軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖女

リンでいろいろな実験を開始した数日後。

酒場のマスターこと副村長が俺を訪ねてきた。

「ケーマさん、討伐依頼を受けた冒険者がきたので、村長として一言挨拶してもらってもいいですか?」

「……めんどい。副村長がかわりに挨拶しておいてくれ。俺はお飾りだからなー」

そういうと、副村長は残念そうに首を横に振った。

「それがそうもいかないのです。相手はその、聖王国の聖女様でして……きちんとした対応をしなければ色々と問題が発生してより面倒なことになります。それに、何やら話したい事もあるということでして……」

「……なるほど、聖王国っていうのが何かは知らないけど、実に面倒そうだ。で、聖王国ってなんだ?」

副村長は「ご存じ、ないのですか?」と前置きを置いてから教えてくれた。

聖王国は、いわゆる宗教国家だ。そして、帝国の隣国らしい。

聖女はその聖王国の象徴の1つで、強力な聖の力を持った女性だとか。

こっそりマップを見てみると、1日当たりのDPが250という存在が冒険者ギルドに居た。

……なるほど、こいつが聖女か。 って、なんかこの下り、勇者の時にもやった気がする。

「というわけなのです。……まさか聖女様が来るとは……この村が根本からひっくり返されるかもしれませんね」

「うん? どういうことだ」

「聖王国の宗教は、光神教です。……光神教は、ダンジョンの存在を徹底的に否定しているんですよ。悪魔が作った物だと……もし聖女様にダンジョンを攻略されたら、この村の前提が崩れることになりますからね」

やべぇな、そりゃ。

ロクコなんかも会わせられそうにないし、どうしたもんか。

「このダンジョンは帝都の財産でもあるだろ、国際問題になるんじゃないか?」

「なりますが、聖女様ともなればそれを無視して信仰を貫いてもおかしくないと思いませんか?」

……狂信者ってやつか。ありえる。宗教ってのは怖いからな。

しかし、DPが250ってことは、リンとは圧倒的な差があるな。属性的にあからさまに弱点をついてるから案外互角になるかもしれないけど……共倒れが理想だな。

「……わかった。とりあえず俺が挨拶すればいいんだな?」

「はい。お願いします村長」

そんなわけで、村長として俺が話をすることになった。 まったく、お飾りの村長というのをなんだと思ってるんだ、働かせるんじゃないよまったく。挨拶とかはお飾りの仕事だとでも言うつもりなんだろうか。

もう寝ていたい。

*

「はじめまして聖女様。ケーマと申します」

「はじめまして村長様。アルカ・ル・ニケ・ハイドライドです。気楽にアルカとお呼びください」

俺とやたら長い名前の聖女は、村長邸の応接間で対面していた。

緑色でふんわりとウェーブのかかった長髪を流しつつ、にこりと微笑むアルカ。

見た目は少しきらびやかなシスターってところか。緑髪とかこの世界でも初めて見た気がするぞ。

「いえいえ、聖女様を名前で呼ぶなど畏れ多い。それに、この度は我々の依頼を受けてくださるという事で……」

「ええ。早速ですが、報酬の交渉をしてもよろしいですか?」

おう、いきなりだな。案外俗物なのか、それとも冒険者として手慣れているのか。

聖女のジャブに警戒しつつ、俺は「もちろん」と答えた。

「では、報酬なのですが……脅威のモンスターを討伐した暁には、ダンジョンコアの破壊権を頂きたいのです。他は一切要りません」

はいアウトー。

早速だけど受け入れられないぞコレは。

「それは無理ですね。この村の者に死ねと言っているようなものです。村長として、到底受け入れることはできません」

「このままモンスターに好きにさせるのも、同じことではないですか? 結果的にいつモンスターに殺されるか、というだけです。……もちろん、村からの撤退については聖王国から支援を致します」

ダンジョンコアを破壊するためならタダ働きどころかお金払うという事か。だが断る、俺が死ぬし。

「まだ名前すら無い村です、撤退するなら今しかないでしょう?」

「……」

そういえばまだ名前なかったわ。ゴゾーに考えとけって言ったのに。

宣言通り、ゴゾーロップラブラブ村、略してゴロラブ村(仮)にしてやろうか。

俺がそんなことを考えていると、聖女はそれを悩んでいるととったのか、畳みかけてきた。

「さあ、今なら当然金銭的な補償は致しますし、希望者は聖王国へ移住していただいても良いです。あなたは村長ですし、特別に2等地を用意しましょうか?」

「2等地ですか」

1等地じゃないとか地味にケチくさいな。まぁ、無名村の村長相手にはその程度でも破格か。

「ええ、本来金貨300枚ないと住むことができない場所です。聖女の私が斡旋するからこそそこに行けるのです。感謝してくださいね」

「へーそうなんですかー」

よく分からんが、どうでもいいな。というかこの聖女、わりと嫌いなタイプだ。

「では話もまとまったところで……」

「あ、ダメですね。通常の依頼料で受けて頂けないというのであれば申し訳ありませんが、今回は縁が無かったという事で……」

「なッ?! あ、あなた、聖王国の2等地ですよ?! それ以上を望むというのですか!」

「いや、別にいらないんで」

「い、いらないッ?! 聖王国の2等地を、いらない、ですって?!」

俺がそう言い切ると、聖女は目を見開いて驚いていた。心の底から信じられない、というものを見た顔だ。

つっても、命には代えられないしなぁ。

「し、失礼。ふむ……そうですか、いらないんですか。ふむ……」

深呼吸して、落ち着いた聖女は何かを考えているようだった。

「まぁ、通常の依頼料で受けて頂けないのであればこちらは何とも……ダンジョンコアの破壊権は絶対に渡せませんねぇ」

「……分かりました。それでは失礼しますね」

そういうと、聖女は席を立つ。そしてそのまま部屋から出て行こうとする。

……途中、こちらを窺うようにちらちら視線が流れていたので、絶対に止めてやらないことにした。

俺が呼び止めて「やっぱり、その条件で!」とか言うのを待ってるんだろうか。本人的に駆け引きのつもりなのかしらんが、あからさますぎる。

「……(ちらっ」

「どうかしました? 忘れ物でも?」

「いえ……」

結局聖女が応接間を出るまでにさらに3分、部屋の外で追いかけて出てくるのを待っているのが7分、そこからさらに村長邸から出るまでに10分を要した。

そこはもうさっさと帰ってくれ、と叫びたくなった。