軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

178、哀れな当たり屋

その後、私達はモーガンと行政府の倉庫に向かった。さすがにクタナツギルドの解体倉庫より広いな。

「ドラゴンの素材はあれだ。」

無事な牙は二、三本。角はどちらも折れている。骨なんかバキバキのボロボロだ。うーん、どうしよう……よし!

「牙だけいただきます。残りは買い取りでお願いします。」

「あいわかった。後日口座に入金しておく。ワイバーンの肉も解体が終わり次第連絡を入れよう。」

「よろしくお願いします。」

「あぁ、それからクリムゾンドラゴンの魔石だが、見当たらなかった。おそらくは砕けたのだと思う。おそらくは……な。」

魔石が砕けるのはよくあることだ。しかし、砕けたのならカケラは残るはずなんだよな。ならばモーガンが言いたいことは……盗難か。大規模な戦いの後、解体などの仕事をするのは大抵の場合冒険者だ。彼らも稼ぎ時だから喜んでやることだろう。そんな時、素材の扱いについては現場によって異なる。

自分で解体した物が全て自分の物になる場合。

解体一件あたりにつき歩合で報酬を貰える場合。

解体をせずに死体の処理で時間あたりの報酬を貰える場合、と様々だ。

今回は二番目。解体一件につき歩合で報酬が貰えるパターンだったようだ。

詳しく聞いてみると、解体の前後で明らかに素材の量が合わなかったそうだ。そりゃあみんな魔力庫が使えるんだからそうなるわな。それでも普段なら騎士の監視や抜き打ち魔法尋問が厳しいためそうでもないらしいのだが、さすがに今回は騎士も多忙だ。監視などしてられる場合ではなかったと。その結果が、これか。

少しムカつくな。私が必死に倒した魔物の素材をちょろまかしたわけだからな。百歩譲って雑魚魔物はいいさ。しかしドラゴンの魔石は許せんな。ちんけな盗みをするような奴にあの魔石を渡したくはない……ならば……

「ではモーガン様。今回はありがとうございました。ダマネフ伯爵家の件も何か分かりましたらお知らせいただけると嬉しいです。」

「うむ。貴殿はフランティアの誇りだ。そんな貴殿を蔑ろにすることはあり得ん。この度は本当に助かった。良い冥土の土産となったわ。」

そして行政府を出てギルドへ。領都のギルドって最近全然行ってないんだよな。

「カース? ギルドへ行って何するの?」

「ちょっとね。クリムゾンドラゴンの魔石を盗んだ奴にプレッシャーをかけてやろうかと思ってさ。」

「ふふ、カースったら。早速お義母様の薫陶が活きてきたのかしら?」

どうなんだろうね。普段なら騎士団だってその場にいた冒険者全員に尋問魔法を使うぐらいやりそうだよな。さすがに今回ばかりは無理だよな。領都の復興が第一だもんな。自分でやるしかないな。モーガンだってそれを期待して私に事情を説明してくれたのだから。

到着。かなり混雑している。こんな時だ、人手はいくらあってもいいもんな。大人しく列に並ぶとするか。面倒だが……

「いてっ! テメー何ぶつかってんだコラ?」

私は動いていない。こいつがぶつかってきたのだ。

「何言ってんだ? オメーからぶつかって来たんだろうが?」

「あ? チビガキが! 調子に乗ってんなぁ!? テメー何等星よ? 俺ぁ七等星リスパック様だぞ!」

「知るかよ。十等星のお子様相手に恥ずかしくないのか?」

「ぷぷ、テメー十等星かよ!? ド新人じゃねーか! ド新人がそんな魔王みてーな偉そうな格好してんじゃねーぞ? おら、有り金置いてけ。そしたら許してやんぞ?」

十等星と聞いて一気に元気になりやがったな。まあいい、たまにはやってみるか。

「賭けるか? テメーの有り金がいくらあんのか知らんが、俺に勝ったら倍にして払ってやるぞ?」

「ガキが! おおかた装備の差で勝てるとでも思ってんだろうがよ! そんなハッタリ魔王スタイルで勝てるわけねーだろうが! だが、言ったよなぁ? 倍にして払うってよぉ?」

