軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三次ダンジョンバトル:戦い(3)

そうか、蛇は壁を移動できたんだな。盲点だった。

あれだけ大きい上に壁も粘液にまみれたというのに、案外あっさり攻略されてしまった『ローション坂』。壁はそんなに粘液が溜まらず効果が薄かったのが原因だろう。

まぁ、スケルトンは狙い通りにズッコケてくれたのでよしとする。

「あらあら、良いんですか? せっかくのテンタクルスライム汁を洗い流してしまって」

「もう少し時間が稼げると思ったんですが、案外あっさり攻略されましたね。……まぁ、あと3部屋分貯めてるので上の階で使いますよ」

で、水門を開けて、リセットボタンを押すがごとくすべてを洗い流した。

鉄砲水アタックはまだまだ使えそうだな。トイレを流してる気分になるけど。

あ、ヌルヌル坂だけど、上の階ではガーゴイルが攻撃魔法でちょっかいを出すからさらに難易度が上がるぞ。手すりのない細い橋を渡る場所もある……

……あれ? これ案外蛇が強くね? 蛇、木の枝とか普通に渡るもんな。

まぁいい、蛇は蛇として、やりようはいくらでもある。

「しかし、魔王チームの黒い鎧2体目はまだ動かないのか?」

「ええ、まだ入り口部屋で蛇とゴーレムをバッタバッタと切り払ってるわ。不気味ね」

「ボスの骨魚はどうだ」

「サメで追っかけてるけど、案外すばしっこくてな。あとちょいかかりそうや!」

魔王チームのダンジョンはもうほとんど水没している。

通路に仕掛けてあった罠なんかも水で無効化、意味のない状態になったりしていてだいぶ 帝王チーム(おれたち) に有利に進んでいるが、ハクさん曰く「6番はこれで終わるはずがない」とのこと。

……それって逆に龍王チームならこのまま終わる可能性があるってことだよね?

あ、龍王チーム5階に到達? 早いね。ボスとか居ないの? そろそろ半魚人部隊も暇そうなんだけど。

「ご主人様。敵が2階に到達しました」

ニクの報告を聞いて、モニターを見る。一度流された蛇と骨が、改めて坂を上ったところだった。今度はあえて流さないで誘い込む。これはいつでも水攻めはできるが「そうスグにはできないよ」というポーズでもある。上の階に来たら連続でどんどん流してやろう、その方が巻き込める数が増えるからな。水は上から下まで流れるんだぜ。

「おし、それじゃちょっとDP使っていやがらせするか」

「あらケーマ、どんな嫌がらせする気?」

「見ればわかる」

俺は、DPを使ってモンスターを召喚した。

#Side魔王チーム

「おや……今度は水が流れてきませんか」

666番コアは拍子抜けしたという感じで言った。

【サモンスケルトン】で出したスケルトンに進軍を続けさせているが、中々に進みが遅い。

尚、龍王チームのほうは、先ほど黒鋼のリビングアーマーで3mくらいある皮膚の堅い巨大ナメクジを一刀両断してやったところだ。硬いと言っても表皮のみ、それも鉄程度の硬度だったので、マスター操るリビングアーマーには余裕で斬れる代物だった。伊達にDPをジャブジャブ掛けていない。

水――海水のせいで動きがやたら鈍かったが、あれはボスだったのかもしれない。

まぁ、こちらのザコは現地の判断と帝王チームに任せてしまおう。

マスターも、リビングアーマーを操っていて楽しそうだし、口を挟まない方が良いだろう。

――肝心なのは帝王チームのダンジョンだ。

666番コアは、次は何が出てくるのか、と楽しそうに口角をあげた。

坂を上り切った先に小部屋があった。分かれ道はない。このダンジョンは、ほとんど1本道になっていて探索の必要が薄い。それはやはり水を流すことに特化しているためだろう。荒ぶる水流から逃げられる場所は少ない方が良いのだから。

小部屋には、ガーゴイルが居た。火の玉や水の玉を飛ばし、スケルトンを攻撃してくる。

「へぇ、結構多いわ。スケルトンには荷が重いかしら――でも、数はこちらの方が上」

666番コアの操るスケルトンは、1体のガーゴイルを5体で囲み、対抗していた。骨の体に骨の武器だが、ガーゴイルをぶん殴ってマナを乱すことならできる。致命的な攻撃がなくともダメージを積み重ねれば、ガーゴイルは倒れるのだ。

だが。

ガーゴイルを囲んでいるスケルトンを、バイトスネークが攻撃してきた。

「おや? 耄碌(もうろく) でもしたかしら」

掛かる火の粉は振り落とす。バイトスネークを払い落とし、首も落とした。

と、ふと見るとスケルトンが命令していないのにバイトスネークに殴りかかっていた。

「……へぇ。面白いことを考えるじゃないの」

そいつは、マップで見た時に味方の青色がついていなかった。

この三つ巴のこのダンジョンバトルでは、敵は一律赤い印。つまりこの赤いスケルトンは、敵だ。

そして、龍王チームの蛇も赤い印。……つまり、あのスケルトンは龍王チームから見たら「魔王チームのスケルトン」に見えるはずだ。

もしかしたら先ほど噛みついてきたバイトスネークも帝王チームのモンスターだったのかもしれない。あるいは、混ぜたのはスケルトンだけで、単に騙された龍王チームの蛇が報復として襲い掛かってきたのか……そちらの方が可能性は高い。

敵を騙すのに 態々(わざわざ) ヒントを増やす必要はないからだ。

――この三つ巴のダンジョンバトルにおいて、「敵の敵は味方」という「甘い考え」をしていたことに、今更ながら666番コアは気が付いた。

「ククク、毒を混ぜてくるかッ! 良(い) い、実に 良(い) いッ! 乗ってあげましょう! まずは石像共を 殲滅(せんめつ) し、そのあとは蛇を―― 鏖(みなごろし) だ!」

最初からそうすべきだった。敵は、敵の敵でも敵なのだから。わざわざ無能と協力する必要など、ない。

ああ、なんて楽しい戦いなのかしら。と、666番コアは心の底から微笑んだ。

――6番コアは、それを黙って見ていた。

今回のダンジョンバトル、6番コアは一切の口出しをしていない。ダンジョンの作り方も、666番コアとそのマスターにすべてを任せていた。

6番コアは、666番コアのマスターを全く信用していなかった。

元々、人間牧場で養殖した剣士 型(タイプ) の人間、それが666番コアのマスターだ。本来、家畜には信用などしないモノだ。するとすれば、良いDPになってくれる期待くらいであった。

そもそもある日、ふらりと『潰す』予定で連れ帰ったはずの人間が、666番コアのマスターとなり、666番コアの『使用人』として仕えることになったのだ。以降、この人間は666番コアの機嫌を損ねることもなく――たまに叱ったり躾けたりはしているらしいが――今日まで生き延びている。

6番コアは、今回のダンジョンバトルを666番コアのマスターを試す――試金石として、使うことにした。

『使える』のであれば、それで良い。

『使えない』のであれば、何かしら考える必要がある。『指導』の名目のもとに、このマスターを処分することさえ検討している。

6番コアは、ただじっと戦況を見つめていた。