軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゴーレムの可能性

「えー、というわけで、ケーマがニクちゃんのおしっこを浴びて大喜びだった件についての会議を……」

「まてコラ。それは非常に悪意に満ちた解釈が含まれています、事故だったんです裁判長」

とりあえずダンジョンマスターとしてロクコにはおもらしさせてしまった件についてはしっかりと黙るように命令しておいた。

すぐさま静かになったので、今日もゴーレムを作ってみることにする。

「ニク、ちょっと土持ってきてくれ。昨日と同じくらいで」

「はい」

と、ニクがスコップを持ってマスタールームを出たところで思い出した。

そういえばクレイゴーレム(ミニ)はどのくらい仕事したんだろうか。と。

……うん、そっちを確認するのが先だったな。

「えーっと、どれどれっと……」

メニューからダンジョン内監視モニターを出し、掘り進めるように命令したゴーレム部屋を確認する。クレイゴーレム(ミニ)はガリガリと壁をひっかいていた。なんて健気なんだ、しかしちっとも掘り進めていないのはあれか、壁が岩肌でクレイゴーレムの手じゃ強度が足りなかったからか。

うかつだった。これはツルハシ出してやらないとダメだなぁ……

「うーん、やっぱりちゃんと指示しないとずーっとそのまま続けるのね」

「どれくらいの時間働いてくれるもんなんだ?」

「え? そりゃ、マナが切れるまででしょ? ゴーレムなんだし。 んで、ダンジョン内はマナが濃く溜まってるから止まることはないわよ?」

すごいな、維持費かからないとかマジすごい。

予想をはるかに上回る高性能に、俺は卒倒しかけた。もうこのままゴーレムにすべてを任せて寝てもいいんじゃないかな。

「いやいやケーマ、ゴーレムがまともに仕事できるわけないじゃない。穴掘れっていったのに穴も掘れてないしさ、見てよコレ」

「ん?」

ロクコがモニターを指さしたところを見る。うん、クレイゴーレム(ミニ)が岩壁を引っ掻いて……あれ?

よく見ると、違和感があった。クレイゴーレム(ミニ)は、ガリガリと、岩壁をひっかいていた。

だが、その手は摩耗し、指が破損した手を石にガリガリとこすりつけ、掘れないにもかかわらず愚直に、ただひたすらに掘り進めようとしているのだ。

「やばいな……」

「ね? 馬鹿なのよゴーレムは。言われたことしかできないし、それ以外はやれないのよ。だから、穴が掘れなくても穴を掘り続けようとするの」

うん、やばい。これはやばい。

ただし、ロクコの考えていることとは大きく違っている。

俺は顔がニヤつくのを抑えられなかった。

とりあえずクレイゴーレム(ミニ)には一旦戻ってきて待機してもらうことにしよう。手も直してやらないとな。

「た、ただいまもどりました……しょ、んしょ」

「おかえりニク。よく頑張ったな、偉いぞ……さぁて、実験といこうか」

ニクが土塊を持ってきたので、うけとり、頭を撫でて『浄化』をかけてやる。

簡単ですまないが、今はちょっと確かめたいことがあるのだ。

もし俺の思っている通りなら、クリエイトゴーレムは『大当たり』な魔法だ。

俺は、土塊をこねながら魔力を流し込んでいった。

*

「……で、こちらが完成品となりますってな?」

「なに、これ?」

俺は、手のひらサイズのゴーレムの腕「だけ」を3本、それぞれ長さを変えて作成した。

同じく手のひらサイズのタライのような入れ物の中心に軸を挿して、その軸から伸びる3本の 針型腕(・・・) を持つゴーレムだ。

「いやいやいや、これゴーレム? じゃないでしょ、え、何この形」

「『時計』だよ、『時計』」

そう、これは『ゴーレム時計』だ。3本の腕にはそれぞれ番号を割り振っており、1番腕が『60秒で1回転』、2番腕が『60分で1回転』、3番腕が『12時間で1回転』するようにそれぞれ命令したものだ。

