軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ルークの一日 中編

□【三重衝角亜竜】マリリン

ようやく私の脳髄からキャサリンショックが抜けてきた。

オードリーはまだ無言、ショックが抜けきっていない様子だ。

現在、主とキャサリン金剛はテーブル席の一つについて談話中だ。

主とキャサリン金剛が向かい合って座り、主の隣にはバビロン様が座っている。

それと、キャサリン金剛の席の後ろにはまた別の者 達(・) が立っていた。

先刻はキャサリン金剛にばかり気を取られていて気づかなかったが、キャサリン金剛は一人ではなく連れがいたらしい。

人数は四人。

四人はキャサリン金剛の従者、あるいは奴隷であるらしくメイド服を着ている。

丁寧でたおやかな所作で控えるその様は、まるで王侯貴族の侍従のようだ…………立っているのがキャサリン金剛の後ろでなければ。

『……むぅ』

付け加えれば、そのメイド達の容姿で特に目を引くのは髪だ。

紅玉(ルビー) に似た色合いの赤髪を腰にまで伸ばしているメイド。

蒼玉(サファイア) を思わせるウェーブがかった蒼髪の背の高いメイド。

童女のように幼く、 翠玉(エメラルド) の髪をオカッパにしたメイド。

右目に顔の三分の一を覆うほどの眼帯をした、 白水晶(クリスタル) の如き髪のメイド。

「キャサリンさんはギデオンに来る途中でPKテロには遭いませんでした?」

「ワタシはうちの子に乗って飛んできたのよぉ。空中封鎖まではできなかったみたいねぇん」

キャサリン金剛はメイド奴隷の他にオードリーのような空中用モンスターを従えているようだ。

彼女(?)も【女衒】なのだし、雌型モンスターのテイムはしているのだろう。

……これのどこに魅力を感じるのかと疑問を覚えないではない。

筋肉の肉体美?

キャサリン金剛のモンスターはマッスルフェチの極みなのか?

「ルビエラとは前に会ったかしら?」

キャサリン金剛は主に質問すると同時に、背後の紅い髪のメイドを振り返った。

「はい。キャサリンさんと初めて会ったとき一緒に」

「そう、じゃあ折角だし他の子達も紹介しちゃうわね。蒼い髪がサフィーネ、翠色の髪がエメラダ、眼帯をしているのがクリステラよん」

自分達の主人であるキャサリン金剛から紹介を受けたメイド達は恭しく礼をした。

「はじめまして。キャサリンさんの後輩のルークです」

主もニコニコとした笑顔を浮かべて彼女らに挨拶をする。

うん、流石は主。素敵の極みの笑顔。

ニコポ不可避かと思ったがキャサリン金剛のメイド達は微笑を返すだけで反応が薄い。

……やはりキャサリン金剛の配下なだけあってマッチョが好みなのだろうか?

