軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ツィーア家の食卓

「そしてイヌ、サル、キジをテイムしたモモタロはみごとオーガの集落を打倒し、ため込んでいたお宝と魔石を手に入れたのです」

「ほぅ……先ほどのウラシマの水中ダンジョンの話も初めて聞きましたが、モモタロの方がドキドキしますね」

ウラシマの方は最後タマテバコミミックに食べられてしまうバッドエンドだったもんな。

モモタロは戦闘シーンが気に入ったらしい。ちなみにニクも横で食い入るように聞いていた。俺も思いのほか力が入ってしまい、立って身振り手振りを加えつつの結構な話し方をしてしまった。

と、どこからか「からーん、からーん」と鐘の音が聞こえてきた。

「あら、夕ご飯の時間ですね。ケーマ様、食堂へまいりましょう」

「おやもうそんな時間ですか」

来る前に串焼き肉を食べたのであまりお腹は空いていないが、まぁ小腹がすいている程度にはなっていた。

さてさて。それじゃあ領主様のお食事をご馳走になるとしますか。どんなもん食ってるんだろうな? 宿の参考にさせてもらおう。

食堂につくと、細長い食卓があった。何人も同時に食事ができそうだ。

既にボンオドールは席についており、そこから3人が座っていた。

青年、妙齢の女性、思春期っぽい男の子。……領主一族だろうな。

「ああ、紹介しようケーマ殿。私から近い順に、長男のロンド、妻のワルツ、次男のジルバだ」

「……はじめまして。ゴレーヌ村の村長を務めている、ケーマです」

頭を下げる。……うん、婚約者候補の面通しか。圧迫面接だろうか。

席に座ろうとしたら執事が椅子を引いてくれた。マイオドールとニクは素直に席に座る。少し戸惑ったが、俺も座る。

そして食事が始まった。

食事は思っていたよりしょぼかった。パンは白かったが、野菜スープは普通に塩味。具に血抜きがされているウサギ肉が入っていた。あとはサラダか。

領主の食事、として想像していたより遥かにシンプルなものだった。

ただ、素材が良いのか、料理人が良いのか、あるいはその両方か。素材の味を充分に生かした素朴ながら力強い味わいだった。

「ケーマ殿の宿で出しているような豪勢な食事ではないだろう。期待外れだったかな?」

「いえ、丁寧に作られたいい食事です。素材の味が良い」

「ふむ。それは我々にとってなにより嬉しい褒め言葉だ。今日の素材は殆どがツィーアでとれた物だからね」

素直に感想を言うと、にこりと笑みを深めるボンオドール。

そこに長男のロンドが話しかけてくる。

「ケーマ殿は、冒険者にしては筋肉が無いな。魔法使いなのか?」

「ええ、まあ。後衛です。剣については万一近づかれた時に時間稼ぎをする程度ですよ」

「ふむ? そうなのか。……武勇にも優れている、と聞いていたので手合わせをしてみたかったのだが」

「それは俺ではなくこちらのクロの話でしょう。こう見えてうちのパーティでは最強の前衛ですから」

「……まるでそうは見えないな。本当だとすればこれほど恐ろしいことは無いが……手数で稼ぐタイプか?」

長男のロンドは白兵戦に興味がおありのようだ。ダンジョンの外じゃメニュー出しても1日当たりのDPが分からないが、自身もかなり鍛えているのであろう。確かな自信がそこにあった。

ロンドの興味がニクに移ったところで、次男のジルバが話しかけてくる。

「ねえケーマさん。アイアンゴーレムを狩るのってどうやるの? 鉄の塊だと剣じゃ斬れないよね?」

「露出してる魔石があればそれを狙うか、魔法をぶつけるか……あとは単純にハンマーで衝撃を与えるか。ま、ハンマーは知り合いのCランク冒険者が使ってるんですが」

「魔法かぁ。ケーマさんはどんな魔法が使えるの?」

「後ろからちょこちょこ使える魔法をいくつか。それ以上は冒険者として黙秘ですね、無暗に手の内を晒すのは死に近づくようなものですからご勘弁を」

「うう、気になる……」

次男は魔法がお好みか。中二病的な 空気(アトモスフィア) を感じるな。いや、この世界じゃ普通に魔法があるから別にそういうわけでもないのか。日本で言うプログラマーみたいな感覚なんだろうか。頭脳労働的な意味で。

