軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

部下たちの成長

ダンジョンマスター兼村長になってしまった。

しかしだからと言ってダンジョンの便利機能を村のために使うなんてことは当然しない。

ダンジョンマスターってことは秘密だし、下手に融通してダンジョンマスターの存在がバレるのはマズイ。使うのは自分のため、宿のためだけに留めている。

俺は自分がゆっくり寝れるスペースが確保できればそれでいいのだ。

で、ダンジョンだ。実はそろそろまた改築が必要な気がする。

原因は勇者ワタルが持ち帰った魔剣19本。

この話が世に広まったせいか、Cランク冒険者のお客様が増えて、ダンジョンの攻略が進みつつあるのだ。

具体的には、迷宮エリアの探索者が増えて、迷宮で壁を動かしにくくなった。

なので結果的に謎解きエリアに挑む冒険者が増えてきていた。

尚、謎解きに失敗しても1Fにお帰りいただくだけだが、油断してると足首をくじくので長期滞在か担架お帰りコースとなる。……打ち所が悪かったり重装備だと死ぬこともある。

捕獲して牢屋へ、というのは基本的にはしていない。前やったあれは例外だった、うん。

「そういえばレイ、結構前に捕らえたあいつら、どうなった?」

「まだ生きてますよ。なんたって私、攻撃力0ですから」

いい笑顔で答える銀髪の吸血鬼、レイ。従業員が生き生きとしているのは良いことだ。

なんで攻撃力0だとまだ生きてる事になるのか分からんが、それ以上深くは聞かないでおいた。きっと知らない方が幸せな事なんだろうな。うっかり夢に見たくないしこのままレイに任せておこう。

せっかくなので部下たちの様子を見て回ることにした。

キヌエさんとネルネが食堂で雑談していた。今は既に昼過ぎで食事時ではないため、客はいなかった。今は軽食も酒場で食べられるから、こっちはだいぶ楽になったもんだ。

キヌエさんは俺が口頭であやふやに伝えた調理法を身に着け、日本の料理もある程度再現できるようになっている。

醤油とか味噌とかの調味料はDPで出した物を使っている。砂糖はテンサイダイコンから作ったものも使ったり、塩はパヴェーラの商人が置いていったのを使ったりだ。

「キヌエさん、調子はどうだ」

「マスター。ええ、良い調子です。ネルネから魔法について聞いていました」

「魔法について? 何か覚えたい魔法スキルでもあるのか?」

「掃除や調理に使える魔法が無いかと……『浄化』以外で」

掃除で『浄化』を使うのはプライドに反しているが、風の魔法でゴミを吹き飛ばしたりするのはいいらしい。

「日本の料理を覚えたし、ご褒美に下級のスクロールくらいなら支給するぞ」

「まぁ、ありがとうございます。ではもう少しネルネと力を入れて相談してみますね」

うふふ、と微笑むキヌエさん。大人の女って感じだ。

一方で魔法使い見習いのネルネは女の子って感じなんだよな。

「ネルネはどうだ? 魔法スキル覚えたか?」

「えー。……あのー、マスター。ニク先輩の覚えてるスキル全部覚えたら私に魔法教えてくれるーって言ってましたけどー……やっぱりひとつだけ覚えられそうもありませんー!」

「【収納】か」

「【収納】ですー!」

そりゃ、他は全部下級魔法なのに【収納】だけ中級魔法だもんな。っていうか他の魔法スキルは覚えられそうなのか。すごいな。

【収納】こそまだだが、ちゃんと魔法スキルを覚えることができたんだ。今度気が向いたら魔法を教えてやろう。……いややっぱめんどい。だって、この世界でスクロールを使わずに魔法を覚えるって、「呪文の発音を完璧に覚えて唱えられるようになる」ことが条件で、スキルとして習得するまで「完璧な発音で呪文を唱え続ける」とかいう、気の遠くなる作業ゲーなんだもん。

