軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

マイオドールとお出かけ

とりあえず手紙はロクコ宛てで、帰るのが遅くなりそうなことと、下手したら断り切れないかもしれないががんばる旨を書いた。

……あと、もし使いのヤツが2、3日遅れるとか言ってたら教えてくれとも。

返事をもらってくるように言っておいたし、まぁ……うん、今日の所は寝よう。

ニクを抱き枕に寝ることにした。

……客間の寝具はオフトンだった。これ、ウチのダンジョンから出た奴だな。領主の屋敷でも採用されているとはな。

そして翌日。ロクコからの手紙が届いていた。えーっとなになに?

『おこ』

2文字だよ。日本語だよ。早速スキル【日本語】使いこなしてるなロクコ。

しかし「おこ」ってなんだよ。「怒」ってことか? ……他に嫁作っても怒らないって言ってた気がしたけど、やっぱり 怒(おこ) なの?

いやまて、良く考えろ。これは「OKOK」、つまり「わかった、いいってことよ」ってのをローマ字読みしての「おこk」、その短縮形の「おこ」という可能性が

「なにやらすごく不機嫌なようでした」

「アッハイ……」

ロクコだって女の子だ。怒るという漢字には女心が入ってるし、しかも又と言う字も入ってることから考えるに、他の女に手を出したらそりゃ怒るってもんさ。

あと怒らないとは言っていなかったか。 拗(す) ねるとは言ってたっけな……。

「さて、それで今日はどうすればいいんだ? 寝てていいのかな、二度寝しよう」

と、扉がノックされた。

うん、朝ごはんですね分かります。

メイドさんに連れられて向かった朝ごはんの席には、マイオドールとボンオドールのみがいた。朝ごはんは焼きたての丸いパンと、目玉焼きとボアのベーコン、あとサラダだった。シンプルながらいかにも朝飯って感じだ。サラダのトマトが濃い味で美味かった。

「さて、今日はどうするか予定はあるのかね、マイ?」

「はい、ケーマ様と孤児院の視察に赴こうかと」

「なるほど、我々貴族の仕事を分かってもらうには丁度良いかもしれないな。護衛は……ふむ、ケーマ殿が居るから要らないか?」

ちゃっかり面倒なことになりそうだ。せめてタダ働きは遠慮したい。多少でも金を貰っておかないとあれもこれも「タダだし」と気楽に押し付けられかねない。故に、むしろボッタクるべきだ。

「……半日だけになりますが、うちのパーティーに対する今日1日分の護衛依頼というのであれば引き受けますが」

「かまわないよ、相場で出しておこう。指名依頼という扱いにしておく」

半日で1日分払えと言ったのにあっさり払われた。もっと吹っ掛けなきゃだめだったか……いや、貴族で領主だし金はあるのか。

「では早速行きましょうケーマ様!」

そんなわけで、俺とニクはマイオドールに引っ張られるようにして孤児院に向かうのであった。

孤児院は、教会と併設されていた。先に教会の方にお参りし、その後に孤児院の方に行くらしい。

マイオドールが行くことをあらかじめ知らされていたようで、神父様が出迎えてくれた。

ところでこの教会、どこの何教だ? まさかダンジョンぶっ殺主義の光神教じゃないよな。そんなことを考えていると、マイオドールが解説してくれた。

「ここはラヴェリオ帝国の 礎(いしずえ) を築いた冒険者の神、白の女神様を 祀(まつ) っているのですわ。さ、お祈りをしましょう」

明らかにハクさんのことだ。わーい 御利益(ごりやく) ありそー(棒)