死に近づくようなもの、と言われてそれ以上聞くわけにもいかなくなったジルバを置いて、今度は領主夫人のワルツだ。

「ケーマさんは商売や村の運営もお上手だとか。あの村を発展させた手腕、お聞きしたいですね」

「いえいえとんでもない、俺はまるっきりの素人ですよ。商売についても村に集まった中に敏腕の商人が居て、そいつに任せてるのです。村が発展したのもたまたまダンジョンからアイアンゴーレムが出たからで、俺の功績ではないでしょう」

「ふむ、謙虚なのですね」

「事実ですよ」

領主夫人をあしらうと、次はマイオドールだ。

「ケーマ様はダンジョンから珍しいものをたくさん見つけたのですわよね?」

「ええ、運が良かったです」

「その中で一番珍しいモノはなんでしょうか?」

「ふむ。……そうですね、最近見つけたものですが、宝箱からゴーレム? が出てきまして」

「宝箱から? それって、ミミックみたいなものですか?」

「それがなんと従魔みたいなものでした。魔力を与えるとペットのようについてきましてね、しかもこれが中々に賢くて。いまは宿で働いていますよ」

「働くゴーレムですか! すごく珍しいですわね」

そんなこんなで話を続けて、結局食べ終わるのが俺が最後になっていた。……ニクにいたってはさっさと食べ終わって部屋に帰りたそうにしていた。

そして食後のお茶を飲んでいるときのことだった。

「そうそう、ケーマさんは白の女神様からお褒めのお言葉を賜られたとお聞きしましたが」

ぽろりとワルツがそう言った。うん? 奥さん、今のもう一度。

「白の女神様ですか?」

「うぉっほん! そうだな、ケーマ殿の宿にはなんでも温泉があるとか。白の女神様も大層気に入られているらしいな」

「ええ、そうでした。とても素晴らしい宿だそうですね?」

不自然なボンオドールの咳払いのインターセプト。うん、これあれか? ハクさんに繋ぎを作りたいのか?

よくよく思い返せば一介の村長相手に不自然なまでに強引な態度。平民に対する貴族の態度かとも思ったが……そういう理由があるとなれば、分かるな。

……ハクさんへの口利きを餌に、婚約せずに神の枕の情報を引き出せるか?

「そんなことよりケーマ殿。マイと話をしてみて、どうかね? 良い子だろう」

「ええ、俺にはもったいないですね。わざわざ俺なんかと婚約などして経歴に傷をつけることも無いと思うのですが?」

「あら、ケーマ様との婚約は傷にはなりえませんわ。わたくし、ケーマ様のこともっと色々知りたいです。ね、お父様?」

「そうだな。かえって箔がつくさ」

……え、この世界の貴族って婚約数が多い方が良いとかそういうもんなの? なぁにかえって耐性でもつくの? 婚約のポイントカードでもあるの? 破棄すると1ポイントとか?

「ではケーマ殿もマイの事は悪からず思っているわけだ。なら、もう2、3日泊っていくといい、そうしてお互いの事を良く知ってみてはどうだね?」

「仕事もありますので、明日には帰りますから」

「なら、マイがケーマ殿についてゴレーヌ村に行くといいか」

冗談じゃねぇ。来られてたまるか。

俺は、しぶしぶと了承する。

「……わかりました、1日だけです。……仕事の指示を出すので少し速達を」

「こちらから使いを出そう。それに手紙を持たせるといい」

「では、早速書いてきますので、失礼します」

「うむ」

俺はうとうとしかけていたニクを連れて退席した。

……さて、なんて書くかなぁ。