軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖女(2)

「聖王国の2等地、ですか。相手も随分と奮発してきましたね」

ロクコの代わりに、と一応同席していた副村長がそう言った。

うん、ていうか俺お飾りなんだからさ、もっと前に出てくれる? 完全に存在感消してたよね?

この副村長、酒場のマスターをやっているだけあって会話を聞きつつ背景と同化する 術(すべ) に長けていやがる。

「2等地、ねぇ。それはウチの宿とどっちが快適なのかな」

「……さぁ? 私には分かりかねますね。ただ、個人的にはこちらの宿にご飯食べ放題で3泊できる方が嬉しいかと」

永住権より3泊か。つまりまったく比べ物にならないらしい。

まぁ、住む権利だけ貰ってもそのあとの維持費がかかるもんな、常識的に考えて。……それとも支援金を着服すれば数年は遊んで暮らせるだろうっていう感じなのかな?

「で、どうしますか村長?」

「どうするも何も、聖女様に言ったとおりだ。 ……しかし、聖女様が普通にダンジョンに潜ってダンジョンを攻略するってことはあり得るな……」

「聖女様はBランク以上の冒険者で貴族ですから、あまり勝手にはしないはずですが……」

「……村長の許可だけで国際問題を回避できるようになるのか?」

「良いと言ったのはそっち側だ、という言い訳に使えればいいのでは? あるいは自分の納得のためかもしれません」

自分ルールってやつか。確かに俺も、俺のモノに手を出した奴と食べ物を粗末にした奴、そして睡眠を邪魔した奴はダンジョンでうっかり殺してもいいと決めてるからな。

「なんにせよ、許可は出せないな」

「そうですね、ダンジョンの利益は今後ずっと続くものです。一時の金に換えるのは愚策としか言えないでしょう」

副村長もしっかりそのあたり分かっているようだ。実に頼もしい副村長だ。

きっと俺が不在になってもそのあたりうまくやってくれるだろうな。……名前なんだっけ? ウォズマとかいってたか? うん、今度からちゃんと名前で呼ぼうかな?

「とりあえず聖女様は宿に泊まるんだろうし、適当に歓待しとくか」

そして、聖女様はスィートルームに泊まり、Bランク定食を食べてお風呂を堪能した。

*

翌日。再び聖女様がやってきた。昨日帰った時とは一転して、中々の笑顔だ。

「歓待いただきありがとうございます。ふふふ、あなたは世渡り上手なようですね……」

盛大に勘違いしてやがる。宿屋は商売だから、お金さえ払えばサービスするさ。お金の分だけな。

料金は先払いさせたはずだが、何をどう勘違いしたのやら。

「私の従者も、とても寛げたと言っていました」

「そうですか、それは何よりです」

従者居たのか。そりゃ聖女といえど女の一人旅はアレだもんな……あ、もしかしてお金払ったの従者? そして一緒に泊まってなかったってことは、従者はスイートじゃなくて一般部屋か。というか従者なのにこの話し合いに立ち会わなくていいのか。

「いえいえ、宿は仕事ですから。料金を払っていただければ相応のサービスを提供するだけです」

「まさかこのような田舎で、それもこの時期にこれほどまでの歓迎……ふふ、わかりました。聖王国2等地への斡旋、それに金貨50枚を追加で出しましょう」

スィートの宿代(1泊金貨25枚、食事別)2泊分じゃないか。はした金が増えた感……いやいや、日本円でいうと5千万円相当か。結構な大金だよなー……

ってかスィートの宿代やっぱ高いよ、ハクさんの顔を潰す気はないから値下げはしないけど。

「では、ダンジョンコアの破壊権を渡して下さいますね?」

「いえ、それはできません。どうしてもというなら皇帝の許可を得てからまた来てください」

「…………」

何言ってるんだコイツ、と言いたげな目で俺を見る聖女様。むしろそれは俺が言いたい。

だが、これできっぱり俺から許可は出せないということは伝わったはずだ。さっさとリンを退治するか帰るか皇帝の許可をとるかしてくれ、こっちからの報酬は金貨5枚のはずだから既に大赤字だろお前。

「……わかりました、とりあえずダンジョンに行ってみましょう」

「おお、依頼を受けてくださいますか」

「まずは冒険者としてダンジョンへ入って、それから考えます」

聖女様は席を立ち、外へ出て行った。今日はチラチラ見てくることなくすんなり帰ってくれた。

あ、副村長もありがとうね。もう帰っていいよ。でもさ、会話に参加してくれてもよかったんだよ?

村長邸の自部屋に戻ると、ロクコがやってきた。

「今日も来てたあの聖女ってのは……なかなかに厄介そうね」

「見てたか、ロクコ」

「ええ。いくら私でも、アレはなかなかに面倒くさいってことくらい分かるわ!」

で、その後。聖女様はギルドの方に顔を出し、1人でダンジョンに入っていった。

……あれ、従者は?

そう思って首をひねっていたところ、1階のトラップで聖女が死亡した。

えっ?

慌ててモニターを開いて見ると、扉から剣が飛び出るタイプの罠で見事に串刺しになっていた。

……な、なに。ここまで期待させておいてこんなアッサリ?!

と、DPを見ると、思っていたよりは増えていなかった。

そして、聖女の体が光の粒子となって消える。

「……あれ? ロクコ、なにかした?」

「してないわ。ケーマこそ、なにかした?」

当然していない。

その時、村エリアで突然『1日あたりのDPが225DP』という存在が現れた。

しかもそこは宿の一室、急いでモニターを開く。客のプライベート? そんなの関係ないね。

室内には、オフトンに横たわる緑髪の聖女様と、神官服に身を包んだ青年が居た。

『アルカ様! 大丈夫ですか?!』

『……うーん……はっ!? セント。ここは……』

『宿の一室でございます。低料金の部屋で申し訳ありません』

『いえ、いいのよ。新参ダンジョンの低階層と油断しててさっそく1回やられてしまったわ、少し休養が必要ね』

それは、まぎれもなく聖女本人だった。少し弱っているようだが……

「これは……どういう事だと思う? ケーマ」

「どうもこうも……こいつらが言ってる通りだろう。『1回やられた』ってことはつまり、死んでも復活するってこと、じゃないか? 実際復活してるみたいだし」

「なにそれ。フェニみたいなやつね、この聖女っての」

そりゃ、ヤバいな。もしフェニみたく何度でも無制限に復活できるとしたら『死に覚え』ができる。

……無限復活の初見殺しキラー、か。

ダンジョンにしてみれば最悪の敵、あるいは最高の餌だ。同じトラップは何度も通じないから、その都度工夫しないといけないのは……実に面倒くさいな。