軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖女(6)

ガーゴイルを作る研究をするのに助手がガーゴイルな件。

どちらかというと助手というより貴重なサンプルっぽいけど。

「マスターの神経が分かりませんー……」

俺は悪くない、ロクコの運が悪い……いや、運が良いだけだ。

ちなみにガーゴイルは背中に翼のある悪魔の石像だった。飛べるのか? と思ったけどただの飾りのようだ。邪魔じゃないか?

ガーゴイルも、喋ったりはしない。そしてゴーレムと同様に命令を淡々とこなすタイプのようだ。……関節も普通に石像のようにくっ付いてるんだけど、なぜか曲がる。見ていて不思議でしかたない。触るとカチカチで普通に石なんだけど、【クリエイトゴーレム】使ってる時の素材みたいな感じなのかなぁ。

「まぁ、実物があったほうが研究が捗るだろ。とりあえず実験室をダンジョン内に設置しておいた、存分に魔道具の研究もしてくれ」

「ありがとうございますーっ」

白衣を着たネルネが元気に答えた。なんだかんだで白衣も着てくれたし、喜んでくれているようだ。

今回はDPが余っていたため、移動用のダミーコアと併せて部屋も作ってしまった。

無駄に出費してしまったが、まぁダミーコア5000DP、部屋2つで400DPの合わせて5400DP。リンや聖女の収入ブーストがある今、なんだかんだで2、3日分のDPだ。というかそもそも宿屋の収入でいえば聖女の泊まるスィートルーム1泊分の金貨25枚がある。これを潰してDPにするだけで2万5000DPになる。

聖女もなんだかんだでもう半月は居るし、すさまじい稼ぎになってる。いまやウチの金庫は金貨で溢れそうなほど。DPに潰してしまってもいいかもしれない。

……聖女、ギャンブルはともかくそろそろ宿代で破産するんじゃないかなぁ。そしたら聖王国だっけ? 本国に帰ってくれるといいんだけど。

場所はコア部屋のすぐ上に設置。……縦に並べたけど同じフロア扱いだ。もしこの部屋に侵入者が入るとしたら、コアルームで天井を破壊するという突拍子の無い行動に出る必要がある。ノーヒントでそんなことするやつは居ないだろう。

「研究は俺も手伝うぞ。【クリエイトゴーレム】もあるからな」

「おー、ご主人様の【クリエイトゴーレム】なら溝を既に彫ってある状態のゴーレムとか作れそうですねー。そしたらあとは魔石を溶かすだけですー」

「……あそこまで難しい図形を再現するのは骨が折れそうだ」

あと、溶かす魔石自体にもなんか刻まないといけないんだろ? 結構手間がかかりそうだなぁ……

とりあえず、水の魔道具を作って練習だな、うん。魔石も大量に用意しとこう。DPカタログから魔石に交換する際のオプションで、属性付きの魔石も普通に選べるし。今更だけど本当に便利だよなぁDP。

*

その日も聖女はダンジョンで黒い狼に食われて帰還した。

しかし気分は別に悪くない。なぜなら、この宿のスイートルームがあまりにも快適で、むしろずっと宿に居たいとさえ思えるほどだからだ。

さらに宿にある遊戯室、ここではネズミレースという素晴らしい遊びをしている。

他にもご飯が信じられない程美味しかったり、温泉が付いていたり、素晴らしすぎる宿だった。

丁度開催していたネズミレースで少し勝って、聖女は上機嫌だった。その次に賭けたレースではその分の儲けもすべてスッてしまったが。

どちらにしても聖女にしてはお小遣い程度の 端金(はしたがね) だ。負けた所で気にするほどじゃなかった。

「ふぅ、それにしても素晴らしい寝具ですね。この寝具、私の家にも欲しいです」

ルームサービスで頼んだオレンジジュースを飲みつつ、ごろんと布団に寝転ぶ。

これだけで銀貨1枚らしい。

パヴェーラで多く手に入るオレンジ。しかしこの味は果汁だけではなく貴重品である砂糖が惜しみも無く入っている。それならこの価格も納得というものだ。

尚、この料金は聖女の従者があらかじめ払っている金貨から引いている。

「……うーん、しかし村長さんは強情ですね、これほどまでに私を歓待してくれているというのに……ああ、料金はセントが払ってるんでしたっけ?」

とりあえず、歓待に応えるためにも脅威となっているあの黒い狼モンスターだけはどうにかしなければならないと聖女は考えていた。お金を払っているとはいえ、村の冬越えのための貴重な備蓄を頂いているのだから。

