軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ロクコの様子、あとスピーカーゴーレム。

あ、そういえば村長になったのロクコに言ってなかったな。

俺はロクコの部屋へ向かった。ノックをして中に入る。

「うふふふふ」

ロクコは、部屋の中央で左手の薬指につけた赤い指輪を眺めてニヤニヤしていた。最近わりと見慣れた光景である。……ハクさんの足音を幻聴してしまい、思わず振り返って土下座しそうになった。今日もイメージトレーニングは完璧だ、命だけは勘弁してください。

数秒眺めていたが気付かれなかったので声をかけることにした。

「おーいロクコ?」

「はッ?! ちょ、入るときはノックくらいしなさいよ! 返事も確認してから入りなさいよ! 乙女の部屋よ?!」

しゅばっと左手を後ろに隠して取り繕うロクコ。ノックはしたが返事は確認してなかったな、そういえば。

「いや悪い悪い、ちょっと言う事があってな」

「え、何かしら。…………まって、心の準備が」

「うん、ただの業務連絡だぞ? 何考えてるかは知らんけど。見当もつかないけど。あ、村長になったから」

赤い顔してるロクコにさっさと用件を告げて部屋に帰ることにした。

どうしてこうなったんだろう。

俺はロクコに対して別段フラグを立てた覚えはない。

せいぜいダンジョンから山賊を追い出して、ダンジョンを拡げて、宿を作ったくらいだ。

あとDPでメロンパンを出したくらいか?

……ダンジョンコアにはダンジョンマスターに勝手に惚れる習性とかがあるんだろうか……

「まってケーマ。村長って?」

おっと、呼び止められた。

「ああ、最近ここにも人が増えたろ? だから村としてちゃんとしようってことになって、俺が村長になったって感じだな」

「んー、つまりニンゲンの中でもケーマが一番偉いってわけね。ま、ここは私のダンジョンなんだし当然ね」

「……俺としては、できれば面倒事は人に押し付けておきたいところだが……よく考えたら村長って面倒事を押し付ける方の立場だからな」

勇者にすら面倒事を押し付けるのが村長というものだ。

面倒事が舞い込んでくる立場でもあるけど、ダンジョンマスターとしてここから離れられない以上、村の問題=俺の問題という式は変わらない。しめやかに諦めよう。

「ん? でも村長になったってことは、宿どうするの?」

「別に今までと変わらない……と言いたいところだけど、住む場所が問題だな。……村長が家無しで宿に間借りっていうのも色々おかしいもんなぁ」

「あぁ、じゃあ私もケーマが家建てたらそっちに移るわね」

「……え? ロクコはこの宿がちゃんと家だろ?」

「え?」

というか、基本的に家が建っていても、村の敷地がすべてダンジョンである以上、家と言っても部屋みたいなものだ。実際ダンジョンの機能でひょい、と行けるのだから。

「言われてみればそうね」

「ああ、でも引っ越しも面倒臭いから宿屋に併設するか……俺も宿へ毎日歩かなきゃいけないのは面倒だし」

「それはいいわね。寮みたくするの?」

「そういう感じだな」

対外的には宿のオーナーに許可をもらって併設したという形だな。村長邸兼宿屋になるわけだ。ナリキンに依頼したことにしてさっさと建設しちまうか。

幹部連中からはたぶん文句は言ってこないだろうけど、もし言ってきたら村長権限ってことにしてゴリ押そう。飾りでも村長だからな。

「あ、村長邸部分にも私の部屋作ってよ。ケーマならチョチョイのチョイでしょ?」

「……まぁうん、いいけどさ」

村長邸、少し大きめに作るか。まだ敷地は余ってるしな。

*

さて、魔法の練習についてひとつ思いついたことがある。こちらでもゴーレムのアシストを使えないかと考えたのだ。

想定している用途は蓄音機。

本当はICレコーダーとかをDPで出せれば良かったんだけど、どうにもコンピュータが入っているような機械類はDPで出せないみたいだ。トランジスタか、トランジスタがあかんのか。

……尚、コンピュータではない蓄音機はカタログにある。が、100万DPとかすごく高い。だから自作することにした。

蓄音機の仕組みはそんな難しい物でもない。録音ではスピーカーで振動を受けてレコードに音を溝として刻み、再生では刻んだ溝に合わせてスピーカーが振動するだけだ。

ではゴーレムではどうするか。

簡単だ、スピーカー自体をゴーレムにして、ゴーレムに振動を覚えさせて再現させればいい。

ならスピーカーは?

こちらはもっと簡単だ。紙や皮を膜にして、非常に細かく振動させれば音が出る。糸電話だって立派なスピーカーだ。つまり12個5DPの紙コップをゴーレムにすればそれだけで十分スピーカー、そして蓄音機になってくれるはずだ。

「よし、実験してみるか」

俺は紙コップに【クリエイトゴーレム】を使う。あっさりとゴーレムにした後、糸電話のようにコップを持つ。

「次の振動を記録しろ。……ん、ゴホン。テストテスト。本日は晴天なり。……記録停止。記録した振動を再現しろ」

『ん、ゴホン。テストテスト。本日は晴天なり』

紙コップから小さく俺の声がした。成功だ。ゴホン、まで記録されていた。

振動を大きくして再現しろ、としたところ、ちゃんと元の声と同じくらいの大きさになった。これも成功だ。

……じゃ、次はどこまで覚えられるかだな。

「今の振動を1番として記録。次の振動を記録しろ――」

で、結果として紙コップ製スピーカーゴーレムは合計20秒まで記録することができた。それ以上を記録すると古い方から忘れるということが分かった。……通常の命令を覚えるより、よほど難しい命令っぽいな。

20秒もあれば魔法の呪文は記録できそうだな。

いちいち記録しろ、とか言うのも面倒なので、録音ボタンと再生ボタンを書いて、ここに触っている間は録音、ここを触ったら再生、という風にしたら録音限界が18秒になった。

……命令の記憶容量とかやっぱりあるんだなぁ。今まで「ここを掘れ」とかいう簡単な命令しかしてなかったから知らなかった。これも良い実験結果だな。

で、次は魔法の呪文を記録してみた。とりあえずは水の呪文だ。

「水よ、小さな玉となれ。【ウォータ】」

水の塊がポンっと空中に現れたので、録音を止める。……床にブチまけるわけにもいかず、とりあえず手に持っていた紙コップゴーレムに受け止め、クイッと飲み込んだ。

ぷはー、と一息ついたところで、再生する。

『水よ、小さな玉となれ。【ウォータ】』

……あ、濡れたままだったけど、ちゃんと再生されたな。

紙コップゴーレムはスピーカーにもコップにも使える。便利な奴だなぁ。

「どうせならこれで魔法を使えるようになってくれないかなぁ」

とりあえず、この【ウォータ】の呪文を覚えさせた紙コップゴーレムについてはイチカに渡しておこう。ネルネはもう覚えてたはずだし。

自分で復習するなら、呪文を記録したものと合わせて録音再生ができるのも渡すべきだろう。……あ、いいこと思いついた。電話の受話器みたくして録音と再生を分けよう。その方が使いやすそうだ。

……ネルネの覚えてない魔法、なんだっけか?