軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

模擬戦しようか

……そういえばダンジョンをもっと深くしないとな。ハニワだ、ハニワを作ろう。

俺は現実逃避にそんなことを考えていた。

無意識に逃げようとして、引きこもり体制を強化しようと本能で思っていたのかもしれない。

「つまり、ケーマは別にゴブリンにその、私とかを襲わせたいとかは全然考えてないのね?」

「当然だ、あれはアイツが勝手に言ったことだ」

「はっ! それは違うであります! 師匠が言えと言いましたであります!」

「おう黙ってろ、お前が騎士団クビになった理由が分かったわ」

「はっ! 余計なことは言わずに黙っているであります!」

「……はぁ、まぁいいわ。ケーマを信じるから」

とにかくロクコの誤解を解くことはできた。信じてくれてありがとう。

「で、何? ウチで面倒みるのコレ? ちょっとワタル、どういう事よ」

「あっ、よかった無視されてたわけじゃなかったんですね。いやぁ実は僕の知り合いの娘さんを、ケーマさんに鍛えてやって欲しいっていう話でして。さすがケーマさんですよね。ロクコさんもケーマさんのこと凄いと思いますよね?」

「え? そうね。ケーマだものね」

「ケーマさんが凄いから頼りたくなる気持ち分かりますよね?」

「まぁ、ケーマだものね」

ふふん、と自分のことのように得意げになるロクコ。

順調に騙されてる感があるが、弟子にする話を受けてしまった以上は都合がいいので黙って見ておこう。やれやれ、ワタルも随分やるようになった。

「しょうがないわね、まぁ宿に置くくらいはいいでしょ。……けどそのド変態を村長宅には入れないでよね、ケーマの貞操が危ないから」

「よかったね、ロクコさんからも許可を貰えたよシキナちゃん」

「はっ! ありがとうございますロクコ殿!」

話がまとまってくれたようで何よりだ。

一応新しい住人という事で、他の面々にも顔合わせをしておくことになった。

ロクコは早速シキナを組み込んだシフト表を作ると言って部屋に戻り、ワタルは温泉に入りたいからとついてこなかった。

働いてる最中のレイ、キヌエさん、ネルネは後回しにして他の面々……丁度、裏庭に集まっているようだ。

行ってみるとニクとセツナが模擬戦を終えたばかりのようで、イチカとナユタからタオルと水筒を受け取っていた。

「あ、ご主人様。訓練見に来たん? それとも、いかがわしい事しに来たん?」

「なんでそうなる」

「だってさっき大声で熱烈宣言が聞こえてきてたで? なぁ?」

イチカの発言を受けて、こくこくとニク達が頷いた。

……ああ、外までばっちり聞こえてたか。いやまぁロクコが来た時点で分かってたけど。

「それは誤解と事故だ。えーっと、ちょっと住人が増えることになってな。ワタルの知り合いの娘さんだそうだ」

「はっ! 偉大なる父、ダイン・クッコロが長女、シキナ・クッコロであります! このたび自分はケーマ師匠の弟子になりました! よろしくお願いします!」

「……何でもするそうだから、宿の方でも働かせる。後で仕事を教えてやってくれ」

「へぇ、なんでも?」

「内容を具体的に聞いたらさっきのアレだったわけだ……イチカ、そのニヤニヤ顔はやめてくれ、する気はないから」

「なんや、てっきりロクコ様とニク先輩以外にも興味でたかと思ったのに」

なにを言ってるのかよく分からんな。

「ところで模擬戦をやっていたのでありますか? 自分も混ぜて欲しいであります!」

「お! いける口なの? じゃあさっそくボクとやるの! 武器つかう? 木剣あるよ」

模擬戦をしたいと言い出したシキナに、戦闘大好きっ娘のセツナが早速食いついた。

ニクとの模擬戦をしたばかりだろうに、元気なもんだ。

「では、木剣を使わせてもらうであります。ラヴェリオ帝国騎士式剣術、お見せするであります! これでも自分は騎士……でありましたゆえ、腕に自信はあるであります!」

「じゃあボクも本気でいくね!」

セツナが構えた。相対して、シキナも木剣を構える。

「いくであります!」

「うん、いくねっ! あ、ボクはセツナっていうの、よろしくね」

そして模擬戦が始まったのだが、シキナはあっさり負けた。

「ま、まいったであります……手も足も出なかったであります……」

「なんというか、型通りすぎて……すごく戦いやすかったの」

「それは昔からよく言われているであります、数少ない自慢でありますな!」

いや、相手が戦いやすかったらダメだろ。

「そもそもセツナ殿が強すぎたのであります。自分はこれでもBランクくらいの地力はあると言われているのでありますが」

「あら、それじゃあ次は私とやってみる? 私はCランク程度の体術しか使えないけど」

「望むところであります! えーと、名前は」

「ナユタよ。さっきのむっちりたゆんたゆんの妹よ」

「よろしくであります、むっちりたゆんたゆんのセツナ殿の妹のナユタ殿!」

「……ボクそんなむっちりたゆんたゆんかな?」

次に挑んだのはナユタだ。戦闘向けじゃないと思ったのだが、案外戦えるのだろうか?

ちなみにセツナがむっちりたゆんたゆんな事については誰も否定しなかった。

……と、結果はナユタの完全勝利だった。

距離をとって投石、砂かけ、目を容赦なく狙う、魔法も使う、さらに暗器も使うとかもう色々と酷かったが、完全勝利だった。

「うぐおぉおぉ、目が、目がぁああああ」

「汚い、さすがナユタ汚い。彼の者の傷を癒せ、【ヒーリング】」

「あぁぁ、ふぅ。師匠ありがとうであります……こ、こんなはずでは……」

「そうね、ちゃんと実力が発揮できたら勝てたでしょうけどね」

「そうでありますな! 自分は地力はあるのでありますゆえ!」

いや、つまり実力を発揮させない相手には見ての通りボロ負けなんだろ?

「ならウチ相手がちょうどエエかもな? あ、ウチはイチカっちゅーねん、よろしゅう」

「はっ! お願いするであります!」

かくして今度はイチカとの戦いだ。

今度はそれなりに実力伯仲といった感じで、見どころがある戦いだった。

しかし最後はイチカが若干上回った。

「ま、まけたであります……」

「ふー。フェイントに面白いようにひっかかってたなぁ。捌けるようになればもっと強くなると思うで?」

「父にもよく言われたであります! フェイントは永遠の課題でありますな!」

いや、永遠の課題て。そこは克服しようよ。

とりあえずまた【ヒーリング】をかけて回復してやった。

「このままでは帝国騎士の名折れであります……こ、こうなったら、1勝だけでも! おちびちゃん! 私と勝負であります!」

「はい、いいですよ」

「手加減無用でありますよ!」

そしてニクとの模擬戦の結果は言うまでもなくニクが圧勝した。

「なんででありますかーーー!?」

「いやだって、クロちゃん、最近はボクも5回に3回負けるくらい強いし」

「ハハ、先輩のコトは見た目で油断したらアカンでぇ?」

え、ニクってばセツナに勝ち越すくらい強くなったの? 子供って成長早いなぁ。

俺はニクを優しく撫でる。犬耳と尻尾がぱたぱたした。

「せ、セツナ殿がこの中で一番強いんじゃなかったのでありますか!?」

「え? 一番強いっていうなら、ケーマ村長じゃないかな。ボクは負けたし、まだ一度も勝ったこと無いよ」

「なんと!? さすが師匠でありますな!」

あれは引き分けだったっつってんだろ……