「ルークちゃんの連れている子達も見せてもらってもいいかしら?」

「もちろんです。あ、でもここだと床を壊しちゃうかもしれません」

たしかにここの床は板張りで私の体重を支えられないそうにない。

『ドンガメはデブだからなー』

黙れ赤ニワトリ。貴様、ショックから復活した第一声がそれか。

「じゃあ場所を変えましょうかねぇ。ギルマスちゃーん、裏手借りるわよー」

「構わないよ。それと指名の仕事が入っていたから後で頼む」

カウンターにいた男がキャサリン金剛の言葉に応じていた。

……あの男が女衒ギルドのギルドマスターだったのか。

場所は変わって女衒ギルドの裏。

それなりの広さの空き地になっている。

女衒ギルドの施設増設用の土地とのことだが、まだ着工には至っていないようだ。

あまり女衒の人数が増えていないというのが、土地はあっても作るところまで行かない理由の一つらしい。

「《喚起》、マリリン、オードリー」

主に呼び出され、私とオードリーはジュエルからの外へと出た。

「あらぁ、素敵な子達ねぇ」

キャサリン金剛は全身の筋肉をくねらせながら私達を見ている。

少し、いやかなり怖い。

「もう従魔師系統上級職と同等の面子よん」

【従魔師】、とは読んで字の如く人間範疇外生物 ――モンスターを従属させる職業だ。

モンスターを自身の力として使う術は大きく分けて三つある。

一つ目は 召喚(サモン) 。

普段は眼に見えず触れられない“形の無い生物”や精霊に、仮初めの肉体を与えて使役する術法。

私も詳しくは知らないが、交霊術やエクトプラズム、シャーマニズムが関連した特殊技能だと聞いている。

他に悪魔と 契約(コントラクト) して呼び出す手法もあるらしい。

二つ目は 創造(クリエイション) 。

これはゴーレムやホムンクルスなど人造の魔法生物を作成する、学問の一種。

材料を集め、手順を踏み、自身の魔力を注ぎ込んで様々な人造モンスターを生み出す。アンデッドを扱う【死霊術師】もここに含まれる。

そして三つ目が 従属(テイム) 。

最も一般的な方法であり、専門職以外にも広く活用されている。

従属(テイム) はモンスターとの間に契約印を結び隷属させる、あるいは懐柔する手法だ。

野生のモンスターをテイムするには【従魔師】など専門職のスキルや個人の適性に拠るところが大きい。

しかし、私が主の下にやってきた経緯で判るとおり、テイムした後に他者へ譲り渡すことに関してはこれといって制限が無い。そのためこの手法は様々なところで用いられている。

例えば商人が自分の荷馬車を引くモンスターを購入するのは常識であるし、【従魔師】の中にはモンスターを隷属させた後に売却して生計を立てる者も多い。

屈辱の極みではあったが私自身もそうして【従魔師】にテイムされてから売却された形だ。

しかし中にはモンスターとの絆を深めることで友として行動を共にする【従魔師】もいるので、一概に【従魔師】全てがそういった売却目当てではないのも知っている。

主をはじめとした【女衒】の固有スキル《雄性の誘惑》は誘惑が主目的だが、副産物として低確率のテイムが可能だ。

支配下に置くとも言えるし、愛によって絆を深めたとも言える。

『マジ惚れの弱みってわけよ』とはオードリーの談だ。

「亜竜とロックバードだけれど、ルークちゃんのジュエルは高級なものみたいだからまだ容量があるのよねん?」

「はい、それで今度は海上や水上を行き来できる子が欲しいんですけど、市場で手に入りますか?」

「水棲のモンスター? それはここだと難しいかもしれないわねん」

キャサリン金剛曰く、この町の生活水源は主に地下水であり近くに海や河川はない。

そのため水棲モンスターはほとんど取り扱っていないらしい。

少なくとも女衒ギルドでは水棲モンスターもマーメイド種などの水棲亜人も扱っていないそうだ。

「でもマーケットなら、探せば見つかるかもしれないわねぇ」

「わかりました! 早速行ってみます!」

「けどあの辺りは道が複雑だし、<マスター>にとってもあまり治安が良くないのよねぇ。ワタシがついて行ってあげられたらいいのだけどお仕事が入っているし……そうだわ」

キャサリン金剛は後ろに控えていたメイド達に振り向き、紅い髪のメイドを手招きする。

「ルビエラ、案内役としてルークちゃんについて行ってもらえる?」

「畏まりました、お嬢様」

紅い髪のメイド――ルビエラはスカートを摘み上げて礼をしながら、キャサリン金剛の命令に応じた。

……それはそうと、“お嬢様”と呼ぶのは正しいのだろうか?

