軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

280、痛恨ダミアン

イザベルが治療院に戻ってからおよそ一時間後、カースも戻ってきた。父を心配する息子の顔そのものだ。

「母上、父上の具合は?」

「大丈夫よ。さっき少し目を覚ましたわ。何の心配もいらないわ。」

「良かったよ。で、結局何が起こったの?」

「分からないわね。他の門弟さん達は誰も目を覚ましてないから。傷口からすると大型の鳥系ね。それも強力な毒持ちの。」

「大型で鳥系で毒って……コカトリスとか?」

「そんなところでしょうね。アラン一人なら負けるはずなんかないのに……」

「だよね。無尽流の稽古か何かだったのかな?」

「きっとそうね。アランにしては目論見が甘かったとしか言いようがないわね。」

「そっか……ダミアン達は?」

「あっちに寝かせてあるわ。もう起きていてもおかしくない頃よ。」

「分かった。ありがとね。」

やはり父上は無事か。一安心だな。後はダミアンとリゼットのことがバレなければいいのだが……完全に関所破りだもんな。

「ダミアン、起きてるか?」

「おお……カースか。ここはどこだ?」

「クタナツだよ。領都の治療院に誰もいなくてな。」

「俺はどれだけ寝てたんだ?」

「まだ一日も経っちゃいねーよ。ラグナが心配してたぞ。アタシのせいだってな。」

「ラグナが悪いわけねーだろ。行き先は行政府だからよ。さすがに連れて行けねぇさ。」

「それに相手は騎士が四人だそうじゃないか。ラグナでもキツかっただろうよ。」

「そうか……四人か。俺が見たのは二人だったぜ。普通に巡回してたもんだからよぉ。油断したぜ……せっかくコーちゃんが鳴いて知らせてくれたのによぉ。」

「ピュイピュイ」

コーちゃん!

どこにいたんだい?

「ピュイピュイ」

リゼットが? よし、行こう。

「リゼットの様子を見てくるわ。」

「おお、頼む。俺の正室になる女だからな。」

ダミアンめ。殊勝なことを言うじゃないか。

あっちか……

ノックしてもしもし。

「リゼット、調子はどうだ?」

「カース様! ここは一体!? 私はどうして?」

「覚えてないのか? ダミアンと一緒に夜道を歩いてて襲われたらしいぞ。ここはクタナツな。」

「あ、ああ……言われてみれば。え? クタナツ、ですか?」

「ああ、うちの母上が診てくれたおかげで助かったんだ。後で礼を言っておきな。」

「あ、あの高名な魔女様が、ですか!? 」

「それとうちの元メイドのマリーもだな。俺の兄の奥さんでもある。」

「そうでしたか……重ね重ねありがとうございます。この御恩は忘れません。」

「コーちゃんとカムイもだからな。」

「ええ、もちろんです。」

何にしても、こいつらが助かってよかった。日が沈んだら領都に連れて戻るとしよう。

「大丈夫そうね。」

「あ、母上。」

「お初にお目にかかります。リゼット・マイコレイジと申します。この度はお世話になりました。ありがとうございます。」

「いいのよ。ほんのついでだから。さあ、カースは出てなさい。傷を診るから。」

「分かった。頼むね。」

母上にかかれば傷痕なんか残らないもんな。

ダミアンの所に戻ると、コーちゃんと戯れている。いや、心なしかコーちゃんが慰めているような? ダミアンの顔色がおかしいぞ。

「おいダミアン、どうした? 気分が悪いのか?」

「やべぇぜ……白金貨二百枚が……ねぇ……」

「はあ? ないって、魔力庫に入れてたんだろ?」

「当然だ……それなのに……ねぇ……」

そんなバカな!

魔力庫の中身を盗むのなんか不可能だろ!

いや……まさか……

「個人魔法使いか?」

「他に考えられねぇな。まあ何らかの禁術ってセンもあるがよぉ。」

「禁術か……なら、それはもうしょうがない。金ならまた貸してやる。次で最後だがな。」

「すまねぇ……死に金になりかねねぇってのによぉ……」

「あの金が長男に渡っているとすれば、かなり劣勢になるんじゃないか? せめて同額はないと勝負にならんだろ。倍にして返せよ。」

「ああ。オメーはドストエフ兄貴を疑ってんのか。俺ぁてっきりデルヌモンの差し金かと思ったぜ。」

なるほど。五男の可能性もあるのか。一応アレクから聞いた話も伝えておこう。

「なるほどな。そりゃあドストエフ兄貴が怪しいわな。いや、もしかしたら二人が組んでる可能性もある。俺にぁオメーがついてるからよぉ。」

「なるほど。あり得るな。それにしてもタイミングよく襲われたもんだな。心当たりはあるか?」

「ねーな。だが偶然じゃねぇ。おそらくずっとつけ狙ってたんだろうぜ。そして昨夜、ついに機会が来たってとこじゃねぇか?」

「なるほど。考えようによってはツイてたな。俺が領都にいる時でさ。で、報復はするのか?」

「ああ、やる。ただしスマートにな。来週末の子供武闘会が楽しみだぜ……」

「あー、そんなのもあったな。あんま無理すんなよ。じゃあ俺はちょっと出てくるわ。」

「おお、ありがとな。」

さすがのダミアンも心身どころか懐にまでダメージを負ってしまったもんな。そりゃあしおらしくなるわな。

それにしてもあれだけの大金を盗まれたことも痛いが、まさか魔力庫の中身を抜くことができる奴がいるなんて……

落ち着いたら母上に相談だな。私の魔力庫から抜かれたりしたら最悪だもんな。

他人に成り済ます奴も厄介だが、他人の魔力庫をいじくれる奴も厄介この上ない。やはり世の中は甘くないよな……

さて、久々にクタナツに帰ったことだし、発注していたアレを受け取りに行こう。