現状、手も足も出ていないように思えるかもしれないが、聖女は着々と黒い狼の動きを覚えていた。

3日で最初の1撃は躱せるようになった。今は攻撃を3回躱すことができる。あとはさらに時間を稼いで聖女の持つ特殊な魔法スキルが発動できれば、勝ちだ。

あれは恐らく闇属性のモンスター。聖女にとって、相性的にはとても有利な相手だった。

ただ、圧倒的な基本性能差によって翻弄されている。あとはなんとか時間を稼げれば。

扉がノックされて、従者が声をかけてきた。

「アルカ様、少々よろしいでしょうか」

「ん……どうぞ」

「失礼します」

ガチャ、とドアを開けて入ってくるセント。

……そういえばこの従者はここに来てから何をして過ごしているのだろうか。はっ、もしかしてずっとネズミレースを……?! と、そこまで考えて、聖女はその思考を捨てた。この真面目な従者がそんなことをするはずはない、と。

「それで、何の用かしら、セント?」

「残りの資金が心許ないです」

「やはりネズミレースに……?!」

「? なんのことですか?」

「なんでもありません。しかし、資金が足りないというのであれば、本国に追加の資金を頼まなければなりませんね。手紙を書いておきましょう、すぐに送ってくれるはずです」

「はい、よろしくお願いします」

手紙については、冒険者ギルドに配達の依頼を出せば数日で届けてくれることだろう。

もっとも、依頼が達成されて届くかどうかは分からない。確実性を考えれば複数件の依頼を出さねばならないだろう。

「さて、それでは文面を……ああそうだ。それに村長さんの歓待についてと、ダンジョンコアの破壊権は未だに貰えていないことを書いておきましょう。上から話を通してもらえれば、ダンジョンコアの破壊権を帝国側からこちらへ渡すように村長さんに言ってくれるかもしれません」

「なるほど、本当ならダンジョンコアの破壊権を渡したい村長殿が、帝国の決まりによって渡すことはできないと言っている訳ですからね。それで良いでしょう」

聖女は、ケーマの接客と発言をそのように受け取っていて、従者にそう話していた。

「ええ、とても真面目で良い人なのですが、融通が利かないのだけは欠点と言ったところですね。真面目で信頼がおけるのは良い事ですが」

「臣下としては良い人間ですね。正式にスカウトし、聖王国に来ていただければ……」

「そのことも書いておきましょう。……5通書けばどれかは届くでしょうね」

同じ内容の手紙を5通書き、従者に渡す。

しかし、結構な資金を用意していたはずだがそれが尽きそうとは。本当に何に消えたのやら……手紙も書いたし、あとは何とかなるだろう。

「追加の資金が届くまでは、少しくらい節約しましょうか。……道中で倒して放置してるアイアンゴーレムを持ち帰ってくるのもいいかもしれないですね。食事代の足しにはなるんじゃない?」

「はい、お手を煩わせてしまうことになり、大変申し訳ありません」

「いいのよ、私とセントの仲でしょう」

もっとも、聖女が宿泊する先をスイートから一般の部屋にするだけで冬を越せるレベルに資金が持つのだが、従者の方からそういう提案は無かった。死に戻りという辛い仕事をしている聖女に、少しでも心の平安をと願う従者にはそのような提案、出せるはずもないし、出す気もなかった。

従者が手紙を持って出ていくのを見届けた所で、聖女は再び柔らかなベッドに身を預け、休む。

身体が沈み込み、優しく包み込まれる感覚に、「やはりこのベッドは欲しいわね……」とぽつりと呟き、眠りに落ちた。