つまりそれぞれ秒針・分針・時針となり、マナの続く限り動き続ける時計となる。

……時刻調整は面倒だけど。

ちなみに作ってる過程で「あれ、そもそも手も普通の形にする必要ないな」と気づいたため、ちゃんと針の形をした腕になっている。総土製の時計だが、一見してゴーレムだとは気づくまい。

「こ、こんな形でゴーレム……うわぁ、ケーマ、常識ってもんがないのね」

「異世界から召喚して何言ってるんだお前は。そもそも俺はこの世界の常識をしらないからな?」

それにしても、思いのほか簡単に改造ゴーレムを造ることができた。

しかも腕だけ、関節もほぼなし、かつあいまいな命令を処理する機能を排除したおかげか、魔力の消費もかなり少ない。クレイゴーレム(ミニ)の十分の一って感じか。

「で、これどうすんの? 別に、時間知りたかったらメニューで見れるわよね? こんなの使わなくても」

そういえばダンジョンマスターが使う『メニュー』には時間表示ありましたっけね……

「……ニクにあげよう。うん、これは実験のために作っただけだし。作れることが分かったんだから別に無駄じゃないし」

というわけで、ゴーレム時計はニクにプレゼントすることにした。

と、そこで気が付いたけど……そういえば、ニクはぼろきれのような服で裸足のままだった。なんてこった。

すぐさまDPをつかって『安物の服(ワンピース:8DP)』と『安物の靴(子供用:10DP)』、あと『ニーソックス(白:70DP)』を交換した。

そして着替えるニクを見て「はいてない」ことに気が付き、『女児下着(20DP)』を交換。あぶなかった。

少しDPがかかったけど、一度揃えてしまえば『浄化』がある。

下着も含めて一張羅で何の問題もないのはありがたい。

素材は悪くないんだ、そのうちDPに余裕ができれば可愛く飾り立てたいもんだ。ああ、ロクコもな。

……というか、なんだろう。ニーソが高めだったことに何か恣意的なものを感じる。

3.5ゴブリンじゃねーかどういうことだ。嗜好品だからか?

『ゴーレム時計』は『紐(5DP)』をつけて首にぶら下げてやった。

ニクにあげると言ったら、じっと『ゴーレム時計』を見ていた。

よほど気に入ったのか、と思ったが、どうもどういう代物かが分からないようだった。

そうか、奴隷だもんな、いろいろ知らない事が多そうだ……うん、明日からはニクに色々教えてやることにしよう。ロクコが。

いや、というかロクコはホントなにしてんの? 何もしてなくない? ちょっとそこかわれ。俺の代わりに仕事しろ。

……いややっぱいいや。ゴブリンパラダイスになって破算する未来しか見えなかったわ。

*

俺は戻ってきていたクレイゴーレム(ミニ)の手を直した。

せっかくなので石製でスコップ型の手にしてみた。やってみたら結構簡単にできた。十分魔力を流した石は粘土みたくぐにゃりと形を変えて、あっさりとスコップの形になる。

……クレイゴーレム(ミニ)改、Ver.スコップハンドだな!

感覚的に土のほうが石より少ない魔力で加工できるようだ。人間大のゴーレムも、最初につくるなら土ゴーレムにしてツルハシを持たせてやるのがいいだろう。

しばらくはこのクレイゴーレム(ミニ)を試作機として色々試して、うまくいったら人間大ゴーレムに反映、というのが良いかもしれない。そうなればいちいちクレイゴーレム(ミニ)って言うのも長くて面倒だ、すでに手が土ではないからクレイゴーレムなのかどうかもわからんし。

というわけで名前を付けてやることにした。試作ゴーレムということで、実験体的な名前がいいな。

「よし、お前はテストールだ。テストールがお前の名前だ。わかったか?」

クレイゴーレム(ミニ)改めテストールは、わかったと言わんばかりに頷いた。

そして、テストールには洞窟の外へ土をとってくるように命令しなおした。

バスケットボールくらいの大きさの土を掘ったら毎回戻ってくるだろう。寝て起きたら素材は十分溜まってるんじゃないかな。

……ダンジョン内だと動きは止まらないけど、ダンジョンの外だとどれくらい動けるんだろうな? そこも調べておく必要がありそうだ。