軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第一〇九話 真価と進化

□【聖騎士】レイ・スターリング

女化生先輩から受け取った十六本の【リソース・チャージャー】。

まずは俺が【暗黒騎士】を消して【煌玉騎】に就き、【リソース・チャージャー】三本を消費してレベル一〇〇にまで持っていく。【暗黒騎士】と比べると多少ステータスのバランスが変わったが、どちらも戦闘系の上級職なので大きな差はない。

そして、レベル一〇〇に達した時点で、《煌玉権限》はレベル3に成長した。

「……レベル解放で良かったよ」

これでレベル解放ではなく、『戦闘回数やジョブに就いている時間で解放』といった条件解放だったら目も当てられなかった。

加えて、《煌玉獣強化》のスキルレベルも上級職での上限まで上昇し、乗騎の性能に六〇%の強化が乗るようになった。

「でも、奥義はなしか」

奥義だけはレベルではなく条件解放らしく、詳細も条件もまだ分からない。

しかしどの道、奥義は各ジョブやその系統の超級職でしか使えないので、【聖騎士】をメインにしている間はいいだろう。

ともあれ、こうして《煌玉権限》の準備が整ったので、この後はプラントで修理中の【シルバー】のところへ行き、例のスキルの仕様を確認することになる。

「ルーク。残りは使ってくれ」

「……はい」

さて、残りの十三本の【リソース・チャージャー】だが、これらは全てルークが使う。

条件的には半々であるが、俺があと五本持ってもこの戦争中は死蔵することになる。

ならば超級職の、それもまだ低レベルで【リソース・チャージャー】の恩恵も大きいルークが使うべきだ。

「この分は、いずれお返しします」

「今日頑張ってもらうから気にすんなよ」

ルークはまず《制限昇華》で消費した下級職二つのジョブレベルを二本使って戻し、さらに残る十一本を超級職へと使用する。

結果、ルークの【色欲魔王】のレベルは三〇〇弱にまで到達した。

そのせいか、あるいは【魔王】というジョブゆえか、ルークから感じるオーラや気配とでも言うべきものが強まったようにも感じる。

「やっぱり【色欲魔王】は物理ステータスではなく MPSP(スキルステータス) とキャパシティ特化。このキャパシティなら……」

ルークはステータスを確認し、自身の右手の【ジュエル】に視線を向ける。

どうやら、ルークの方も新しい道が拓けたらしい。

「……さて」

メニューウィンドウに表示された時間を見る。

このカルチェラタン地方の夜明けまでは、あと一時間もないだろう。

恐らく、それがこの<砦>の攻防戦の合図になる。

女化生先輩達を警戒して夜間の奇襲ができなかった以上、皇国は力押しで来るはずだ。

皇国がここにどれだけの戦力を投入してくるかは分からない。最悪、フランクリンの『数』と【獣王】の『質』で波状攻撃を掛けてくることも考えられる。

だからこそ、そのギリギリまで準備は重ねていく。

「レイさん。僕は今のレベルでの戦術を練り直します」

「ああ。俺もシルバー……それにネメシスと相談だ。お互い頑張ろうぜ」

「はい!」

ここからは新しい力の使い方次第だ。

生産プラントでは作業用の遮光ゴーグルをつけた技術者達が、昼夜を問わず仕事に当たっていた。

彼らは【セカンドモデル】を修理しつつ、新たな【セカンドモデル】も生産している。

前者は【セカンドモデル】を用いる<マスター>が慣れ親しんだ騎体で再び戦えるように、後者はもしもこのプラントが破壊された場合も一騎でも多くの騎体を世に遺すために。

ティアンの技術者が多いが、戦場となるここは危険地帯だ。

戦争中に街中でティアンを攻撃すれば即デスペナルティというルールだが、街の外にある<遺跡>は対象外なのだから。

それでも、技術者の人達は残って作業を続けている。

あの集会の日、『貴方達と共に私達も力を尽くす』と宣言したアズライトと、意思を同じくして。

そんな彼らを護るための人員も<月世の会>からは多く配されている。

<砦>の設置場所からはズレているが、ここが巻き込まれないことを祈るしかない。

「おはよう、シルバー」

