作品タイトル不明
真昼の梟
「流星クレア」のパーティーは翌日早朝から行動を開始した。案内人を先頭に進んだところは——ちょうど、山間にある盆地だ。風がないのでキャンプをするには良さそうだが、すり鉢状になっているそこは見通しが悪いという側面もある。
「ここが地質学者とポジが出会ったという場所です」
「へぇ……」
竈の形に積まれた石があり、その近くにはごろりとした大きめの石がいくつか転がっていた。
確かに、かつてここで休息した人間がいた——そんなふうな痕跡が残っている。
クレアを中心にパーティーメンバーが集まってくる。
「地図を見ようぜ」
「今いる位置がここだから……高いところに上がって周囲を観察するか」
「ちょっと休憩するか?」
「まだ行けるだろ」
「モンスターは全然いないっぽいが。そういや今日は遭遇しなかったな」
「この周囲に水場はあるのかな。案内人さんよ、水を汲めるような場所は——案内人さん?」
彼らは気がついた。
ここまでの山路を供に過ごした案内人が、彼らから距離を取って——20メートルほど離れたところに立っていることに。
そうして、ひっそりと微笑んでいた。
「なんだ? あんなところに——クレアちゃん、あぶねえ!」
ひとりがクレアに覆い被さったそこへ、空を切り裂く音に続いて衝撃音。
「ガアアッ!」
男の背中に矢が突き刺さった。
「!?」
「敵か!」
「どこだ!?」
「構えろ、盾!」
彼らはクレアと、彼女を守って倒れた男を中心にフォーメーションを組む。
いつの間にかこの盆地を取り囲む斜面の上に、ずらりと並ぶ人影。
ヒト種族だけでなく獣人もドワーフもいるが、多くは男だった。
その数は50にも上るだろう。
「……てめえら、何者だ」
巨大なカイトシールドを構える冒険者が唸るようにたずねると、後ろ足でゆっくりと斜面を登っていく案内人が答えた。
「答えてどうするの? あなたたち、ここで殺されるのに」
「俺らがランクBだとわかってて仕掛けてんだよなあ?」
「知っているわ。いい装備品を持っているってこともよーく知っているのよ」
これで彼らの狙いが知れた、と「流星クレア」のメンバーは考えた。
装備品だ。
確かに、彼らの所持金も大きいがそのほとんどを冒険者ギルドに預けている。
だが所持金以上に高額なのが装備品だ。
シールドのように消耗品は頑丈一辺倒のものだが、武器類はすさまじく高い。
魔力や魔法を纏わせて戦う彼らは特殊な加工の武器を使用しており、一振り売るだけで家が建つだろう。
「……クレアちゃん、治療は」
「やってますぅ。でも、この毒は……厄介ですぅ……」
鏃には毒が塗られているようだ。
背中の矢は抜かれているが、クレアをかばった男は脂汗を浮かべて息が荒い。
クレアが回復魔法使いとして一流なのはここにいるメンバーの誰しもが疑っていなかったが、複雑な毒が入り込んでくると治療は困難になる——時間が掛かる。
だからだろう。
敵はぐるりとここを取り囲んで、全員が全員、弓矢を持っている。
ひとり1本当たったら終わりだ。
「……真っ昼間からの襲撃。セコいやり口。てめえらが『真昼の梟』だな」
カイトシールドを構えた男がたずねると、
「正解」
斜面を上がりきったところで案内人は言った。
「だけどね、『セコいやり口』っていうのは訂正させてもらおうかしら。私たちは確実に仕留められる方法を検討して、確実に実行しているだけ……」
「てっきりアンタはゴードンの人間だと信じ込まされたぜ」
すると案内人は声を殺して笑った。
「……そりゃあねえ。そのくらいできなくてどうするのよ。私たちがやってるのは 格上狩り(・・・・) なんだから」
「狩り、かよ……!」
「そうよ。森の賢者、梟のように、知恵を巡らせてあなたたちを狩るのよ——さあ、時間稼ぎはそこまでにしましょ」
