軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

134、国王と王妃、そしてカース

小さな部屋に国王、王妃と連れ立って入る。

席に座るとメイドさんにお茶を出された。

「さて、カースよ。色々と判明したことがあるので伝えておこう。まず、王国騎士団が裏切った理由だが……」

それは私からすれば下らない理由だった。

王国騎士団は待遇で近衛騎士団に劣る。給金では三倍以上違うらしい。その待遇改善を求めて実力を示したかったらしい。しかし内乱までやるつもりはなかったのがほとんどで、教団の息がかかった一部の者が暴走、扇動した結果らしい。その中でも比較的腕が立つ隊長クラスの人間が洗脳されて白い鎧を着ていたそうだ。ちなみに怪しい騎士団長、フュイーテ・ド・プルーイエは普通に教団と繋がっていたらしい。

今後騎士団では待遇改善を求める者には近衛騎士団と同じ訓練を課すことにするそうだ。給金が三倍になってもキツさが五、六倍になったら割に合わないのではないか?

ん? 国王と話していると丸坊主の男がヌルッと現れた。眉もなく、耳もない。国王の召使いか?

「改めて紹介しよう。テーゲンハルトフォルトナート改め、サーバルトだ。」

「え!? あのエルフですか!? どうしてここに?」

鉱山行きではなかったのか?

「本来ならば鉱山奴隷として使い潰すつもりだったのだがな。ほれ、春からの魔境開拓よ。あれに同行させることにしたのだ。こやつの魔力は鉱山などで使うには惜しいからな。」

「でも大丈夫なんですか? こんな危なそうな奴を……」

「問題ない。契約魔法に洗脳魔法。あらゆる方法で元の人格は消し去った。今のこやつにあるのは余への忠誠心のみ。こやつのような大罪人にはこのような外法が相応しいというものよ。」

「なるほど。それなら安心ですね。」

怖っ……エルフすら肉人形にできてしまうのか……何やら怪しい首輪をつけてるし、見たことのない魔法陣が直接首に刻まれてるもんな。やっぱ国を敵に回すもんじゃないな。

「それからな、エルフの村長からの手紙は読んだぞ。奴らの母親をカース自ら裁いてくれたそうだな。落とし前としては全く足りぬがエルフの心意気に思うところもある。」

「ええ、まあ。村長も身内が悪いことをしたとは思っているようです。」

弱い者イジメをしたとか、いたずらに虫を殺し過ぎたとか、その程度だろうけどね。

「せっかくの招待だから行きたかったのだがな。魔境の開拓を始める以上、そのような余裕はない。よってこの件はこれにて終わりとする。せいぜい生き残った教団員や裏切った騎士達に働いてもらうとするさ。」

「平和が一番ですね。村長もそう言ってました。ところで、なぜわざわざあんな危険な場所に街なんか作るんですか?」

これが気になるところだ。意味あるのか?

「ふっ、分からぬか? カースよ、お前のせいだ。お前のせいで作らざるを得なくなったのだ。」

「えっ!? それは、また一体どうしたことですか!?」

さすがに意味が分からんぞ?

「現時点でお前の街、楽園に来客はあるか?」

「来客と言うか、先日は三十人ぐらいが滞在してました。」

「それもそうだろう。ならばこの先、人数が増えていくことは明白。楽園が発展していくことも明白なのだ。」

「そうかも知れませんが……」

発展するかぁ? あんなヤバい場所だぞ?

「カースよ。お前に野心がないことは分かっておる。そして余はお前を孫のように思っている。しかしだ。お前の子孫は分からぬのだ。お前のような魔力を持ち、覇王のような野心を持つ者が現れたら! 誰にも止めることはできぬ!」

フェルナンド先生はいいのか? 先生の子孫もきっとやばいぞ?

「王というものは悲しいものだ。いかにお前を可愛く思っていようとも、将来に禍根を残すことはできぬ。あの魔王が楽園を作ったのに、国王は何もしてないなどと言われるわけにはいかぬのだ!」

「なるほど……道理ですね……」

「よって今、我らは動かねばならぬ! 準備を整え春には北へ向かう! そこにお前の助けがあればどんなに心強いことか。しかしお前の力を使うわけにはいかぬ! 我らだけでやることに意義があるのだ。」