この施設の一角には、俺のシルバーの姿もあった。

“不退転”のイゴーロナクに破壊された脚部は内部的な損傷箇所やダメージの度合いが確認でき、今はそれを補うパーツを再生産して組み込もうとしているらしい。

『…………』

シルバーは嘶きもせず、やってきた俺をジッと見つめている。

その様は、俺が【煌玉騎】に就いたことを理解しているようだった。

「待たせたな」

俺はシルバーの首に触れ、それからウィンドウを開く。

かつては伏せられ、メッセージのみが開示された機能の正体を知るために。

そんな俺の前に表示されたのは……。

『《煌玉権限》がレベル3に到達し、【白銀之風】が自らその機能を解放した者へ』

『この世界の 理(ルール) に則った手順を進め、私の遺した煌玉馬に認められた君を正式な所有者として認定する』

予想通りと言うべきか、やはりメッセージだった。

恐らくは制作者である名工……初代フラグマンからの。

「?」

しかし、表示されたメッセージの内容には疑問を覚える。

たしか、スキルが伏せられた頃は『詳細閲覧と機能の完全解放はレベル3以上の権限を獲得せよ』と書かれていた。

実際にはもう一つ、『シルバー自身が自己判断で伏せられたスキルを使用している』があったということか?

何らかのセキュリティだとして……何を警戒した?

気になって、メッセージの続きを読み進める。

『所有者に対し、【白銀之風】の真価たる秘匿機能の詳細を開示し、使用の判断を委ねる』

『機能名、《 風と歩む魂(ソウル・ドリフト) 》』

『この機能は“化身”がこの世界に流布した新たな法則を応用し……』

俺は一分ほどかけてメッセージ全文と装備スキルの詳細を読み、理解しがたい部分があったので再び読み返す。

その後……頭を抱えながらも詳細を把握した。

「…………あー」

これまでの発動が、俺が思っていたよりも 博打(・・) だったことを理解する。

シルバーもそうそう使いたがらないはずだと、納得もした。

考えてみれば、これまでの使用は……『シルバーに騎乗した状態』で『使わなければ死ぬ』という場面ばかりだった。

そのままでは確実な死が待っていたからこそ、シルバーは俺の可能性を繋ぐために実行していたのだ。

同じような能力(・・・・・・・) を持つ<超級>の噂を聞いたこともあるが、これは……一か八かだ。

先々期文明を滅ぼした先期文明……“化身”の力を参考にしているというし、恐らくは名工フラグマンも原理の一〇〇%の模倣にまでは辿り着けなかったのだろう。

「だとしても……」

いざとなれば、俺はこれを使う。

一か八か。そこには望むゴールに辿り着く可能性も生まれている。

だからこそ、リスクがあっても俺はこの力を選ぶ。

『……まぁ、御主ならそうするだろうな』

俺がそう決意したとき、脳内に念話で声が響いた。

「ネメシス! 起きたのか!」

『ああ。少し前から覚醒しかけてはいたがのぅ。周囲の話と御主の考えは伝わってきていた。……御主、キツネーサンに恐ろしい借りを作ってしまったのではないか?』

「……重々承知しているけど、今回ばかりは背に腹は代えられなかったんだよ」

『やれやれ……。今回も、であろうに』

『仕方がないのぅ』と言いたげな声と共に、左手の紋章が輝きネメシスが現れる。

その姿はいつも通りのネメシスだった。

けれど……。

「それでネメシス…… 進化したのか(・・・・・・・) ?」

「……うむ」

上級進化のときと違い、メイデン体に変化はない。

けれど少しだけ、伝わる雰囲気には変化があった。

「やっぱりか」

昨晩からのネメシスの休眠は、進化に備えてのものだと考えていた。

この戦争の中で得た情報も含めて彼女の中で整理され、次なる進化の……そして<エンブリオ>の真価である必殺スキルを導き出す。

そのための時間だと。

「今回の進化で《カウンター・アブソープション》の上限が五〇万に上がり、上限も四回に増えた。また、進化に伴ってストックも最大数まで回復している。それに、《 追撃者(チェイサー) 》の ステータス写し(ミラーリング) も二ヶ所まで可能になった。その分だけダメージカウンターの消費も増えるがのぅ」

