「そーですねー。それで、なんで私が一緒にいるのでー?」
俺は、研究室で魔法陣を彫っていたネルネを連れ出していた。
もちろん交渉役とするためである。
「ネルネには『ダンジョン側の人物』として活躍してもらおうと思ってな」
「矢面に立つってやつですかねー。まあいいですけどー」
既にセツナ達にはネルネがダンジョンのスパイと言ってあるし、こういう窓口は限定しておいた方がいいよね。
「じゃ、メッセンジャーゴーレムをつける。俺はここからモニターを見つつ操作するから。あ、ゴーレムのことはウーマ様と呼んでくれ」
「はーい、いってきますねー」
ネルネは軽い返事をすると、俺の出した黒いゴーレムを連れてサキュバス村に向かった。
物陰に隠れてモニターを開く。
「すみませんー」
「侵入者ね! 記念すべき2組目の――って、あら? ゴーレム様じゃないですか」
『おう、元気にしているか。今日は仕事を持ってきた』
「お仕事ですか! ではスイラを呼んでまいります!」
そのサキュバスは奥の方にあるスイラの部屋に走って行った。
すぐにスイラがやってくる。
「お待たせしました、ゴーレムさん。それで早速仕事の話なのですが――そこの女の子が関わっている話ですか?」
『全く関わってないわけでは無いが、まずは頼みたいことから言おう。ダンジョンの前に村があるのは知ってるだろう?』
こくり、と頷くスイラ。まぁ元々スイラは村に娼館を建てようとしてたもんな。
『その村に教会が建ってな。そこで何人かシスターとして働いてほしいんだ』
「シスター、ですか? 私達が?」
『そうだ。服をちゃんと着れば人間でも通るだろ?』
俺はオフトン教について簡単に説明した。
安息や休憩を重視した宗教であること。
教会でシスターとして働いてほしいこと。
働き手には見返り(給金)を用意していること。……あ、これは教会でお布施とか貰ったらそこから払う予定な。何も無かったら宿の従業員と同じように払うけど。
『何か問題はあるか? たとえば、種族的に服を着れないとか』
「……服を着るのは良いんですが、ツテもなくいきなりシスターと言っても追い返されるのでは?」
『ああ、それは問題ない。協力者がいる。コイツに紹介してもらえれば一発だ』
俺はここでネルネに目配せをした。にこっと笑むネルネ。
「なるほど、それでその女の子が関わってくる、と」
「私は宿の方に潜入してるんですよー。あー、正直ー、教会はゴブリンの手も借りたいくらいに人手不足らしいのでー、見習いシスターなので手伝わせてーとでも言えば楽勝ですよー」
『オフトン教としてはまず一休みしましょうとでも言っとけば大体問題ないから、適当でいい。それで、何人行ける?』
尚、シスター服については1着200DPのものを交換する用意がある。
帽子付きだから角も隠せるな。あ、これは羊系獣人とかの血が入っていると言い張ればいいのか? え、羽と角は消せる? サキュバスすげえな。
「……その子が裏切らない保証は?」
『100%裏切らない。こいつはダンジョンのモンスターだからな。それもネームドだ』
「私ー、ネルネっていいましてー、魔女見習いなんですよー。……むしろあなたたちのほうが裏切るんじゃないですかー? ってくらいですねー」
「……なるほど。いえ、私達も裏切りませんし、裏切るにしても一言伝えてから裏切ります。ダンジョンの支配下にこそありませんが、恩義がありますから」
あ、裏切る可能性はなきにしもあらずなのね。まぁ他に恩義のある相手とかもいるもんね、レオナとか。
そしてスイラは少し考えて、答えを出した。
「では全員で」
おおっと。サキュバスはミチル含めて10人。……予算オーバーだな。
『……サキュバス村はどうするんだ?』
「全員行けるというだけで、実際に行く人数は雇われる数によるでしょう」
『えっと、なんだ、そんなにここの生活は飽きてたのか?』
「実の所、平和なのはとても良いのですが……人がいませんので、空気中に漂う精気的な成分が不足してきているのです。いまはまだ影響ないですが、そのうち体調を崩す者も出てくるかと……そうなる前に相談しようとは思っていました」
何と、サキュバスにはそんなものが必要だったのか。人から出るとか、DPの亜種か何かかよ。
『今までは大丈夫だったのか?』