「チッ」
クレアが回復を終えるまで時間を稼ぎたかったが、それは気づかれていた。
まだ、毒がどのようなものかわかっていないらしい。
ひょっとしたらクレアには未知の毒かも知れない——そうなると、ここではなく街に運んで時間を掛けて治さなければいけない。
「全員構えて」
案内人が司令塔も兼ねているのか、彼女が腕を挙げると弓矢が一斉に構えられた。
「撃って」
腕を振り下ろす——その瞬間、前後に展開していたカイトシールドを持つ男ふたりが同時に叫んだ。
『ゴオオオオオオオオオオッ』
『ゴオオオオオオオオオオッ』
声帯に魔力を纏わせて放つ威圧だ。
物理的な衝撃波まで発せられるそれは、「真昼の梟」のうち7割ほどの射手にぶつかり、のけぞらせ、彼らの手元を狂わせる。
「叩き落とせ!」
仲間たちはその威圧をすでに知っており、この場で使われるだろうことも予期していたので対応が早かった。しゃがんで耳を塞いでいた彼らは一斉に立ち上がり、威圧に怯まなかった左右から射られる矢に立ち向かう。
小盾で弾き、剣で斬る。
「こちら無傷!」
「こっちもだ!」
1射目を切り抜けた彼らだったが、
「……い、け……」
威圧を放った男ふたりはそれで声帯を破壊しており、しゃべることもままならない。道具袋からポーションの入った小ビンを取り出してすぐに口に含むが、全部飲みきる前に次の矢が放たれる。
クレアを守るため、カイトシールドを構えたふたりは防御に集中する。
「散開!」
残りの6人は攻撃に転じていた。
不意を突かれたとは言ってもランクBの冒険者だ。ひとりひとりが相当の実力者であり、斜面をぐんぐん登っていく。
「——なによあのデカイ声! あんなの聞いてなかったよ!」
案内人は苛立って叫ぶ。
最初にクレアを。
次に半数、少なくとも2、3人は毒を食らわせるつもりだったのに、そのどちらも本来の目的を達していない。
「うおおおおッ!」
目の前から飛んでくる矢を斬り落とす、人間離れした芸当をやってのける「流星クレア」のメンバーたち。
苛立った案内人は、両腕を広げ、次に「×」を作るように交差させた。
「俺たちを相手にしたのは、間違いだったな。梟さんよ——」
足場の悪い斜面ですらすさまじい勢いで上ってきた男は、案内人までの距離がすでに5メートルほどとなっていた。
だが——次の一歩はなんの感触もなかった。
そこにあったのは落とし穴だ。
ずぼりと踏み込んだ足のせいでバランスが崩れるが、なんとか片手をついてこらえる。
その正面に飛来した3本の矢。
「クッ!」
それすらも、剣が斬り落とした。
これほどの腕を持っているのがランクB冒険者なのか——と案内人は背筋が寒くなった。
だが、その驚異は案内人の「想定内」だった。
「——っぐ!?」
落とし穴から抜け出そうとした彼の太ももに刺さった矢は——背後から射られていた。
すり鉢状の、反対側から放った矢だ。
一歩間違えれば仲間に刺さるであろう矢で、実際に、彼から離れたところに着弾したり、「真昼の梟」のメンバーに刺さったりしている。
同士討ちを覚悟の上で放った矢——先ほどの「×」は、互いに、互いを撃てという合図だったのだ。
いくら「流星クレア」のメンバーであっても前後から撃たれれば当たるだろうと。
「……こっちは人数で勝ってるんだよ。ちなみに言うと解毒薬もある」
案内人が薄く笑っている——彼女を見上げる視界がぼやける。
「クソッ……タレ……」
「今すぐ降参して装備を差し出すなら、アンタたちが大事にしているクレアには傷を付けないと約束するけど?」
同じ手法で、仲間の3人が矢に当たり、「真昼の梟」のメンバーも5人ほどが被弾している。
非常に強い毒だ。
