軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖女(4)

翌日、聖女はリンに2度目のぱっくんちょをされた。

『こいつも、ケーマと、同じように、食べ放題だな』

「好きなだけ食っていいぞー」

……そういえば、聖女って聖属性ついてないのかな。リン、美味しく食べてたけど。実はとんだ腹黒ビッチで聖ならざる存在だったとか? ……ピリッとしてたって言ってたし、少しは聖の付く食べ物なのかもしれない。

で、今後は聖女が死ぬ度に1000DPガチャを回してみることにした。

そう、1000DPガチャだ。

俺がここに呼ばれた原因でもあるが、全然使ってない、ガチャだ。

……俺は割と堅実なタイプなので、運任せっていうのは結構苦手なんだよな。今までは収入的にも余裕が無かったし、無駄遣いになる可能性が高いガチャに手を出せなかったんだよな。

だが今は聖女の宿泊費で毎日金貨25枚入ってくる。さらに聖女本人のDPやらリンのDPやらで最近は大儲けである。ノンストップお笑い状態だ。そりゃ毎日1000DP使う余裕だってできるさ。

つーか金持ちだな聖女……そのくせに融通できるのが金貨300枚追加だけとか、逆にケチくさい。お前の滞在費12日分だぞ。もうそろそろ越えてないか?

「で、これが本日早速1000DPガチャを回して出てきたものなんだが」

THE・ハズレの代名詞こと、タワシだった。……5DPで交換できるよな? コレ。というか、モンスター以外も出るんだね、知らなかった。

「……ハズレね。ケーマってクジ運悪いのねー。こういうのはこう、もっと、アレよ。愛とか気合いで? ぐぐぐっとやるのよ、ぐぐぐっと」

「何を言いたいかはさっぱりわからん」

ロクコも2回しか引いたことないくせに、得意げにガチャのコツを伝授しようとしてくれた。……コイツ、その2回で異世界人と不死鳥を引き当てるという豪運を見せつけてくれてるわけだけど。

うん、明日はロクコにひいてもらおう。

コンコン、と部屋の扉をノックする音が聞こえた。イチカだ。

「ご主人様ー。聖女様がお目見えやでー。どないする?」

また来たのか聖女。……はぁ、相手しなきゃダメかなぁ面倒臭い。おそらく依頼対象を見つけたという報告だろう。昨日すぐ来なかったのは、念のため確認してからってところか。

「悪いなロクコ、聖女様だ。マスタールームに行っててくれ」

「何よケーマ。今は私と一緒にいるのに、私なんかより聖女の方が大事っていうの? もぅ……」

拗ねるような発言だが、顔はニコニコしてるロクコ。指輪を渡してからだろうか、最近こういう絡みが増えてきた。どこで覚えてるんだろうな。

「お前の方が大事に決まってんだろ。お前を聖女に会わせて、万一にでもロクコが襲われたら俺は死ぬぞ。物理的に」

「……分かってるわよ、ふふ♪」

言ってて「あれ? なんか口説いてるように聞こえる」と思った。ハクさんの殺気を感じるぞ……?

俺の発言はダンジョンマスターとダンジョンコアの関係に基づく、純然たる事実ってやつなんだが。

上機嫌でマスタールームに去るロクコとを見送り、応接室へ向かう。

待つことなくすぐにイチカが聖女アルカを連れてきた。相変わらず背景に徹する気満々のウォズマ副村長も一緒だ。

「さて、今日は何の用ですかね?」

「はい。依頼対象の魔物を発見しました」

そう言って俺の向かいのソファーに座る聖女はにっこりと笑顔を浮かべる。

「それで、依頼を受けてくださるのですね?」

「それでもかまいませんが、条件があります。……ダンジョンコアの破壊権を私に」

「話になりませんなぁ。その話は皇帝の許可を得てからにしてください」

「そんな。村長さんはただ頷いてくれればいいのです。頷いてくれるだけで王国の2等地と金貨300枚ですよ? たったそれだけで、簡単なものでしょう?」

「お断りします」

ただの欲ボケ村長ならあっさり頷くんだろうけど、俺にとっては「殺す許可をくれればお金あげるよ」ってことだもんなぁ、間違っても許可は出せない。

……今思いついたけど、魔法的な制約がある可能性だってある。俺が許可を出したとたんなぜかダンジョンコアが砕ける即死魔法とかも無いとは言い切れないな、なんたって魔法のある世界なんだし。

うん、一切気が抜けない。寝ボケることすらできない。はよ帰れ! といいたい。

「しかし、あれは私でないと退治できないでしょう」

「ほう? なぜそう言い切れます?」

「事実だからです。あれはそういう邪悪な、闇の存在ですから」

なんか聖女様が中二病の言いそうなこと言い始めたぞ。

でもそれが事実だとして、その割には何もできずに食われてるよな。あっさり過ぎて戦いにもなってない程だが……強がりやハッタリなのか、はたまた隠し玉があるのか。

「しかし、退治できるまでに多少時間がかかるので……それまでに決断してくださいね」

「だからお断りしますって。普通に依頼受けないなら帰ってくれていいんですよ?」

「いや、だから、あの魔物は私でなければ退治できないですって」

「いえいえ」

「いやいやいや」

その後はまた光神教の布教を聞き流し、ちまちまとダンジョンコアの破壊権の要求を突っぱねる作業だった。

結局依頼は受けてくれないし。

しかも晩御飯の時間までもつれ込んでしまったのだが、厚かましくも「お腹すきましたねぇ(チラッチラッ」と繰り返してきやがった。ウチの宿の飯のうまさにすっかりハマってるのか、なんなのこの聖女。帰って一人で食って来いよ。分かったよ、食ってっていいけど食ったら帰れよ。

「このブブヅケという食べ物は美味しいですね。いやぁ、ごちそうになってしまって。村長様は実に交渉上手です、より良い条件を提示できるよう王国と交渉してみましょう。あ、おかわりください」

「いえ、別料金で宿代に上乗せして請求しますからご心配なく。あとおかわりはないです」

当然、異世界で「ぶぶ漬けでも食え」=「さっさと帰れ」という言い回しは通用しないので、普通に一緒にご飯を食べる作業になってしまった。勇者ワタルに出しても逆に嬉々として食いついてきそうだし、これ異世界じゃ使い物にならないな。