「いいんですか?」

「ええ、大丈夫よぅ。用事が済んだらワタシの所に戻るように言ってくれればいいからねぇん」

「ありがとうございます、キャサリンさん!」

礼を言う主に対し、キャサリン金剛は穏やかに微笑みながら――見る者によっては死刑宣告じみた覇者の笑みを浮かべながら――主の頭を撫でるのだった。

主も嬉しそうに笑顔を浮かべている。

『……主が手なずけられている』

『あの金髪にしてもそうだけど、ご主人って男に対してはチョロイよな』

『ちょ、ちょろくないし。主は別にちょろくない! ただ優しくされると懐いてしまうだけだ!』

『それを世間ではチョロイと言うんじゃねえの?』

ぐぬぅ……。

『下心がない場合に限るんだけどねー。あれば判るから』

バビロン様が何事かを呟いておられたが、その意味は私にはよくわからなかった。

ルビエラの案内で私達はある区画に足を踏み入れた。

その区画について一言で説明するならば“闇市”である。

真っ当な商店街は別の区画に並んでいる。しかしてここでは真っ当ではない品々が路地を彩る。

いずこかの宝物庫から持ち出された盗品。

王国の法では禁制品にあたる薬品。

首に鎖をつけられた奴隷達。

そして檻や【ジュエル】に入れられたモンスター達。

「凄いなぁ……」

周囲の光景に主が感嘆の息を漏らす。

それは立ち並ぶ商品に対してか、それともこの区画に殺到する人々の熱気に対してか。

このギデオンは熱気に溢れた町ではあるが、この区画の熱気は他と違う。

それはこの熱気は全て人の欲によるものだからだ。

熱気は烈しく、【ジュエル】の内にいる私にもその熱が伝わる。

ここはギデオン四番街。

“マーケット”とも呼ばれるギデオンの……否、王国の欲の集積地である。

「ルーク様、マーケットについてご説明させていただいてもよろしいでしょうか」

案内役を務めるルビエラが主に尋ね、主は首肯して応じた。

「このマーケットには路上に商品を並べるバザーと、店舗を構える商店がございます。バザーでは掘り出し物も御座いますが、《鑑定眼》スキルに秀でていない場合は、贋作や粗悪品を購入させられる危険がありますのでお勧めは出来ません。商店は商品の質や真贋についてはある程度の信頼が置けますが、代わりに金額が高めに設定されております」

「初めて買い物をするなら商店がいいってことですね」

「そうですね。なお、バザーについては御自身で出店することも可能です。バザーの出店位置は四番街の元締めの元で管理されております。一日あたりの場所代を払えば、商人でなくとも路上で商品を販売することが出来ます」

なお、場所代は出店位置によって異なり、1日1000~50000リルほどの範囲で貸し出されるらしい。

「本日は水棲モンスターの購入をお望みとのことですので、普段お嬢様が懇意になされている商店をご紹介いたします。商店で気に入ったモンスターがいなければ、バザーを巡ってみましょう」