解毒薬を使っていても「真昼の梟」のメンバーは泡を噴いて起き上がらない。
身体能力がずば抜けている「流星クレア」のメンバーのほうがなんとか意識を保っているくらいで——気を抜けばもう倒れそうではあったが。
「へえ……やっぱりいい武器持ってるじゃないの」
案内人は、目の前に置かれた剣や盾、鎧といった装備品、それに道具袋を見てほくそ笑む。
「流星クレア」は降参し、武器を差し出したのだ。
今はクレアを中心に、軽装になった男5人が憤懣やるかたなしという面持ちで案内人をにらみつけている。
先ほど渡された解毒薬は効いているが、単に毒の進行を遅らせるだけのもののようで、苦しげな息を吐いて座り込んだ男たちが4人。クレアは彼らに回復魔法をかけ続けている。
「気を強く持ってくださいねぇ……必ず治りますからねぇ……」
泣き出しそうなクレアの声に、歯噛みする5人。
一方の案内人は装備品を運ばせると、「流星クレア」たちから距離を置いた——周囲には、30人ほどが弓矢を構えたままだ。
「おい、ちょっと待て。……まさかこのまま放り出すつもりじゃないだろうな? 食料がなければ下山できん」
「食料だって?」
案内人はケタケタと笑い出した。
「ここで全員死ぬんだから、必要ないでしょ」
「てめえ! 最初から約束を守る気がなかったな!?」
「約束なんて……信じていたの? 最初から私に騙されていたのに? 冒険者のランクBって頭が悪くてもなれるのねぇ」
案内人が言うと、「真昼の梟」のメンバーたちが大笑いした。
「まったくだ! 攻撃してるのに、こっちが譲歩する必要なんざねえのによ」
「装備品に傷をつけたくないから言っただけだっての」
「はぁ〜あ、これでランクBを名乗れるんだから、俺らだったらとっくにランクAだな」
最初から最後まで騙されていたのだ。
敵は用意周到に策を巡らせ、この場所に自分たちがやってくるのを待っていた。
それは梟ではなくて蜘蛛のようだ。
(ランクBだからと……自惚れていた……!!)
「流星クレア」のメンバーは歯ぎしりする。
彼らにとって最大の弱点はクレアだ。絶望的な状況になって、クレアだけは助けると言われたら心が揺らぐ。
さっきのタイミングで、全滅覚悟で突っ込めば半分は殺せていただろう——同じ全滅でも、そっちのほうがずっとよかった。
「それじゃ、さっさと終わらせるよ。全員構え——」
その瞬間、いちばん体格の大きい——カイトシールドを手渡してしまった大男が叫んだ。
「グレアぢゃんをッ……!」
まだ喉は治りきっていない。
だがそれだけで伝わった。
ここまで長く冒険を続けてきた仲間は、それに応えた。
大男がクレアに覆い被さると、立っていた4人は、
「うおおおおおッ!!」
走り出す。
たとえ素手でも、たとえ毒矢が自分を貫いても、たとえ死ぬのだとしても。
ここで戦いを挑まなければ冒険者じゃない。
最後の矜持が、彼らを突き動かす——。
「――『常世に清浄なる光もて、昏く細き道を照らしたまえ』」
そのとき、彼らは声を聞いた。
それはすり鉢状になっているてっぺん。
人がいれば気づきそうなものだというのに、さらには魔力を練る——魔法を使おうというのならばなおさらなのに、ここにいる誰しもが気づかなかった。
さらには、その人物は案内人たちの背後にいたのだ。
「 贖罪の聖炎(アトーンメント・フレイム) 」
フードを目深にかぶり、顔には銀色の仮面。
声は、少女のものだった。
放たれたのは、真昼には見づらい真白い炎。
だが強烈な明かりが——まるで太陽がもうひとつ現れたかのような光に、全員が驚き、そちらを向く。
炎は「真昼の梟」たちを呑み込んだ。
「あ、あぢいいいいいいいい!?」
「ぐぎゃあああああッ!!」
「あぢ、あぢ、あぢいいいい——え」
炎に飲まれた彼らは気がつく。