魔法の師匠はそれをつきっきりで教えて、聞いて、正してやらないといけない。根気強く、丁寧に。

一度スキルとして習得すればあとは多少間違えても魔力消費が増えるだけで、そもそも基本的に意識して唱えれば間違えないのだ。

「私にもスクロールくださいよー!」

「よし、それじゃあネルネ。別の課題をくれてやる。これをクリアできたら魔法を教えてやろう」

「なんですかー?」

「ゴーレムに魔法使わせる方法を考えろ。……使えると思ったら実験には付き合ってやる」

「よーし、いいましたねー? 絶対ですよー?」

ふっふっふ、絶対ですからねー! と、ネルネは笑った。

ゴーレムが魔法使えるようになったら、ゴーレムブレードも魔法剣とかできるようになるしダンジョンの幅も大幅に広がるからな。ふっふっふ、せいぜい頑張って案を出してくれ。

*

スキルで思い出したけど、イチカとニクは剣術の攻撃スキル【スラッシュ】も覚えていた。ゴーレムアシストによる反復練習修行の成果だ。

イチカがおぼえられたのは【スラッシュ】だけだったが、ニクは【スラッシュ】【ダブルスラッシュ】【アクセルターン】に【アサシンエッジ】とかいうのまで覚えたらしい。とんでもないな。しかもこれでネルネにも魔法教えてたんだよな……

獣人の身体能力の高さと、子供ならではの学習能力の高さによるものだろう。

2人の様子を見に行くと、宿の庭で木剣をつかって打ち合いの訓練をしていた。

カコンカコン、と木のぶつかる音が響いていたが、途中で【スラッシュ】が混じる。

その他、スキルもどきも混じる。ゴーレムのアシストで強引に体を動かしているのだ。

ニクにコツを聞いてみた。

「うけいれるかたちで。しゅばっとして、でもゴーレムだけじゃなくて、えっと、じ、自分でばばばってするのが大事、です。あ、【ダブルスラッシュ】はすばやいの、大事で、【アサシンエッジ】はのどを切ります。で、ぱーってなります」

身振り手振りを交えて説明してくれたのだが、残念ながら全く分からなかった。

しかし元々剣を使っていたはずのイチカが【スラッシュ】しか覚えられなかったのは、才能や適性が無かったからなんだろうか……まぁいいか、検証しようとしたわけじゃなくてDPの節約になるかを調べたかっただけだし。

俺は反復練習したくなかったのでスキルスクロールを使って覚えたよ。『スラッシュのスキルスクロール』は下級剣術で、500DPだった。

「なぁご主人様? ウチ、それ覚えるのに2ヶ月かかったんやけど」

「わかった、ご褒美に3日間カレーパン食い放題にしてやる」

「……ここはドーンと1週間がええなっ!」

許可してやった。

尚、総菜パンつめあわせで5DP=6個だから、600個食えば元が取れる計算になる。

……1日85個か。胸焼けするってレベルじゃねぇな。元が取れるといいなぁ。

罰で1カ月間食事レベルをこの世界基準にしてやってからかなり食事へ比重が傾いた気がするな。

「ニクもご褒美いるか? 4つ覚えたから、イチカの4倍無茶聞いてやれるぞ」

「……撫でてください」

「ん? おう」

俺はニクの頭を撫でる。黒髪のしっとりした手触りが心地よい。ニクは、尻尾をぱたぱたさせていた。

「で、ご褒美は何が良い? 撫でるだけじゃもったいないだろ」

「……ん、これがいいんです」

可愛いこと言ってくれるじゃないか。俺は両手で頭をわしゃわしゃ撫でてやった。髪はくしゃくしゃになったが、手でくしくし整えつつも尻尾が嬉しそうにしてたので、これでいいのだろう。

クロイヌ、と苗字を付けてからはだいぶ犬っぽく甘えてくるようになったなー。命名効果でてるわー。

「な、なんならご主人様の好きなように、体中撫でまわして、も……?」

……命名効果、出てるよね?