「白の女神様って、教会まで建てられているんですね……実在の人物が神というのは良いんですか?」

「? 神は実在する者でしょう? 実在しない神など居るのですか?」

ああそうか。この世界普通に神様いて御利益をもたらすんだ。

だったら実在の人物が神となっても全く問題ない、と。御利益さえあれば。

まぁ地球でも過去の偉人が神になってることもあったし、新興宗教なんかは教祖が神扱いだったし、そういうもんなんだろう。

と、俺とマイオドールの話を聞いていた神父様が話しかけてきた。

「……もし、お尋ねしますが、あなたは白神教ではないのですか?」

「うちはオフトン教です。白神教とは仲よくやっている宗教ですよ、夜の安らぎを守る神を崇めているのです」

「聞いたこと無い宗教ですが……夜のやすらぎということは、闇神様から分派した宗教でしょうか。であれば、白神教とは友好的な関係で間違いないでしょう」

「ええまあそんな感じです」

という事にしておこう。神父様が言うなら間違いないさ。

お祈りについての作法はよく分からないので、マイオドールを参考に片膝をついて胸の前で手を組んでおいた。なむなむ、面倒事が片付いて早く帰れますように。

……これについては御利益ないよね絶対。確信が持てるわ。

お祈りが済んだら、孤児院の方に向かう。

敷地に入ると、子供達の騒々しい声が聞こえてきた。わいわいきゃっきゃと甲高い。ウチのニクを見習えと……あ、ニクは行き過ぎだな。

「あ、マイおじょうさまだ!」

「ホントだ、マイおじょうさま! おじょうさまー!」

ニクやマイオドールと同じか、それより小さい子供達が笑顔で集まってきた。

獣人、人間、エルフ、おそらくドワーフ、と、人種も豊富だ。

こう言っちゃなんだが、案外と身綺麗で普通な感じだ。この世界は『浄化』みたいな生活魔法があるし、そういうもんなのかな。

「そっちのにーちゃんは誰だー……ですか?」

「ああ、こちらは」

「俺はマイ様の護衛の冒険者だ、こっちのちっこいのもな」

「護衛なのに弱そーだな。こっちのチビも護衛なんてできんのか?」

ばかめ、ニクは俺より強いんだ。この見た目で敵を油断させるのもポイントだからわざわざ言わないけどな。

「これでもDランク冒険者だからな。ま、治安の悪い所に行くわけじゃなきゃ俺程度で十分ってことだ」

「なるほどなー」

「まぁ俺らは護衛だから、マイ様の方にいってくれ、な」

「わかったー」

しかし子供の相手は割と苦手なんだよな、舐められるというか……いやべつに知能レベルが近いとかいうわけじゃなくてだな。えーっと。

まぁそれはさておき、マイオドールは子供達にも大人気のようだ。貴族といっても顔と名前をしっかり覚えられているあたり、ここには頻繁に顔を出しているのだろう。

「ケーマ様も一緒に遊びませんか?」

「いえ、俺はいいです。そこの木陰でのんびりさせてもらいますよ」

「なーなーマイおじょーさま! 早くミノやろうぜ! ミノごっこ!」

「はいはい、と、それでは行ってきますね、ケーマ様」

と、はしゃぎまわって、鬼ごっこみたいな遊びをしているようだ。背中を棒でタッチされたら負けらしい。ミノっていうのはミノタウロスで、武器に見立てた棒で斬られたら負けか。……うん、面倒過ぎて付き合ってられないね。

隣を見ると、ニクは混ざりたそうに――していなかった。

やっぱり普通の子供とは色々違うよなぁ、ニクって。

「混ざらなくていいのか?」

「……わたしだと、あの程度、一瞬なので。楽しくないです」

そうか、レベルが違い過ぎるということか。

だが、そんなつぶやきを聞いてた子供がニクに挑む。

「おれらだって、将来は冒険者になるんだ!」

「そう簡単には負けないぞ! 大人相手でも5分は足止めできるんだからな!」

「……」

そんな男の子を相手にニクはすっと立ち上がり、その手をやさしく掴んだ。

「な、なんだよ……うわッ!?」

「はい、おしまい」

ニクは子供を軽く投げ転がし、背中をぽんぽんと叩いた。

「ふ、不意打ちはひきょうだぁ……」

「本物のミノタウロスにも、そういう?」

ニクがそういうと男の子は黙った。……本物のミノタウロスはそもそも見た目詐欺しないだろうに。まぁ、実力差は伝わったか。

だが、そこからニクは大変なことになった。見た目に合わない実力の片鱗が伝わってしまったニクは、有能冒険者として子供達から「すげー!」「かっこいー!」「どうやったの、教えて!」と、囲まれることになったのだ。

……うん、こっちを見ても助けないぞ、自分でどうにかしなさい。

ニクには、こういう同年代との付き合いはいい経験だろ。