軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神の掛布団 (3)

ハクさんをやり過ごして部屋に向かう。

と、正面からイチカが歩いてきた。あくびをしている。

「お、ロクコ様やん。おはよー」

「おはよう。じゃっ」

「っと、まってまって」

と、軽い挨拶だけしてスルーしようと思ったのだが、がしっと肩を掴まれた。

なんてこった。名前を呼ばれてスルーした手前、またロクコのフリをしなければ……

「ロクコ様。……昨晩は、お楽しみでしたなぁ!」

「なんっ!? なんのことかさっぱりなんだけど!?」

「またまたー。ご主人様と一緒に熱い夜を過ごしたんやろ? ウチはこの耳でばっちり聞いたんやで?」

おいコイツ出歯亀してたのか。

「ドア越しでよう聞こえんかったけどな。綺麗とか見てとか舐めてとか触ってとか、ラブラブすぎて聞いてるだけでゴチソウサマやったでー」

「な、何を言ってるのか本気でサッパリなんだけど! ただ神の掛布団で一緒に寝ただけだし、添い寝、そう、ただの添い寝だから!」

「またまたー。ま、照れくさいのも分かるけどな。上機嫌なのバレバレやし、そんなによかったん?」

「確かに寝心地は良かったけど。それとこれとは別というか」

「ふぅんー?」

イチカがニヤニヤと俺(ロクコ変身中)を見る。

……なんだその可愛い小動物を見る目は。そのような事実は一切ないからな?

「まぁ、前に教えた事がちゃんとできたかだけでも聞いとこうか思てな。どやった? ご主人様はメロメロやったろ?」

「ええ、えーっと? うん、め、メロメロだったわ」

「そか! まぁおめでとさん。今ウチから言えるんは、以上や。また何かあったら相談乗るからなー」

おいイチカ。何を教えたんだ、何を。

それを聞く前にイチカは満足したようで去っていく。

「って、イチカ! 一緒に寝たのを他の人に言ったらだめだからね!?」

「わーっとりますってー」

フリじゃないからな!?

……行ったか。もしかして、今のやさっきハクさんに絡まれたのが天罰とかいう訳じゃないよな? 神も真っ青って内容じゃないし……まぁロクコ補正で軽減されてるからという可能性もあるけど。

部屋に戻ると、ニクがオフトンを畳んでいた。

「あ、ロクコ様。えっと、おめでとうございます?」

「……誰から聞いた?」

「イチカと一緒に、扉越しに。会場からはトイレと言って離れていたので、すぐ戻りましたが」

なんてこった、ニクまで……

「ええっと、なんて説明したらいいか」

「気にする必要はありません。それで、わたしからご主人様に関するアドバイスをと思いまして」

「え?」

俺に関するアドバイス……? なんだろう、気になる。もう少し様子を見てみよう。

「まず、抱き枕としての心得なのですが、トイレには先に行って、それからはあまり水を飲まない方が良いです。ご主人様は一度眠られると滅多に起きませんが、それでも明け方や二度寝した際には起きやすくなっています。そうなるとトイレに行けないので、結構大変ですよ」

えっと……なんか苦労かけてたみたい。ごめん。トイレとか好きに行っていいから。

「そして、寝てる時なのですが、舐めたり嗅いだりしてもご主人様は起きないです。狙い目です」

「何の!?」

「甘噛みとかできます。くせになる味です。大体反応を見てれば起きない点が分かりますので、そこは慣れてください。あ、舐めたらちゃんと拭くのが大事です」

ニク、おまえ俺が寝てる間に何してるの……

いやそれくらいいいけどさ。ペットとじゃれつく感じで、俺も犬耳触ったりしてるし。

「次に、ご主人様の股間が固くなった時の対応なのですが」

「まって」

「はい? なんでしょうか」

「……固くなってた?」

「男の人はそういうものだと、先輩から聞いた気がします。イチカも言っていましたし、そういうものなのです」

「……で、固くなってたらどうするって?」

「まず足を――」

「やっぱまって。いや、聞きたくない」

何。なんで俺はこんな小さい子に股間が硬くなった時の対応とか取られてるの?

神よ……これが天罰だというのでしょうか。

え、自業自得? 神の掛布団の天罰は関係ない? だろうね……。

「……大事な事なのですが、分かりました。確かに言葉では難しいところなので、そのうち実際に見せつつお教えします」

「何する気だ!?」

「まず足をどかして、邪魔にならないように――」

「ごめん聞いてない、今のは言葉のあやだから」

よもや性的な道具という意味での「ニク」の仕事とかしてないだろうな。

くそう怖くて聞けない。おのれ天罰。なにもかも天罰ってやつのせいなんだ。

「大丈夫です。ロクコ様」

「え、えーっと、何が?」

「わたしでも出来ますから、ロクコ様なら余裕です」

何が余裕なんだ……

「? 抱き枕ですよ?」

「お、おう」

ところで俺はどのタイミングで元の姿に戻るべきなんだろうか。

……これ以上ロクコの姿で居ても碌なことにならない気がする。くそう、ロクコの豪運は【超変身】の模倣対象外か! と嘆かざるをえないな。

というわけで、ものすごく気まずいのだが、戻ることにした。

はい戻った。

着ていたジャージがぴったりになる。

「……ご……ご主人……様……!?」

ニクがおろおろしている。

しばらくおろおろしているのを見ていたが、ニクはすっと座る。そして、頭を深々と下げた。

流れるような綺麗な土下座だった。

「……」

「とりあえず顔を上げてくれ」

「……はい」

「それで俺が寝てる時に何をしてたって?」

「えと、その。……甘噛みしたり、舐めたり……お、お父さんって呼んだり……」

お父さん……だと?

そうか、そうだよな。ニクだってまだ子供だ。父親が恋しい年頃だろう。しかもニクは昔の記憶が曖昧で、親の記憶すらあやふやだ。

となれば、同じ黒髪という共通点のある俺をお父さんと重ねて甘えるのは当然といえることだった。それほど年が離れているワケではないが、俺も男だ。そこは甘んじて受けよう。

「わかった。俺のことは、たまにならお父さんって呼んでいいぞ」

「えっ。……いいんです、か?」

「ニクは優秀だし、頑張り屋だからな。わがままも全然言わないし手がかからないのはいい事でもあるが……正直もっと休んだり甘えたりしてくれていいと思うぞ、子供なんだから」

俺はニクを抱きしめる。父親のように、優しく。

抱きしめながらぽんぽんと頭を撫でると、ニクの尻尾がぱたぱたと揺れていた。

「よし、それじゃあ何かしたいことはあるか? お父さんがなんでも聞いてやるぞ」

「で、では、そのっ……耳を、甘噛みさせてください」

「……耳?」

「だめ、でしょうか?」

「ダメなわけないだろ、さあ存分に甘噛みしなさい。舐めてもいいぞ!」

「……はいっ」

このあと滅茶苦茶はむはむされた。耳の穴舐められた時は思わず変な声が出たよ。