軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

(特に進展のない話)

「自分は最弱でありました……」

模擬戦でフルボッコにされたシキナは、すっかり自信を無くしているようだった。

戦闘の教育については俺にできる気がしないのであの4人に任せよう。あの模擬戦に混ざっていればそのうち強くなってくれるさ。

強くならなくても知らね。俺は師匠になったが、何の、とまでは指定していないもんな。

つまり俺がその気なら、昼寝の師匠だからまぁ寝とけと言い張ることも可能!

「なに、別に強くなくてもいい。学ぶために俺のとこに来たんだろ?」

「言われてみればそうでありますな!」

そしてあっさりと復活した。この前向き加減は少し羨ましいな。

その後、レイ達とも顔合わせをした。

受付に座ってるドール(指輪サキュバスが憑依した外見に拘ったゴーレム)ことネルには驚いていたが、普通に挨拶できた。

モンスターとみていきなり斬りかかる程じゃなくて安心したよ。

「ネルネ殿とネル殿は名前が似てて間違えそうでありますな!」

あ、それ言っちゃうんだ。という事もシキナはどんどん言うタイプのようだ。

騎士団を辞めさせられた理由ってやっぱりそういう所なんだろうな。

「時にマスター。……シキナさんは新しい抱き枕要員なのでしょうか? 私達はまだ一度もお呼ばれしていませんが」

それとレイ曰く、食堂の方でも先ほどのシキナの大声は聞こえていたらしい。

……つまり、宿泊客には大体聞こえてたんだろうな。うわぁまた何か噂されそう。鬼畜村長とかエロ村長とか。

「……何を言ってるのか理解できないな。それに、その言い方だとレイ達も抱き枕になりたいように聞こえるぞ?」

「あ、いえ、その。はい、じゃなくてですね、えっとですね。 烏滸(おこ) がましいかもしれませんが、やはり順番というか序列は大事ですからその」

まさか、本当になりたいのか? 抱き枕に。

……抱き枕になるのが序列の頂点なのか? 一体どういうことになってるんだオイ。ニクは単に付き合いも長くて重宝してるだけで、抱き枕とは一切関係ないんだが。

「ケーマ師匠、これはレイ殿達も抱き枕にせねば男が廃りますな! レイ殿は抱きしめ心地がよさそうでありますし、いかにも女の子って感じの良い匂いするでありますし。キヌエ殿もふんわりして柔らかそうでありますし、焼きたてのパンのようなお腹が空く良い匂いするでありますし。ネルネ殿も素朴で可愛らしく……ただ、お薬みたいな匂いでありますな。あとネル殿はヒンヤリしていて鉄の匂いでありますので、楽しい戦場の夢が見れそうであります。寝がえりで潰されそうでありますが」

「黙って?」

「はっ! 余計なことは言わずに黙るであります!」

既に十分余計な事は言ってるんだよなぁ。まったく。

「勘違いしてるかもしれんが、基本的にニク以外を抱き枕にする気はないぞ」

「はい、承知しております」

すっと頭を下げるレイ。ちなみに「基本的に」と言ったのはロクコがたまに来るからだ。

パートナー宣言してからは神の掛布団を抱えてたまに来るようになった。

だが天罰が怖いので、神の掛布団は使っていない。ふにょんとした最高の触り心地を撫でて楽しむだけに留めている……生殺しだ、ぐぬぬ。

ロクコは「パートナーはOKよ!」と自信満々に言ってるが、根拠が無いしな。

「そういえば、ネルネ殿がワタル先生の想い人なのでありますな。純朴で可愛らしいであります! ワタル先生が好むのも分かるでありますな」

「へー。そーなんですかー?」

「そうなのであります! 帝都ではゴテゴテ着飾った自称淑女たちにしつこく言い寄られることも多くありましたゆえ。自分も何度かこの見た目を活かして虫除けに使われたりもしたでありますよ」

「なるほどー。シキナさん、もっと詳しく教えてくださいなー」

「了解であります!」

お? ネルネがワタルについて興味を……これは脈ありなんだろうか?

いや、これは 強請(ゆす) りネタにと考えてるんだろうな。見た目は純真な田舎娘のネルネだが、実は結構黒い腹を抱えている。

きっとこのネタでまた新たに帝都や勇者の情報を得るのだろう。ああ美味しい。

そして温泉を堪能してきたワタルは、早速ネルネに翻弄されていた。

ご愁傷様と言っておこう。

「はー、今日一日でものすごい勉強になったでありますなぁ」

「そうか、それは良かったな」

一日の終わり、俺は宿の従業員休憩室でのんびりとお茶を飲んでいた。

畳にコタツという和風のレイアウトで、地味に居心地がいいのだ。

まぁ、今の時期はコタツもコタツ布団ではなく薄い布かけただけのハリボテ?コタツだけどな。もちろん暖房機能はオフだ。逆に冷房機能作れないかな。

「さて、それじゃあそろそろ部屋に戻って寝るかな……」

「お、寝るでありますか? お供するであります」

と、俺がコタツから出るのにあわせて、シキナもコタツから出る。

「……ん? なんで?」

おかしいな、ちゃんとシキナの部屋を宿に用意したはずなのに何を言い出すんだ。

「師匠と同じ部屋で寝起きすることで、その一挙一動を学ぶためでありますが?」

「そんなさも当然のように言われても困るんだが」

「ではそちらのおちびちゃ……クロイヌ殿は良いのでありますか?」

と、シキナは俺の隣に立つニクを指さした。

ニクは良いんだよニクは。大事な大事な抱き枕だからな!

「それに、クロイヌ殿から『強くなったのはご主人様と添い寝するようになってから』とお聞きしております……!」

ニクが強くなったのってたしかに1年くらいの話だけど、俺との添い寝による因果関係は無いだろ。……無い、よな?

基本的に布の服ゴーレムのおかげなだけだよな?

俺はちらりとニクを見る。ニクは、分かっているのかいないのか、こくりと頷いた。

うん、俺の言いたいこときっと分かってないね。

「というか、ロクコから村長宅に入るなって言われてただろ。諦めろ」

「はっ、そう言えばそうでありました。諦めるであります!」

そう言ってシキナは用意した部屋に戻って行った。

素直過ぎて逆に何か企んでるんじゃないかって程に諦めが良いな。

……ちなみに、本当に諦めたらしく、特に何事もなく翌日になった。