「そうですか……」

悲しくなってきた。私がノリで始めたことが国王を軽く追い詰めてしまったか……だからキアラにもあの対応か……仕方ないな。

「しかしカースよ。余がお前に感謝していることも事実だ。お前がいなければ王都は壊滅とまではいかずとも大打撃を受けていたことは間違いない。そこでだ、テレジア。」

「はーいカースちゃん。この前言ったあっと驚くご褒美よ。まずはこれ。」

王妃が魔力庫から何かを取り出した。大きいな、金属の塊か。

「これが『汚れ銀』、こっちが『ミスリル』、そして最後に『オリハルコン』よ。」

マジか……ミスリルはいつだったかアレク像を作った時の塊より大きい。そしてオリハルコン……三十センチ四方はある立方体だ。とんでもない量だ……

「こんなに貰っていいんですか……? 金額にしたら凄いんじゃあ……」

「汚れ銀とミスリルは合わせても白金貨二、三枚かしら? でもオリハルコンは百枚どころじゃないわね? 大事に使ってね。」

なんと……これは嬉しい。

「ありがとうございます。最近あいついでミスリルのアイテムを失くしたもので、助かります!」

オリハルコンは何に使おうか。迷うな。

「それから魔境の開拓をする理由だけどまだあるのよ。正確には出来るようになった理由ね。これもカースちゃんのおかげなのよ?」

「そ、それは一体……?」

「ドラゴンゾンビの骨よ。あれのおかげで新しく船が作れるの。新しい船はクレナウッドの御座船になるわ。だから陛下は自分の船で魔境に向かうことができるのよ。」

「新しい船があるから、最悪沈んでも構わない覚悟で事に当たれると?」

「そうなの。何から何までカースちゃんのおかげなのよ。ありがとうね。」

「当然だが、魔境の開拓はそれだけが理由ではない。最大の理由があるのだ。」

まだあるんかい! しかも最大?

「それは一体……?」

「草原の街ソルサリエよ。あれが出来たために時代が動き出しおった。クタナツ代官が出来ることで、我ら王族が遅れをとる訳にはいかぬのだ!」

あー、それはそうかも。ん? あれのキッカケは確か……私がグリードグラス草原を焼き尽くしたからだ。結局私なのか。自分が怖いぜ。

「クタナツ代官レオポルドンは宰相の孫。ならば我らの手柄と考えることもできる、特にあやつの余に対する忠誠心は並ではないからな。しかしだ! 所詮あやつの立場は代官、つまりは辺境伯の部下だ! したがって!ソルサリエが発展しても広がるのはフランティアなのだ!」

フランティアが広がるならローランド王国が広がるも同然だが……それは建前だな。

「大変ですね。」

「全くだ! ただでさえフランティアは王国の半分近くを占めておるのだ! これ以上増えてはどちらが国王か分からなくなってしまう! なればこそ! 今、やるしかないのだ!」

うわー、やっぱ王族って大変だわ。キアラは大丈夫か? 心配だわ。

「それでね、新しい街ができたらカースちゃんの楽園にも顔を出そうと思うの。その時に『結界魔法陣』を実装してあげるわ。もちろんお金なんか要らないわ。」

「え!? いいんですか!? 白金貨が五、六百枚って……」

「いいのよ。正確にはね、人件費は要らないわ。代わりにカースちゃんに用意してもらう物はあるから、また教えるわね。」

なるほど。それだけでも充分だ。

「それから最後だけど、新しく作るクレナウッドの船、名前が『ゴッデス・アレクサンドリーネ・マーティン』に決まったわ。『カース・ザ・サタナリアス』と迷ったんだけど、カースちゃんはアレックスちゃんの名前を使った方が喜びそうだし、船に男性の名前をつけるのは縁起が悪いし。」

「とてもいいセンスだと思います! 素晴らしい名前です! きっと神のご加護があることでしょう!」

ホントにこの王妃は私が喜ぶポイントを分かってるよな。ありがたいことだ。

「あ、そういえば盗賊はどうなりました?」

「残念ながら首領や幹部クラスは捕まっておらん。下っ端はかなりの数を捕まえたのだがな。しかもそやつらを捕まえたからと言って盗られた金品が返ってくるわけでもない。ほぼ上の奴らが確保しておるようだ。」

なんとまあ……いいようにやられてしまったのか。

「つまり下っ端の奴らはロクに上の者のことを知らないってことですか?」

「そうだ。接触を最小限にし、自分達の印象を薄くしたくせに手口はきっちりと伝授しておる。腹立たしい奴らよ。」

これでもう聞いておくことはないよな?

あ、あった……少々頼みにくいが、いや、これはまた今度だ。まだ頼めない……

「これから復興ですね。お体に気をつけて頑張ってください。」

「ああ、お前達には随分と助けられた。ありがとう。」

「ありがとうね、カースちゃん。」

国王夫妻からこう言われると照れてしまうな。守りきれてよかった。さて、会食か。