「お、おい、これ熱くねえ! 熱くねえぞ!」
「なんだこりゃ!?」
「バカ言ってるんじゃない! 早く魔法使いを撃ち殺せ!」
案内人の言葉で我に返る「真昼の梟」の面々は、そちらに弓矢を向けるが、
「オラァッ!」
「ぶぼっ」
突っ込んできた「流星クレア」のメンバーが殴りかかり、数人が吹っ飛ぶ。
「落ち着けっての! 人数はこっちが圧倒的に多い——」
案内人はそう言いかけ、今度は別の方向から声を聞いた。
「——『天にまします我らが神よ、その叡智において審判を下したまえ。右手より放たれる光は真偽を見抜き、聖なる者には祝福を、邪なる者には裁きを与えん』——」
ぎくりとした。
それはクレアたちの背後から現れた——同じようにフードを目深にかぶった銀の仮面。
先ほどの少女よりも背は高い。
だが、その魔力量は——青白く、清浄さを感じさせる光が燐光のように立ち上る。
フードの少女が超高温で燃え上がっているようだ。
「あ、あ、あ……」
案内人は、天から降りてくる金色の輪をいくつも見た。
巨大な輪だ。
それらは「真昼の梟」たちのいるところに下りてくる——。
「『 光輪天裁(エンジェルジャッジメント) 』」
仮面の少女が差し伸べた手から青い光が放たれる。
それらはそこにいた者、全員の胸に1本ずつ吸い込まれていく。
回避するとかそういうものではなかった。
気づけば光が放たれていた——と思うと、瞬間、案内人の視界が弾けた。
「あァッ——」
声なき声を上げたのは、全身を走る激痛——激痛、なんて言葉で言うのはたやすい。
炎で焼かれるよりもつらい苦痛が突き抜け、案内人は気を失った。
* *
ヒカルがその異変に気づいたのは山をこだまする咆吼を聞いたからだ。
魔力を込めた威圧の声は、相当な広範囲に渡ったものであり、聞く人が聞けば異変がわかるという——ある種「SOS」の役割も持っていたのだった。
向かうべきかどうか迷ったが、進行方向としては間違っていなかったこと、「魔力探知」で遠方から確認すれば状況の把握もできるだろうと思い、念のため向かった。
冒険者がワイバーンと戦っているのかな……くらいに思っていたのに、実際には全然違った。
「まさか『流星クレア』と『真昼の梟』が激突していたとは……よし、これで全部だ」
面倒ごとを避けるために 白銀の貌(シルバーフェイス) となったヒカルは、装備品を持って逃げようとしていた「真昼の梟」を制圧し、武器を運んできた。
重い鎧とカイトシールドは置いてきたので、場所を聞いた大男が大急ぎで取りに行った。
「治療は?」
「は、はい。もう終わりました……」
「すごいですぅ! お姉様、いったいどんな魔法をお使いになったんですかぁ!? それにさっきの、さっきの、悪漢たちを倒した魔法……! すごすぎてぇ、クレア、お姉様のファンになってしまいましたぁ!!」
目をハートマークにしたクレアがポーラの服をつかんで離さない。
毒に冒されていた「流星クレア」のメンバーは、ポーラが早速回復魔法で治した。いちいち細かい毒の作用などを調べるのも面倒なので、「回復魔法」8と「魔力量」12という力業で、解毒の魔法でなんとかした。
毒の状態がわからないと解毒の魔法の効率が悪くなるだけで、尋常ならざる魔力を込めればなんとかなるのである。
「く、クソッ……俺たちのクレアちゃんがポッと出の魔法使いに……!」
「だけど女子同士……アリだな」
「男にとられるよりは、そりゃいいけどよぉ!」
パーティーメンバーの男たちがなんだか嘆いている。
「あー…… おれ(・・) たちはもう行くけど、『真昼の梟』は任せていいか?」
人助けができたことはよかったが、ここで時間を無駄にしたいわけでもない。
