軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オフトン教的に。

「とりあえずオチンチンいうのは止めろ、下品だから」

「はっ、了解であります……えーと、で、その、我々はどうするべきなのでしょう師匠」

じー、と視線が俺に集まる。

……どうしろっていうんだろうな、ホント。

視線から目を逸らすと、建てたばかりの教会が見えた。

マイオドールが俺の視線に気が付き、教会を見る。そしてまた俺を見て言った。

「ケーマ様。こういうときオフトン教ではこうする、みたいなことはあるのですか?」

……なるほど、宗教ならそういう教えがあってもおかしくないよね。

「白神教ではどうなのですか?」

「問題が発生した場合は基本的にリーダーに対処を聞くようになっていますわ」

冒険者の神らしい回答だ。

で、それに当てはめた場合は俺がリーダーだと。……うん、村長だもんな。

「えっと、そうですね。……オフトン教ではこういう時、まず問題を整理して、時間が解決してくれることはほっとく。緊急性があるものはさっさと片付ける。あとは臨機応変にってところですかね……誰が悪いか、と言う問題についてはこの際どうでもいいことでしょう。強いて言えば、間が悪かったということで」

ぽんぽん、とシキナとマイオドールの頭を撫でる。

「でもそれでは自分の気が済まないであります……」

「じゃあ弁償したらいいだろ。あるいはかわりの薬を用意するとか」

「おお、そうでありますな! 弁償するであります! でもすぐには用立てられないので、クッコロ家の家宝、『神の敷布団』を担保としてマイオドール殿にお預けするでありますよ」

「弁償していただけるならありがたいですが、その担保は不要ですわ。私はケーマ様を信じてます。その弟子というならケーマ様の顔に泥を塗るようなことはしないでしょう」

「む、そうでありますか? まぁ、実家に頼み込んでも弁償すると約束するであります」

ん? ちょっとまって。今『神の敷布団』とか聞こえたんだけど。

「……シキナ。お前今担保に何を預けるって言った?」

「クッコロ家の家宝『神の敷布団』でありますよ」

「なんだそうか。てっきり『神の敷布団』って言ったかと思ったよ」

「言ったでありますよ?」

……マジか。聞き間違いじゃなかったか。

唐突に神の寝具の情報が手に入ってしまった。

なんかこう、誰かの陰謀を感じるぞ? 具体的にはハクさんかレオナのどっちかか?

えーと、これで所在が分かってるのはツィーアに『神の枕』、クッコロ家の家宝に『神の敷布団』か。……あと、レオナも『神の掛布団』を持ってるんだったな。ロクコも持ってるからダブリだしレオナの所在が不明だからまあこれは無視でいいや。

「ふむ……シキナ。その、『神の敷布団』はまさか今持ってたりするのか?」

「はいであります。自分は父に命じられた管理者でありますゆえ、常に持ち歩いているのでありま……あ、これは内緒でありました! 聞かなかったことにして欲しいであります」

さらりと重要なことを漏らすシキナ。

わざとやってんじゃないだろうなコレ。いやむしろわざとだろ。……でもコイツなら天然ということもあり得るか。

……ダメ元で、どうにか借りれないか試してみるかな。

「……よし分かった。それじゃあ弁償は俺が金を出してやる。マイ様、おいくらで?」

「ええと、父に確認しておきますわ」

「よろしくお願いします。で、シキナ。お前は俺に担保を預けろ……というか『神の敷布団』貸せ」

「……えーと、聞かなかったことに」

「ならん。貸せ」

「むぅ。師匠、『神の敷布団』をどうするつもりでありますか?」

「そりゃお前」

俺は親指でクイっと教会を指した。

「オフトン教の客寄せに飾らせてもらうから。あと普通に『神の敷布団』で寝てみたい」

「そこまでハッキリ言われるとむしろすがすがしいでありますな! ……まぁ師匠ならいいであります、お貸しするでありますよ」

「いいのか?」

あっさり貸してくれるということになり、思わず聞き返してしまった。

「いいであります。ただし、絶対に無くさないで欲しいでありますよ。家宝でありますゆえ」

「まぁそこは厳重に管理するけど」

「では後ほど渡すであります」

自分で聞いておいてなんだけど、あっさりすぎる気がする。

罠だろうか。何かあってもおかしくないな、気を付けよう。……と、その前に教会の管理人をどうにかしなければだよな。1000DPで。

「よし、それじゃあ俺は戻るから」

「ちょちょちょ、ちょっと待つでありますよ師匠! 問題はまだ片付いていないのであります!」

俺は部屋に帰って教会の管理について考えようとしていたのに、シキナが引き留めてきた。

「なんだ、薬のほうは弁償するってことでカタがついただろう。何が残ってるって?」

「その、じ、自分のオチンチンについてであります。師匠、使い方を教えて欲しいのであります……」

「あとでオムツを支給する。覚えるまで存分に漏らしていいから自分でどうにかするんだな」

「オムツ!? し、師匠、さすがにこの歳でオムツは恥ずかしいであります! あ、でも師匠がそういうの好きっていうなら 吝(やぶさ) かではないのでありますが」

なぜまんざらでもない顔をして頬を赤らめる。俺にそういう性癖はないぞ。

「……仕方ないな、お前の股間の問題についてはセツナにでも相談してこい。俺に聞くな」

「はえ? どうしてセツナ殿なのでありますか?」

「そりゃ――」

あいつがフタナリだから、と答えようとして、そういえば俺がセツナの性別を知ってることは不自然だという事に気が付いた。

セツナは普段性別を女としている。俺がセツナの性別を知ったのはこっそり【超変身】をつかって知ったのと、ダンジョンマスターとして『ウーマ』が聞いた程度だ。

「――あいつは、その、オフトン教的にな。そう、オフトン教的にいいからだ」

「オフトン教的にいいのでありますか?」

「ああ。昨日の夢に出てきたんだ。これはきっとセツナに頼るといいという予知夢だな。あと妹のナユタは錬金術師だし、薬についても何か分かるかもしれないぞ」

「予知夢でありますか! では聞いてくるであります!」

そう言って、シキナは宿に走って行った。

ふぅ、誤魔化せたぜ。

「ケーマ様、その……大変申し訳ありませんが、すぐに代わりの薬をご用意いたしますので、引き続き婚約をさせていただければと」

「いや別に、薬を婚約の条件にした覚えはないのですが?」

「ええ、分かっていますとも」

「むしろ1ヵ月だけという約束でしたが。まだ婚約者の名前は必要なんですか? 延長料金いただきますよ?」

「……ふむ。それでは、ツィーア家からもケーマ様に『神の枕』をお貸しすることで、その延長料金とするのはいかがでしょうか?」

えっ、いいの? と聞いてしまいそうになった。

これはあまりにも話がうまく行きすぎている。

……どういうことだ? なにか起きているのか?

それとも、まさかオフトン教のご利益だとでもいうのだろうか。