「ああ、言ったぜ? 有り金全部積み上げてみろや、貧乏人。」

「テメー死んだぞガキぃ! 訓練場で待ってろや! テメーが払えない時ぁこっちの女に体で払ってもらうからよぉ!」

「それこそオメーみたいな貧乏人には払えねぇよ。早く行って金をおろしてこいや。逃げんなよ?」

いやー、こんな展開いつぶりだろう。えらく新鮮に感じてしまう。ここで私が魔王本人だって言っても信じてくれないんだろうな。まあいいや。あいついくら持ってんだろう。当たり屋やって少しは稼いでいるのだろうか。

訓練場にて、アレクとイチャイチャしながら待っていた。模擬戦などをしていてもよかったのだが、それを見てあいつが逃げたら困るからな。

「ほぉ? テメー逃げなかったんかよ? 褒めてやんぜ?」

「ほら、有り金見せてみろ。」

「おらよ!」

奴が地面にばら撒いたのは全て金貨。見たところ百枚ぐらいだろうか。少なっ。

「金貨百三十五枚だ! 俺が勝ったらこの倍払えよ!」

「いいだろう。ところでこの二倍っていくらだ? オメーみたいなバカでも計算ぐらいできるだろう?」

「明日の訃報欄載ったぞガキぃー!」

奴は剣を抜いて襲いかかってきた。いつもなら金操で剣を足に刺してやるところだが……

『狙撃』

両足の大腿部に一発ずつ。両肩にも一発ずつ。

七等星にしてはマシな装備のようだが、私の狙撃を防げるレベルではない。汚い声をあげながら倒れ込んでいる。

「アレク、その金貨を回収しておいて。」

「ええ、分かったわ。」

さて、ではこいつをどうしてくれよう。どうせ似たような手口で色々やってんだろうし……

「おい、オッサンよぉ。オメー散々俺を殺すって言ってたなぁ? 俺が誰か、この服装を見ても分かんねーか?」

「クソが! 騙しやがったな! テメーどこのどいつだぁ!?」

だからそれを聞いてんのに。よし、いいアイデアを思いついたぞ。先日のアレンジだけど。

『麻痺』

『鉄塊』

『氷壁』

先日と違うのはロープを口で咥えるのではなく、手で持つだけ。そして手と口には麻痺が効いてない。それからロープに吊られているのは杭ではなく、鉄の塊。あんなのが落ちてきたらまあ死ぬかな? ぎりぎりオッサンよりは軽い程度の重さだが。

「ほーらオッサン、手を離すと死ぬぜ?」

「殺す! ぜってぇ殺すからなぁ! 俺が一声かけりゃあ何十人の冒険者が集まると思ってやがる!」

「誰も来ねーな? 早く呼べよ。オメーが死ぬ前にな。」

「うるせぇガキぁ! マジ殺すからなぁ!」

手足に穴が開いてるのに元気な奴だ。特に腕、ロクに力なんか入らないだろうに。

おっ、見物人も増えてきたな。ギロチン刑の亜種だからな、珍しいだろう?

「おい! みんな! 助けてくれ! このガキに卑怯な手でやられちまった! こいつを殺してくれや!」

返事はない。

「お、おい! どうしたよ!? やべぇんだって! もう手に力が入らねぇんだ!」

「リスパックよぉ〜、まーだ気付かねーか? このガキぁただのガキじゃねぇぜ?」

「誰がオメーなんかを助けるために危ない橋ぃ渡るかよ?」

「バイバーイ。あの世でも当たり屋やんのか?」

「てめぇらぁぁぁぁぁぁーーー!!」

やっぱこいつってそんな奴だったのか。新人とかを相手に当たり屋稼業か。情けない奴。

「ほーらさっきまでの元気はどうした? 謝ったら許してやろうかとも思ったけどな。オメーみたいなクズはこのまま死んだ方がいいみたいだな。だからそのまま死ね。」

「う、嘘だろ! たふけてくれよぉ! 俺がらにしたってんだぁ! 勘弁してくれぁ!」

「俺の名を言ってみろ。見事言えたら命だけは助けてやる。」

「あ、あんたは魔王だ! そうなんだろ! カッコだけじゃない! あんたがモノホンだ! そうだ!」

ははーん、助かりたくてお世辞言ってんな? 魔王に憧れたガキの機嫌をとろうってか?

「違うな。俺は名前を言えって言ったんだよ。オメーは魔王の名前も知らねーのか?」

「魔王の名前!? そんなん知るかぁ! たすっけて……ぎゃああああーーー!」

あーあ、手を離しちゃったね。

なのに途中で邪魔したのはだーれだ?

鉄塊がギリギリで止まってしまっている。奴からは嫌な臭いが漂っている。やれやれだ。