「い、いいえっ! なにかお礼をさせてくださいませぇ。きっとこちらのお姉様はとても貴い御方でいらっしゃるのでしょう? あなたのような従者を連れるようなお立場で、正体も隠して旅をなさってぇ……」
「従者……」
ヒカルは自分を指差したが、ラヴィアが横からぽんとその肩を叩いた。
「従者かぁ……まあ、別にいいんだけど。正直、先を急いでいるし、盗賊まがいの連中はどうでもいい。殺すなり、衛兵に引き渡すなり好きにしてくれよ」
「……恥を忍んで頼む。もうしばらくいっしょにいてくれないか」
すると別の男がヒカルに頭を下げた。
「俺たちが態勢を立て直すのにもう少し時間が掛かる。その間に、フレイムゴートならまだしもワイバーンが来たらマズい」
「ああ……それもそうか。わかった、いいよ。ただ、なれ合いはナシだ。周囲の警戒はしておくからできる限り早く立て直してくれ」
「恩に着る」
心底感謝したように、男はもう一度頭を下げた。
それから1時間、ヒカルは彼らの近くにいた。
吹く風は冷たく、乾燥していたがそのくらいのもので、照りつける陽射しのせいで逆に暑いくらいだった。
その間、「真昼の梟」の連中は起きもしなかった。犯した罪に応じたショックを与えるという「光輪天裁」を受けた彼らは、死んでいないまでも完全に意識を失っている。相当な罪を重ねてきたのだろうか。
このまま獣に食われても自業自得だから、今は安全を優先して「流星クレア」は下山するという決定になっている。ゴードンで、なにがあったかを報告すると。
休憩時間中、ずっとポーラにべったりだったクレアは——彼女は自分より回復魔法を使える人間がタイプだったらしい——最後の最後まで「お供させてくださいませぇ〜〜〜」と泣いていたが、メンバーに引っぺがされるようにして一時、下山することになった。
一時、というのは、彼らはもう一度「ポジ捜索」にチャレンジするらしい。
「何度でも挑戦するのが冒険者だ。それに俺たちはジュエルハンターだからな」
と、カイトシールドの大男が言った。彼の喉もすでにポーラによって治療済みだ。
(……いろんな冒険者がいるな)
ヒカルは横目で、ロープによってふん縛られて転がされたままの「真昼の梟」たちを見て思う。
他人から奪う者、これは論外だ。
冒険者は挑戦すること——それが正しい。
宝石や金属を求める者。
モンスターと戦う者。
ダンジョンの最奥を目指す者。
希少な薬草を探す者。
「わたしたち、どんな冒険者なのかしら」
すり鉢状の現場を離れ、ラヴィアが言った。
「僕も同じことを思っていた……。『流星クレア』はジュエルハンターとして特化しているらしいからね。僕らには目標とかがないからなぁ……」
「わたしはもっと本を読みたい!」
「じゃあ、ラヴィアはブックハンターだね」
「むう。そんなのいないもの」
「いえいえ、ラヴィアちゃん。いますよ、ブックハンター」
「えっ!? そうなの!?」
「はい。稀覯本専門の冒険者で、かなりの目利きでもあるとか……ラヴィアちゃんにはぴったりかもしれませんね」
「おぉ……」
意外な知識を手に入れ、ラヴィアの頬が紅潮している。
喜んでる喜んでる、とわかってヒカルとポーラが微笑んだ。
(僕もなにか探すかなぁ……さしずめ今は)
夢探し、自分探し、と言ったところか。
「モラトリアムっぽくてやだなぁ……」
「? なに、ヒカル。モラトリアムって」
「あ、いや、なんでもない——元の道に戻った」
地図上では、本来進むべき道にようやく戻ってきたことがわかる。
「さ、あとちょっとだ。今日中に着くはずだから、がんばろう」
「おー」
「はいっ」
奇しくも、「真昼の梟」の案内人が連れてきた場所はポジの集落跡地にかなり近かった。
だが「流星クレア」が再登山を始める前にはすべてのケリがついているだろう——ヒカルはそう確信していた。