「よろしくお願いします」

ルビエラの先導で辿りついたのは古びた石造りの店舗だった。

路地の奥まった場所に位置しており、案内なしでは見つけられなかっただろう。

店先の看板には『魔王商店 中央大陸支店』と書かれている。

まるで魔王が経営していて他の大陸に本店があるような書き方である。

そもそも、世界地図にだってこの大陸しか載っていないはずだが。

「いらっしゃーい」

店内に入ると、奥のカウンターから声が聞こえてきた。

声の主はとても小柄な人物だ。主よりも頭一つは背が低い。

真っ黒なローブを着込み、フードで顔を隠している。身長以外はいかにもこういう店の店主という風情だ。

「あれ? ルビエラちゃんじゃないの」

「ご無沙汰しております。本日はオーナー殿が店番をなさっているのですね」

「たまにはねー。キャサリンは?」

「今回は同伴しておられません。私は本日こちらのルーク様のご案内の任を申しつけられております」

「はじめまして、キャサリンさんの後輩のルークです」

主が挨拶をすると、この店のオーナーとやらは少し驚いた様子だった。

「おー、キャサリンの後輩かー。珍しいねー」

その珍しいと言う言葉は<マスター>の【女衒】が珍しいという意味か、それともキャサリン金剛に懐いている後輩が珍しいという意味か。

どちらもか。

「うちに来たってことはモンスター目当てでしょ? ご希望は?」

「水棲モンスターで」

「水棲かー、この辺だと需要少ないからなー。あんまりレアなのはいないんだよなー。でも一応コーナーはあるからー」

そう言ってオーナーはカウンターから出て、主を案内する。

この店はテイム済のモンスターだけを扱っているらしく、棚には無数のジュエルが陳列されている。

中を覗き込めばモンスターの姿を見ることができるだろう。

あ、【 三重衝角亜竜(どうぞく) 】の【ジュエル】が売られている。

「ペットショップとジュエリーショップのどっちに近いんだろう」

とは主の呟き。

「ここが水棲モンスターのコーナー。まぁ見ていってよー」

一つの棚に水棲モンスターの入った【ジュエル】が並べられている。

他のモンスターに比べるとたしかに数は少ない。

が、一つ言いたいことがある。

『……どういうことだ』

オーナーは「あんまりレアなのはいない」などと言っていたが、その言葉はおかしい。

なぜなら、水棲の 亜竜(・・) のジュエルがいくつも並んでいる。

これで「あんまりレアではない」とはどういうことだ。

「地竜や天竜なら 純竜(・・) もいるんだけどねー。海竜はねー」

基準がおかしい。

純竜一体にどれだけの価値があると……。

戦力として見ても並の上級職パーティなら単騎で壊滅させられるぞ。

「純竜だと予算が足りませんから……」

「キャサリンの紹介だから分割払いも受け付けるよ」

分割払いか。主ならばちゃんと支払い終えるだろう。

でも純竜が来ると私の立場がないかもしれない……。

「懐かしいですね。私もここでお嬢様と出会ったときは分割払いでした」

「あー、四年ちょっと前だっけねー。もうそんなに経ったかー」

……ん?

今何か妙な発言があったような。

「どうしようかな……」

と、主は水棲モンスターの【ジュエル】を眺めているが何やら悩んでいる様子。

てっきり亜竜で決まりかと思ったが何かお気に召さないのだろうか。

「ルークー、どうしたのー?」

「やっぱり亜竜だと駄目かねぇ?」

「いえ、そういうことではないんです。でも……」

主は困ったように首を傾げながら、自分でも分からないという風にこう言った。

「なんだか、ピンとこないんです」

理屈ではない理由だった。

「マリリンやオードリー……僕が今連れている子達と会ったときはよく分からないけど惹かれるものがありました。でも今はなぜか全く……」

『それはアタシとの間には運命LOVEがあったってことかご主人ー!』

オードリーが喧しい。しかし感想は似たり寄ったりなので文句は言わない。

私に「惹かれるものがあった」とは良い言葉だ。

しばらく脳内再生しよう。リピートの極み。

「あー、なるほど」

主の言にオーナーは得心がいったとばかりに頷いている。

ルビエラも納得の様子だ。

「ルーク、だっけ。君は【女衒】が天職らしいけど、【従魔師】としての才能もかなりあるね。その直感が働く人はそうはいないよ」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ。となると水棲モンスターに絞らない方がいいね。ウチの店のジュエルを片っ端から見てピンと来る奴を探してごらん」