「そうか!」

既存スキルの強化と、《カウンター・アブソープション》の回復。

これらは非常に大きいが、より気になるのは……。

「それでネメシス。今回の進化で必殺スキルは……」

「…… 獲得した(・・・・) 」

「!」

ネメシスの返答に、拳を握り込む。

《風と歩む魂》、ネメシスの強化、そして必殺スキル。

この土壇場で、立ち向かうための力が揃った。

これなら……、……?

「…………」

「ネメシス、どうしたんだ?」

ようやく気づく。

進化を果たし、必殺スキルを得たはずのネメシスの顔色が優れないことに。

思えば話しかけてきたときから、喜んでいる気配がなかった。

第四形態になったときとは違い、ネメシスは思い悩んだ表情で俺に告げる。

「……必殺スキルは得た。だが、このスキルは……使えない方がいいと思う」

「…………!」

俺達の必殺スキルに、何か大きな問題があったことを彼女は告げている。

だが、疑問だ。何らかの理由で『使えない』のではなく、リスクゆえに『使わない方がいい』でもない。

『 使えない方がいい(・・・・・・・・) 』……とはどういうことだ?

「ネメシス。それはどういう、……!?」

俺がネメシスにその理由を尋ねようとしたとき、――<遺跡>が揺れた。

断続的に轟音と衝撃音が響き、連動するように施設が軋む。

「砲撃音……!? もう襲撃が……!」

まだ夜明けまでは十分以上……そうか!

あっちが夜を警戒していたのは、<砦>を護る女化生先輩の夜間限定必殺スキル。

だったら、<遺跡>の最奥にある<砦>に辿り着いたとき、女化生先輩と相対するタイミングで夜が明けていればいい。

そう考えて、夜が明ける間際……奇襲が成立するギリギリの時間に仕掛けてきたのだろう。

「けど……!」

日が昇っていないから山中を接近してくる相手の視認は難しいかもしれないが、<遺跡>内部の防衛体制自体は整っている。

それに、この<遺跡>は【 ヴァスター(鯨) 】の質量爆撃にも耐える構造だ。どれだけの砲撃を浴びせられてもそうそう壊れはしないだろう。

それこそ、兄や【獣王】クラスの力がなければ外部から破壊して侵入することは難しい。

『緊急警報。緊急警報。当施設に敵襲。付近の山中より砲撃を確認。損害は軽微。外縁部の防衛部隊は迎撃に向かわれたし』

施設内のスピーカーから、声が届く。

観測結果と共に齎されるそれは、外部の哨戒を担当している<マスター>からのものだ。

「しかし……砲撃、か」

皇国で砲撃を用いる大戦力。一日目にアルベルトさんと相討ちになった【車騎王】や、開戦の直前に【光王】と【嫉妬魔王】によって壊滅させられたクランのオーナー……【魔砲王】が思い当たる。

前者はないとしても、後者が生き残っていて攻めてきたってことか?

なら、他の戦力は?

『……! 付近の山中より 敵性生物(モンスター) が大量発生! 一目散に<遺跡>の開口部へと向かっている! 迎撃されたし!』

「!」

大量のモンスターを送り込む手口はギデオンのときと同じ。

それゆえ、フランクリンの関与がまず頭に浮かんだ。

だが……。

『モンスターの種類は全て同じ! 二足歩行の 肉食性小型恐竜(ラプトル) に似た……これは!』

哨戒班からの報告は続く。

その声は何かを理解し、驚いたかのように一度途切れる。

そして……。

『――【 餓竜(スターヴドラゴン) 】! 敵性生物は全て【餓竜】!!』

――より詳細に敵の正体を……かつての災厄の名を告げた。

To be continued