軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

302、決着

『なっ! なんということでしょう! ぶ、武舞台が……ありません! ムリーマ山脈の岩石から作られた武舞台がものの見事に瓦礫の山となってしまいました!』

『ほぉ……ベレンガリア選手とキアラ選手は無傷か……しかしあの場所は……』

『場外! 場外です!キアラ・ベレンガリア組は場外に平然と立っています! 一方アレクサンドリーネ・アイリーン組は……』

『アイリーン選手は場外だが……アレクサンドリーネ選手がいるあそこは?』

『場内です! アレクサンドリーネ選手! 倒れ伏しながらも! 場内に留まっております! 従いまして! 勝者は! アレクサンドリーネ・アイリーン組です!』

厳密には武舞台が壊れたせいで境界が分からなくなってんだよな。アレクだけが武舞台の材料である石の上にいて、他の三人は土の上なんだよな。それでもアレクは勝ったんだ。でも、ここまでだな。絶対決勝には出場させないぞ。速やかに医務室に連れてってやる! もう起きるな……『快眠』

後で恨まれたって知るもんか。このまま全快するまで治療してもらうんだからな!

『この分じゃあ決勝戦はどうするんだぃ?』

『さすがに無理だな。第一カースがアレクサンドリーネ選手の出場を許すとも思えん。そうなるとだ……』

『おや? ダミアン様? 何か名案がございますか? 決勝戦が見れないのは観客の満足度に多大な影響が……』

『三位決定戦だ! どうだお前ら! 見てえだろうが! 魔王カース対氷獄の魔導士キアラの対戦だぜ!?』

観客席からは怒号のような歓声があがる。前回の子供武闘会でも王国一武闘会でも三位決定戦は行われていない。双方とも傷つきすぎて試合ができる状態ではなかったのだから。

しかし今回は違う。どちらの敗者も無傷なのだ。準決勝では勝者が傷だらけで敗者が無傷という前代未聞の事態なのだ。

そんな二人の対戦が楽しみでないはずがなく、観客達はダミアンの提案に狂喜乱舞していた。

『そんなにあの二人の対戦が見てーかぁ! よっしゃあ! それなら少し待っててくれやぁ! その間にラグナの氷裸像を彫刻してやるからよぉ!』

またもや歓声が起こる。

『モデルは必要かぃ?』

『いや、いらねー。それでも寸分違わず彫刻してみせるぜ?』

私は医務室で治癒魔法使いさんと話している。

「失格でいいんだねー?」

「構いません。きっちり治してください。ポーションは足りてますか?」

「問題ないよー。じゃあ出て行ってねー」

医務室から出ると入れ違いでバラデュール君も来た。アイリーンちゃんを抱きかかえている。

「アレク達は棄権でいいよね?」

「ああ、それがいい。よくあの自爆で生きてたものだよな。アイリーンの槍も見つかんないしな。」

「二人とも最後の力を振り絞ったみたいだしね。すごい威力だったもんね。」

本当に自爆技だよな。ヒヤリとしたもんだ。アレクもアイリーンちゃんも勝ちに対する執念がすごいよな。私にはない……これは良いのか悪いのか……

先ほどまで座っていたベンチに戻ってみると、武舞台上でダミアンが氷を彫刻してやがる。場つなぎか?

今回は武舞台が八つもあるから一つぐらい壊れたって試合に支障はない。むしろ決勝戦が不戦勝ってのは運営としては困るのか?

「カースくーん。アレックスちゃんはどうだった? 大丈夫?」

「うん、問題ないよ。ベレンガリアさんまで無傷ってのは不思議なもんだよね。」

「キアラちゃんが自動防御内に入れてくれなかったら危なかったわよ! あの二人めちゃくちゃね!」

「カー兄ー! 三位けってーせんやるんだってー! 私達と対戦だよー!!

なん……だと……?

「ちょ、ベレンガリアさん、マジで!?」

「本当よ。決勝戦ができないじゃない? だから運営側としてもやらないと困るみたいよ?」

それでダミアンも見世物に彫刻やってんのね。裸婦像かな?

それより、私はどうしよう……

キアラの今後のために厳しくやるべきか……それとも優しくレッスンでもするような対戦をするべきか……

まさか負けないよな? さすがの私もキアラを相手にするからにはそれなりに全力でやらないとヤバい。

「キアラー、お兄ちゃんと試合したいかー?」

「したいしたーい! だってカー兄さいきん全然遊んでくれないもん!」

なっ!

キアラにとってはこれも遊びなのか!

ううむ……アッカーマン先生の言葉を思い出したぞ……食う寝る以外は全て遊びだと……

キアラはその歳でもうあの境地にまで達したと言うのか!?

よし、決めた。遊びなら遊びらしくやってやる!

「ちなみにベレンガリアさんも出る?」

「絶対いやよ。ドラゴン同士の戦いに巻き込まれるようなものじゃない。一対一でやってよね。」

だよな。その辺りはダミアンに言えば何とでもなるだろう。ダミアンだってもう寒い思いはしたくないだろうしな。

「よーし、じゃあキアラ。一対一でやろうか。負けても泣くなよー?」

「わーい! 本気出すからねー!」

「いいけど観客に被害が出ないようにな。頼むぞ?」

「うん! カー兄も本気で来てね!」

それはどうかな? しかし、絶対負けん! 兄の威厳を示すんだ!

おっ? 観客がえらく盛り上がってるぞ? ダミアンの彫刻が終わったのかな。

あん? あれは……ラグナか?

氷のラグナ像か。モデルがラグナってことを差し引いても凄い出来栄えだな。なおかつ氷の透明さが幻想的な雰囲気を醸し出している。やっぱダミアンはセンスいいな。ラグナのくせに手を後ろで組んで上目遣いのポーズとは、まるでウブな少女のように感じるではないか。ダミアンからはそう見えてるとでも言うのか?

そんなことよりキアラと対戦か……

速攻で決めてやる。