「わかりました。やってみます」

そう言って主は水棲モンスターのコーナーを離れて他のジュエルを見に行く。

その際、オーナーの言っていた「センススキルじゃない天然の《審獣眼》か。キャサリンとあいつに続いて三人目だな」という言葉がなぜか耳に残った。

さて、主は二時間ほど掛けて店中のジュエルを見て回ったが結果は芳しくなかった。

下は小鬼から上は純竜まで、何千というジュエルに目を通しても主の言う「ピンとくる」モンスターは一体もいなかったのである。

「あらら残念」

「すみませんお手数お掛けしてしまって」

「いいのいいの、お客様に思う存分商品を検分してもらってこそ商売なんだから。しかしこうなるとバザーの方を見て回るしかないかもね」

「そうですね。しかしオーナー殿、バザーで《審獣眼》は……」

「あー、それがバレると<マスター>でも危ないか」

オーナーとルビエラは何事かの相談をしているようだった。

主は二人の相談の事情がわからないので少し蚊帳の外だ。

「……あれ?」

ふと、主があるものに気がつき、同時に私も気づく。

それは店の端にあった。

子供なら入れそうなほど大きな金属製の 甕(かめ) 。

蓋は開いており、蓋は甕の傍に転がっている。

そしてなぜか、“立入禁止”とでも言わんばかりに警告色を塗られた鎖で甕は囲まれている。

そんなにも目立つ取り扱いなのに、どうしてそれまで気づかなかったのか不思議なものだ。

主もそれが気になったのか甕に近づいて、左手で指差す。

「オーナーさん、この甕って」

「かめ? ……ッ!? 離れろ!!」

オーナーの発した声に驚き、主が一歩身を引く。

直後、主の人差し指があった場所を“銀色の何か”が通過した。

「…………!」

見れば、先刻まで張られていた警告鎖が断ち切られている。

その断面は極めて平坦、そのまま切れた部分をくっつければ直るのではないかと錯覚するほどだ。

そして事実、主の指先は浅く薄く切れていたが、撫でると僅かな痕だけ残してくっついてしまった。

戻し切り、という現象だ。

尋常ではなく鋭利な刃物で高速にやらなければこうはならない。

しかしてそれをやった下手人は刃物ではない。

それは液体。

不可思議な光沢の銀色の液体が甕の縁に溜まっており、それはすぐに甕の中へと戻っていった。

あれは、スライム、か?

「ごめんよ。危ないから隔離結界を張っていたんだけど、解けてしまっていたらしい」

「僕は大丈夫ですけど、今の子は?」

主が尋ねると、オーナーは遠巻きから何か魔法を掛けて鎖を直しながら答えた。

「【ミスリル・アームズ・スライム】。金属スライム種の中でもかなりの希少種だ。液体ミスリルで構成された身体を持ち、それを高速で武器に変形させながら攻撃するモンスターだ」

【ミスリル・アームズ・スライム】……私も聞いたことのない種類のモンスターだ。

「オークションで手に入れたのはいいが、テイムされていない個体だったんでね。後で知り合いの【従魔師】に頼んでテイムしようと思ったんだが……その前にうっかり封が解けてしまってこの状態だ」

「この状態?」

「常時臨戦警戒態勢。近づく生物は何であろうとぶった切る危険物。テイムの難易度は跳ね上がっているし、迂闊に動かすこともできない。どうしようもないんで結界で隔離していたってわけさ」

スライムだから疲労とも無縁だしね、とオーナーは続けた。

「倒してしまえば片付けるのは楽なんだが、掛けた金を考えるとそれはいかにも勿体がなくてね」

「おいくらくらいでしょうか?」

「1000とんで25万リル」

……高い。

さっき見た私の同属の値札よりもかなり高い。

「強さはともかく稀少だからね。値が張ったよ」

「あの、オーナーさん」

「なんだい?」

「僕があの子をテイムするので、譲ってもらえませんか?」

その言葉にオーナーも、ルビエラも、【ジュエル】の中の私達も言葉を失う。

唯一普段通りに笑っていたのはバビロン様だけだ。

「その、お支払いは分割になってしまうんですけど」

「さっきも言ったとおり分割払いでも大丈夫だよ。けど、いいのかい?」

さっき指を切り飛ばされそうになった相手なのに、と言外にオーナーは尋ねる。

しかし、主にはさっきまで他の【ジュエル】に対して見せていたような迷いの表情はなかった。

「はい、だって……あの子を見ていたらピンときましたから」

主は笑みを浮かべる。

それは普段の誰かに懐いているときの笑顔でも、私達に向ける微笑でもない。

まるであの金髪の男が【ガルドランダ】に挑んだときのような不敵な笑みだ。

「僕が、あの子をテイムします」

そして繰り返し宣言し……主は希少種【ミスリル・アームズ・スライム】のテイムに挑みはじめた。

To be continued