「人里の近くであればある程度は。それにレオナ様がおりましたから……あの方おひとりで十分すぎるほど補充してくれていました。あの方はエロいです。超エロです。サキュバス100人くらいならお1人で養えるエロの権化です」
マジかよレオナすげぇな。それに比べたらシキナなんてただの耳年増だ。
あいつはアレでいて口だけだからな。
『えっと……なんならゴブリンでも派遣しようか?』
「うっ、最後の手段ですよそれは。飢え死にするかどうか選べと言われて、どうしても生き残りたい者だけが手を出すレベルです。……ミチルには味わわせたくないですね……」
苦いモノを飲み込んだような顔になるスイラ。……ゴブリンはやっぱり不味いのか。
「そんなわけで、村に行けるのはこちらとしてもありがたい事なのです。不安はありますが」
『ふむ。じゃあ全員が行くことにして、交代制にするか……』
まぁ外への行き来は裏口を使えばいいとして……急がなければダイン商会にシスター服を発注することも可能だしな。
急ぎで5着あれば問題ない、としよう。
『ならとりあえず、シスター服は5つ用意しよう。使いまわしてくれ』
「ミチルの分はサイズが合わないですね。あの子はずっとでも良いですか?」
『いいぞ、交渉成立だな。シスター服は用意してネルネに届けさせる。最初に村に行く5人は準備しておいてくれ』
「はい、一着は子供用でお願いします」
『解っている』
そう言って、俺とネルネは一旦サキュバス村を後にした。
*
「おお、オフトン教のシスター見習いなのか。歓迎しよう」
「そうなんですよマス……司祭様ー」
オフトン教会にて、俺はネルネと話をしていた。その後ろには5人のシスター見習い(サキュバス)がいる。
「よその町から来たというオフトン教のシスター見習い」という設定でスイラたちサキュバスを俺に紹介するネルネ。
そして俺はそれを快く認めて受け入れる司祭役。
うん、茶番だな!
当然、よその町もなにもオフトン教はまだここにしかないぞ。
けどこの嘘が通ってサキュバス達はほっとしている。中には俺のことを熱い視線で見つめてくるのもいるくらいだ……聖職者は溜め込んでてサキュバス的においしいのが多いとかなのかね?
「ええとー、今ここに居ないものがあと5人いるのでー、みんな面倒みてもらっていいですかー? 5人ずつで構わないのでー」
「ふむ? 通いということか。どこかに住居はあるんだな。5人ずつ教会に泊めればいいのか?」
「そうですそうですー。あ、それと見習いなのでー、まだオフトン教について詳しくない人ばかりなんですがー、大丈夫ですかー?」
「もちろん。『オフトンは誰にでも開かれている』と聖典にもあるように、オフトン教は懐が広いからな。それに今は人手が足りない……事情はありそうだが、細かい点には目を瞑ろう。些細な問題を気にしていては眠れなくなるからな」
俺は、スイラの顔を見て話しかける。相変わらず美人だよなぁ……こんな美人シスターがサキュバス……うん、薄い本が厚くなるな。
「ええと、スイラだったか。君がシスター見習いの代表だな?」
「はい。司祭様の寛大さ、大変ありがたく……オヤスミナサイ」
ぎこちなく胸の前で手を組んで祈るスイラに少しほっこりする。
そういえば俺、サキュバス達に記憶を消されてることになってるんだよな。
あんまり絡まれても困るし、ある程度の距離感を保つために少しからかっておくか。
「……おや? どこかで会ったことはないか?」
「えっ!? いや、そんなことは、ありませんよ?」
「ふむ……気のせいだったかなぁ? いや、どこか引っかかる……まぁいいか。そちらの小さなレディも初めまして……かな?」
「ふぇ!? あ、えっと、はい、村長さん! 初めましてですよ!」
「み、ミチル。この方は司祭様。司祭様よ?」
「はっはっは、俺は村長でもあるからな。好きに呼んでくれ。敬語も特にいらん、それが素で話しやすいっていうなら自由だが」
これで必要以上に絡んでくることはないだろう。
下手に刺激して思い出されたらサキュバスってバレるもんな。
「それでは教会内を案内しよう。ついてきてくれ」
こうして俺は、サキュバス達をシスターとして教会の管理人にすることに成功した。
見たかロクコ、これでお前の思い通りにはさせないぞ!
……まぁ実際、働く方はともかくロクコの言う事をひとつ聞くくらいなんてことないんだけどね?