軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ご褒美

『それじゃ、ご褒美の時間だよー』

うん、さっきも聞いた。

『まずは副賞だ。がんばったご褒美として、君たちの名前についてだ。ハク・ラヴェリオ、ロクコ・ダンジョンコア。この名前を僕の権限に及ぶ限り、公認しよう』

「まぁ! 本当ですかお父様!」

「すごいわ、ケーマにつけてもらった名前が公認になるだなんて!」

よく分からない副賞だが、ダンジョンコアの2人は大喜びだ。

というか、ロクコの苗字がダンジョンコア……って、ああ、そういえば。だいぶ前にそんな名前で呼んだような。

「ロクコ、ハクさんの妹なんだからロクコ・ラヴェリオの方が良くないか?」

「えっ、そうなのかしら?」

「それにダンジョンコアって名前についてたら名乗ったときに正体がバレるぞ。……というわけで、そこの調整してもらってもいいですかね?」

『ふむ、僕としては「ダンジョンコア」を僕の子供たち共通の 苗字(ファミリーネーム) としてもいいくらいなんだけど。じゃあ……うん、ケーマ君の希望通り、調整しようじゃないか。695番はケーマ君の苗字を貰ってロクコ・マスダにしようか』

なぜそこで俺の苗字!?

ロクコを見ると、顔をぼっと赤くしていた。熱かったのか、両頬に手を当てて。頬が緩んでにやけてんぞオイ。

『父』はニコニコと微笑みながら話を続ける。

『僕は新しい名前とかを考えるのが苦手なんだよ。その点、番号というのは凄い発明だね。規則的に増やすだけで良いんだから』

「いや、ハクさんと同じラヴェリオで良いんじゃないかなと……」

『ハクはリオン君に嫁いだからラヴェリオなんだよ? ならケーマ君のパートナーであるロクコが君の苗字を名乗るのはごく自然な事だと思わないかい』

「父様、それ、それってつまり、け、ケーマに、と、嫁ぐってこと!?」

ちらり、とハクさんを見る。……ん? なんですかそのジェスチャー。親指立ててそれを首の高さで横切って、最後に下に突き立てて……あ、ハイ。「死ね」ですよね分かります。

「まてロクコ。俺とお前はまだまだ清い関係でありたいと思っているんだが」

「? 清い関係って何? 清くない関係とかあるの? まぁ多少汚れてもケーマとなら大丈夫よ」

にこり、とロクコがやわらかく微笑んだ。

ふいに向けられたそれに、ドキッと胸が脈打った。

「ああ、ご主人様の『浄化』は特別ですもんね」

「そう! 分かってるじゃないのニク。ケーマならしつこい汚れも一発よ!」

ニクの一言を完全肯定するロクコ。

ああそっち。そっちかい。なんかホッとしたわ。

あー不整脈。超不整脈だわー。こりゃ寝ないとなー。最近ダンジョンバトルでいろいろ忙しかったから疲れ出ちゃったわー。

「ええと、いきなり嫁ぐのどうのってのもなんだし、ダンジョンを捻って……ラビリンス、うちの世界の言葉で迷宮って意味ですが、これをさらに捻ってラビリスハートって苗字はどうですかね? あ、ハートは心臓です」

『迷宮の心臓か、いいね。じゃあそれを子供たちの共通の苗字に使わせてもらってもいいかい?』

「構いませんよ」

『よーし、それじゃあハク・ラヴェリオとロクコ・ラビリスハート。改めて2人の名前を僕の権限で公認する。そして、僕の子供たちはラビリスハートの姓を自由に名乗ることを許すよ』

どうもこの『父』、本当に「新しい名前」を考えるのが面倒なだけだった模様。あっさり承認された。既成事実の成立は阻止した。

『……しかしケーマ君。君の故郷では指輪を贈るのってそういう意味があると聞いたことがあるんだけど、いまさら「いきなり」っていうのは違くないかい?』

「そんなことよりご褒美はまだですかね、まだ副賞でしょう?」

『おっとそうだった。それじゃあハクとロクコに2つずつ、だったね』

よし、話を逸らせた。

『じゃ、ハクには僕が作った魔剣を1本。それと……おっと、こっちはケーマ君たちには内緒の方が良いかな。あとでもう1つこっそり送っておくよ』

「はい、ご配慮痛み入りますわお父様。ありがたく、頂戴いたします」

……『父』が作った魔剣とか、世界滅ぼすレベルの魔剣とかじゃないか? それと、俺達には内緒のご褒美ってなんだ、凄い気になるぞ。

『ロクコには、……うん。神の寝具がひとつ、神の掛布団をあげよう。あ、これはあくまでロクコの物だからね、ケーマ君』

マジであったのか、神の寝具。しかもそのひとつ、ってことは他にもシリーズであるってことか?

なんてこった、これは集めるしかない。

『神の寝具は色々と注意事項があるから使う前にちゃんと説明書を読んでね。で、もう1つは、ケーマ君向けにだ。これをあげよう』

ごとん、と何か目の前にバスケットボール大の白い玉が落ちてきた。

「ダミーコア?」

『いや。番号もつけてない、中身は空っぽみたいなもんだけど、本物のコアだ。さ、壊していいよ』

……んん?

『君はダンジョンマスターでありながら勇者だろ。さぁ、コアを破壊したらどうなるのか見モノだね? あ、武器が要るかい?』

……あ、当然バレてますよね、そうですよねー。

どうすっか、と思っていたら目の前にさらに剣が落ちてきた。

特に装飾のない、握るところまで全て総金属製の剣。

そう、しいていえばその金属がオリハルコンだろうなってだけのシンプルな剣だ。

オリハルコンの大バーゲンやぁ。インゴット何個分だコレ。

『それはオマケだ。今日は気分が良いから大盤振る舞いだよ。魔剣とかじゃないから安心してね、剣の形にしただけのただのオリハルコンだから。好きに活用してくれればいいよ』

「鋳潰してワイヤーにするのもアリですか」

『アリだよ。好きに、活用してくれたまえ』

こりゃ【クリエイトゴーレム】で好きに加工できるのもバレてそうだな。

俺はオリハルコンの剣を持つ。……うん、見た目のわりに軽い。オリハルコンの特徴だな。ここまでお膳立てされたらさすがに目の前で白く光るダンジョンコアを壊さないわけにはいかない。

俺は、オリハルコンの剣を無名のダンジョンコアに突き立てた。

さくり、と、思っている以上に軽い手応え。なんという切れ味だ。これで「剣の形にしただけ」ってすごいな。

ダンジョンコアはただの一撃で真っ二つに切れる。ぶわり。と、生暖かい風が割れたコアから広がった気がした。

『さぁ、どうだい? スキルを入手できたかい』

「いや、特に変わった感じは――あ、」

ぞくり、と背筋に電気が走った。これは、アレだ。スキルスクロールを使ったときの感覚によく似ている。脳に直接情報が植え付けられていく。

あー、うん、きたわ。なんか覚えてる。インストール中なう、インストール中は他のアプリケーションを起動しないでくださいってな。

しばらく動きを止めて、終わるのを大人しく待つ。

そして一通りインストールが終わると、頭の中にどこかで聞いたような機械的な声が響く。

『【超変身Lv3】を習得しました』

……なんかいきなりLv3になったんですけど、なんすかコレ?