軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

301、アレクサンドリーネの賭け

アレクは魔法を使い続けている。キアラはそれを一歩も動かず、自動防御で防ぐのみだ。

アイリーンちゃんはベレンガリアさんとの一騎打ちが終わらない。まさかベレンガリアさんが一対一でアイリーンちゃんに匹敵するとは……さすがオディ兄のパーティーのリーダーだっただけある。

しかし、このままだと……アレクの魔力が……

『おおーっと! 凄いことになっております! アレクサンドリーネ選手の猛攻ですが! キアラ選手は一歩も動かず! 涼しい顔をしております!』

『ボスの妹さん……全然魔力が減ってないねぇ……お嬢があれだけ魔法を使ってるってのに……あれがゼマティスの血なのかねぇ……』

『確かに! そうかも知れません! 魔道貴族ゼマティス家! 二年前に代替わりしたそうですが! 先代ゼマティス卿の二女である魔女イザベル様! そんなイザベル様の二女であるキアラ選手! 天真爛漫な笑顔も魔力も! ド腐れクソ女こと虐殺エリザベスとは似ても似つきません!』

『聖なる魔女イザベルかぃ……王都にいた身からすると……会いたくない人間ぶっちぎりのトップだねぇ……アタシを拾ったニコニコ商会の先代、トラヴィス・キャノンボールはいつも言ってたねぇ……貴族と揉めても一歩も退くな、だがゼマティスとは決して揉めるな。ってねぇ……』

『は、はは……さあ! そんな魔女イザベル様を母に持ち! 魔王カース選手を兄に持つキアラ選手ですが……あ、あーっとぉーーー!』

『接近戦かい。お嬢らしくないねぇ……切り札の短剣……かなりの業物のようだが……』

全然効いてない。おどりゃ往生せいやぁスタイルで短剣を低く構えて体ごと突っ込んだのだが……

サウザンドミヅチの短剣ですら跳ね返すって……キアラのやつ自動防御にどんだけ魔力を込めてやがるんだ……

『氷弾』

いったん距離をとったアレクの魔法がキアラを襲うが……

「魔力感誘……キアラちゃんも使えるのね……」

自動防御を解いたキアラを掠めるのみだった……

あー、さすがにあの短剣を跳ね返したんだから解けもするわな。

「これ便利だよねー。ほとんど魔力を使わなくていいもんねー。」

はぁ!? アレクの魔法を逸らすほどの魔力感誘だと……? キアラが……? 私は今でも全然できないってのに……? マジか……

『すないぷ』

「ぐうっ……」

逆にキアラの弾丸がアレクの肩を貫いた……マジか……? 私の狙撃に匹敵する速度だったぞ……

「それからーアー姉がさっき使ったのはこれだったよねー?」

『降り注ぐ氷塊』

ばか! キアラ!?

『火球』

「あーカー兄ー! カー兄も参加するのー?」

危なかった……もし今、私が火球で迎撃しなかったら……コロシアムの観客達は全員……

いや? いくらキアラでもそんな考え無しなことしないよな? 着弾点を制御して客席に被害が出ないようにするよな? な?

それにしても氷塊がおよそ十ぐらい落ちてきたよな……あれだけの数をタメも詠唱もなしとか……

『カース選手! 横槍厳禁ですよ! 後で罰金を払ってくださいね!』

『まあまあ。今のは……ヤバかったよぉ? ボスの英断に感謝するとこさぁ。つーかさぁ……ボスの妹さんさぁ……ヤバすぎじゃないかぃ? アタシがまだ小さかった頃さぁ、王都で遠巻きに見た魔女を思い起こさせるねぇ……』

『それは興味深いですよ! 後ほどたっぷり語っていただきましょう! おおーっと! キアラ選手の攻勢が止まりませーん!』

キアラのやつ、何考えてんだ……? 武舞台の上が吹雪に覆われている……あれは『吹雪ける氷嵐』か……めちゃくちゃしやがる……

しかもアレクの手からサウザンドミヅチの短剣が消えている。キアラの金操か……

「この短剣かっこいいよねー。私もカー兄におねだりしよーっと!」

「くらえ!」

突如アイリーンちゃんがベレンガリアさんに背を向けてまでキアラを攻撃するが……自動防御を貫けない。寒いのが嫌だったんだろうなぁキアラは。しれっと張ってるんだもんなぁ。当然ながらアイリーンちゃんは背中をベレンガリアさんに刺された……

「さすがにそれはダメよ? 必殺の一突きだったみたいだけどさあ。」

「アイリーン!」『氷弾』

「おっと、危ないわね。」

ベレンガリアさんはそう言ってキアラの背後へと避難した。もう何もしないつもりなのだろうか。

「アイリーン! 場外に降りなさい! 命が危ないわ!」

「バ、バカを言うな……これしきの傷で棄権しては……叔母様に笑われる……」

「無理しないでよね……」

「お前こそ……傷だらけではないか……」

「傷だらけで魔力も武器もなし、おまけに今にも凍りそうなこの寒さ……最後の賭け、やってみる?」

「やるしか……ないだろう……言え、作戦を……」

「それはね……」

『ようやく吹雪がおさまってきました! 果たしてアレクサンドリーネ・アイリーン組は無事なのかぁーー!』

『見てるだけで凍えてくるぜ。やべぇ妹だよなぁ。』

『いつの間にかダミアン様が放送席に来ていたぁー! ぐおー! ここでイチャイチャするなぁー!』

『寒ぃーんだから仕方ねーだろ。なぁラグナ?』

『当たり前さぁ。ほぅらもっと暖めてやるよぉ。』

あいつら……いい身分だよな。アレクだってきっと凍えているだろうに……

ほう、アイリーンちゃんの背中の出血もアレクの肩からの出血も止まっている。服ごと傷口が凍ったのか……

「行くわよアイリーン!」

「ああ!」

『闇雲』

おっ、アレクの魔法か。キアラ達が闇の雲に覆われるではないか。そこに間髪入れず!

『螺旋突貫撃ぃーー!』

アイリーンちゃんの槍がキアラの手前、石畳を斜めに突き刺した……槍が半分まで、結構深くまで入ってるな。あそこは自動防御の範囲外か。

「アイリーン!」

「来い!」

うおっ! アレクもアイリーンちゃんの槍を握ったぞ!?

『火球』『水球』

一瞬にして武舞台が弾け飛び……噴煙と瓦礫に覆われてしまった……

まさか……水蒸気爆発的な?

『うおーっとぉー! 何ということでしょう!? 武舞台が見えません! 大爆発が起こってしまいました! あの二人は一体何をしたのでしょうか!?』

『アイリーン選手が水球、アレクサンドリーネ選手が火球を使ったな。それも同じ槍を発動体としてだ……無茶しやがるぜ……』

『かぁー! もったいないことをするもんだねぇ……あの槍ぁもう使えないねぇ……』

私達魔法使いは魔法の威力を高めようとする際にはきっちり詠唱したり、杖などの発動体を通す。あの二人は……槍先から全く同時に炎と水を発生させたんだ。それも石の中という密閉空間で……

以前クタナツでサウザンドミヅチと出会った時、私も同じことをした。虎徹を土の中に突っ込んでから水球を使い、地面が爆裂し……泥まみれになってアレクに怒られた。あれを覚えていたのか? 応用したと言うのか!?

無論キアラにダメージは通らないだろう。それでも自動防御の性質からしてその場から動かすことはできる。上空からワイバーンに襲われて海中に叩き落とされた私のように。

そろそろ煙が晴れる……アレクは無事か……