軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

金策の対策

聖女が手紙を書いていた。これはどうするべきか……

覗き見したところ、資金援助を求めつつ俺にダンジョンコアの破壊権を渡させるようにという内容のようだが……その分資金とDPを搾り取れることを考えると、別に悪くないと言えるかもしれない。

だが、やりすぎて聖王国から睨まれる事態になると、非常にマズイ。

ダンジョンぶっ壊主義の聖王国から睨まれてるダンジョンとか、寿命が縮む。物理的に。

というわけで、対策をしようとロクコを呼んだ。

「ってかケーマ、女の子が泊まってる部屋を覗き見とか、そういうのが趣味なの?」

かなり冷たい目で見られたんだが。心外な。敵情視察ってやつだよ?

うん、あれは敵だから。別にいい足のラインしてるなとか、部屋の中で靴を脱いで無防備にさらされてる足を観察したいとかいうわけじゃないから。床から見たりとかもしてないから。やろうと思えばニクやイチカの足を好き放題できるし、そんな飢えてないから。

「で、対策ってなにするのよ。お金持ってこさせないようにするってこと?」

「察しが良いなロクコ。そうだ。どうしたんだ一体……まさか偽物か?」

「いや、さすがに分かるでしょ……問題はどうやってお金を持ってこさせないようにするかよ。手紙を差し替えるとか? 配達を阻止するとかかしら?」

「大丈夫か、熱でもあるのか?!」

いつになく冴えてるロクコ。おでこに手を当てて熱が無いか確認する。

「ね、熱なんてあるわけないでしょ! あんまり馬鹿にしないでよね」

「少し熱いような……」

「気のせいよ!」

「そうか、ならいいんだ。急に頭が良くなったから心配したよ」

「心配してくれるのは嬉しいけど。ふふん、もっと褒めてくれていいのよ?」

よし、この調子に乗るところはロクコだな。

「で、どうするの? ダンジョンの外になるし、依頼を受けた冒険者の配達を妨害っていうのは難しいわね。そうだ、冒険者ギルドで預かった時点で回収しちゃえば」

「ギルドの責任問題に発展して色々面倒になりそうだな。差し替えるにしても手紙にはばっちり封蝋がしてあるし……」

手紙は封筒に入れられ、蝋燭で封をした後に聖女の印がぎゅっと押し付けられたものとなっていた。勝手に開ければ当然バレる。

「そんなの、ケーマの魔法でくっつけ直せばバレないんじゃない? なんなら封蝋の部分じゃないとこ切って開けて、あとでくっつけて直せばいいでしょ? ああ、でも封蝋に魔術的な効果があったら手が出せないかもしれないから、別の手も必要ね」

「おいロクコ」

「何? 惚れ直した?」

「お前…………………本物か?」

「本物よ?! 失礼ね、私だってこれくらい考えるわよ」

「わかった、それじゃあ確認するから足を見せろ」

「そこで確認できるの?! まぁ、足くらい別にいいけど……。ほ、ほら」

靴下を脱ぎ、足を晒すロクコ。……ふぅ。じっくり確認したけど本物だった。実はロクコの足には特徴的なホクロが、ということは一切ないけど本物と分かる。具体的にはメニューの機能からマップを見て確認した。

いや、偽物だったら困るんだけどさ。ガチャで知恵の実とか出して食べたの?

「疑って済まない、本物だった」

「だからそう言ってるじゃないの……で、ケーマの策は何かないの?」

「……おう、あるぞ。苦情を入れるんだ」

俺の策は至極真っ当で単純なものだった。

こちらも5通の手紙を書き、聖女と同じ宛先にむけて手紙を出す。

同じ宛先になるので依頼を受ける冒険者は両方の配達依頼を受けられてお得。当然一緒に受けるだろう。ギルドの方で一緒に受けてもらうようにしてもらってもいいな。

これなら聖女の手紙も妨害する必要もない。

もし聖女の手紙が1通も届かない事態になればこちらの苦情も届かないけど、それはそれで全く問題ない。

「へぇ、やっぱりケーマの作戦は違うわね」

「けど、ただの名も無い村のお飾り村長が書いた手紙を誰が読むか、っていう穴がある。そこで、ロクコ。お前だ」

「私?」

「ロクコはハクさんの妹だろ。……帝国の祖、ハク・ラヴェリオの妹ってわけだ」

「そっか、ハク姉様の威を借りるのね!」

特にここはハクさんのお気に入りの場所となっている。名前を使うくらいは問題ないだろう。……というか、ハクさんの妹って下手な聖女の名前より強力かもしれない。

というわけで、ロクコの名で、こちらも聖女と同じく5通の手紙を用意する。

内容は、『聖女が金に飽かして冬の備蓄を食い荒らして困っている、こちらは商売なので売ってはいるが、限度がある。国の方からそれとなく言っておけよな?』という嘆願書だ。やや強気に書いた。

仕上げに封蝋し、帝国の印を押し付けて完成だ。

実はコレ、ロクコがハクへの「おねだり」の手紙を書くときのためにとハクさんが置いていったモノだ。本来ならハクさんへの直通の手紙を書くために使うんだけど……ハクさんに直接口添えしてもらって借りを作るのはとても怖い。

もっとも、この帝国の印を使う時点で借りを作ってることにもなるけど、「この印はロクコ専用で好きに使っていい」とか言ってた気がするから良しとしよう。

……あとでロクコからお礼の手紙を送らせれば、きっとハクさんは喜んでくれるさ。きっと。うん。ここで弱みをみせたらとことん付け込まれそうだから一方的にお礼を言って終わりにしたい。

そう考えている間に書き終わったらしい。5枚の手紙が完成した。

「これで完璧ね。さすがに5通も同じ内容のものを書くのは疲れたけど」

「お疲れ。まぁ聖女の手紙への細工もできそうならするけどな。……手紙、聖女のと一緒に受けてもらえるように急いで出してくるわ」

「うん、お願いね」

聖女の手紙は、従者がギルドへもって行っていたようで、ちょうどギルドから出てきているところだった。俺もロクコの書いた手紙を持って急いでギルドへ向かう。

ギルドの受付嬢さんにさっくりと依頼を通し、5通分の依頼料……国外への配達と、他の依頼と一緒に受けてほしいという特殊オプションのためか少しだけ割高な料金、銀貨5枚を支払った。銀貨5枚とか、今更大した出費に感じないな。

その後、掲示板に依頼票が貼られた。ご丁寧に聖女の手紙の隣、というか少し上にかぶるくらいの位置だ。これならちゃんと併せて受けてくれることだろう。

そして、ギルドに保管されている聖女の手紙への細工は失敗した。……ギルドの金庫に仕舞われてるせいか、回収できなかったのだ。というかこれは他人の持ち物を勝手に回収とかができないように制限がかかっているんだろうか。……まぁ、人の物も回収できるとなると、戦闘中の戦士から靴やら鎧やらを回収するとかいう鬼畜戦法も出来ちゃうもんなぁ。

手紙を用意して正解だったと思うことにしよう。

「ふふふ、やっぱりケーマの案で正解だったわね!」

「お、おう」

手紙に細工する策は使えなかったけど、ロクコは何故か嬉しそうだった。

……しかし金欠か。聖女の資金はあとどれだけ持つのやら。

そろそろ搾り取るために動いた方が良いかもしれないな。