軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九話 獅子と竜 後編

□Past

決闘でトム・キャットを倒し、王者となってから数週間。

いつも通りに<Infinite Dendrogram>の中で朝を迎えたフィガロは、自身の変化に気がついた。

眠る前の体と目覚めた体がまるで違うものである、と。

それが、体に流れる血の違いだということも。

フィガロのアバターの心臓は、自身の<エンブリオ>であるコル・レオニスに置換されている。

それゆえコル・レオニスに変化が生じれば、自然と流れる血液も変わる。

フィガロがウィンドウで<エンブリオ>についてチェックすれば、自身の<エンブリオ>が第七形態……<超級エンブリオ>へと進化していることにも気がついた。

同時に、それまではなかった第三のスキル――コル・レオニスの必殺スキルが追加されていることも。

そのスキルの詳細を読んだ時、フィガロはひどく納得した。

『そうか。僕のパーソナルと経験からすれば、たしかにこうなっても不思議ではない』、と。

<エンブリオ>は<マスター>のパーソナルや経験に応じて進化していく。

ゆえに、それがどれほど他者から見て危ういものであっても、往々にして<マスター>自身は納得すると言われている。

フィガロの得た必殺スキル、《燃え上がれ、我が魂》も同様だった。

この力はこれまでのフィガロ自身とさえ一線を画すほどに強大であり、決闘との相性も良い。

彼にとって最大の切り札となることは間違いがない。

「……なら、これを決闘で使うべきときは決まっているね」

フィガロは、自分が決闘でこのスキルを解禁するのは『フォルテスラが第二位となり、自分に挑戦してくるとき』だと己に定めた。

最高の好敵手に、そのときこそ自分の全身全霊をぶつけたいと願ったから。

『いつか必ず、フォルテスラは挑んでくる』と確信しながらその日を待って……決闘では一度も使わなかった。

モンスターとの戦いで使ったのも【滅竜王】との戦いのたった一度きり。

己の全身全霊で備えながらフィガロはフォルテスラを待った。

……そうして【グローリア】の事件が起こり、二人が直接戦う日は二度と来なくなった。

◇◆◇

ゆえに……今。

この瞬間にこそ、

この決闘にこそ、

――フィガロは己の力を解禁する。

◇◆◇

□■アルター王国・<ノヴェスト峡谷>

「――《燃え上がれ、我が魂》」

宣言の直後、 獅子の心臓(コル・レオニス) と名付けられた獅子座の恒星の如く、彼の身中の心臓が白熱する。

それは<マスター>であるフィガロ自身の肉を焼き、血を沸騰させ、HPを……HPの 上限(・・) を焼き尽くさんばかりに減少させ続ける。

圧力で破れた皮膚から彼の肉を焼いた白煙と血を思わせる色合いの赤煙が混ざり、立ち昇る。

痛覚を常時オンとしているフィガロはその苦痛を全身で受けているはずだ。

だが、しかしフィガロがその痛みに怯んでスキルを止めることはない。

三〇秒という一回の効果時間を惜しむように、既に動き出している。

「封ッ!!」

フィガロが《瞬間装備》したものは、【影縛針 ボルバラ】という名の伝説級武具のレイピア。

影に似た色合いのレイピアを、フィガロは地に伏した【グローリア】の影に突き立てた。

その瞬間に【影縛針】は装備スキルを発動させる。

《繋留影針》。影を貫くことで、対象の動きを【拘束】するスキル。

<UBM>のスキルとしては特異性が薄く、ジョブの種類によっては近いスキルがあるそれを【グローリア】に対して行使する。

通常のジョブスキルの影縛りならば容易く弾かれる。特典武具であっても力量差で容易く拘束を解かれるだろう。

だが、今このとき、【グローリア】は地に縛り付けられていた。

ありえないほどの強力な影縛りによって【グローリア】が地に繋ぎ止められ、

――代償に【影縛針】が砕け散った。

それこそが《燃え上がれ、我が魂》の効果。

己の血肉を焼くことで、HP上限を秒間一%ずつ削り続け、それはデスペナルティになるまで回復しない。

加えて、装備品のアクティブな装備スキルを使用したとき、特典武具であろうと修復できないレベルで完全破壊される。

二つの莫大なデメリットの対価として――装備スキルの威力を極限まで高めて行使する。

己と武器の生命を一瞬で燃やし……輝かせるスキル、それが《燃え上がれ、我が魂》。

あるいはそれはフィガロ――ヴィンセント・マイヤーズという病身の青年が抱いた命の夢の形。

自身の生命、戦いの末に獲得してきた二八の特典武具、そして戦いに挑む己の魂を……この一瞬に燃え上がらせる。

このスキルは彼の生き様の全てであり――<SUBM>である【グローリア】であっても容易く払い除けられるほど安い力ではない。

『FUUULUUUUUUAAAAAAAAA!!』

敵手が真に自分を打倒しうるほどの力を持っていると理解し、【グローリア】はその全身で一本角の力を励起させる。

身体に生じた傷口から、光のブレスを放とうとする。

だが、その特性をフィガロが知らないはずはない。

それは<バビロニア戦闘団>を含めた数多の<マスター>を壊滅させた攻撃なのだから。

人数に任せて全身を攻撃することは悪手。

一人であっても無闇に傷を作ることは悪手。

ゆえに、フィガロは攻撃する箇所をよく選んでいた。

特定の部位に集中して攻撃することで、傷による全身放射の範囲を制限している。

一つ目の傷は、既にブレスを放つ顎がある一本角の首。発射口が増えても大差のない首の前面。

二つ目の傷は、フォルテスラによって翼を失くした自重を支えるために両手ほど自由には動かせない後肢。

どちらも「攻撃箇所を増やすことで隙をなくす」という能力を活かせない部位だ。

攻撃範囲の限定された二箇所からのブレスを、フィガロは半ば本能で避けきっていた。

彼の本能の最善手の前に、既に晒した手札しかない【グローリア】では抗しきれない。

少なくとも、今のブレスではフィガロを破れない。

「■■――!」

打つ手をなくした【グローリア】に対し、フィガロは王手を打ちにかかる。

《フィジカル・バーサーク》を起動させ、左手に拳甲、右手に短槍を装備し、地に縛られた一本角の頭部へと攻撃を仕掛ける。

数十秒の影縛り。

致命となり得る一度きりの最強撃。

フィガロに残る二三の特典武具。

それは【グローリア】にとって、一本角の首だけでなく……三本の首を殺し尽くすことすら可能ではないかと思わせるほどの脅威だった。

この瞬間に、自身と相手の勝率が逆転していることを。

この戦いの後に、敗れているのが己である可能性の高さを。

【グローリア】は認めた。

『――――』

その認識の瞬間に、【グローリア】の内側で枷が外れる。

【グローリア】は管理AIによって自身に課されていた制限の一つを自力で廃し、

――自分自身で管理AIにすら 隠していた力(・・・・・・) を解禁する。

『LUUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

一本角の首がこれまでと比べ物にならないほどの叫び声を上げる。

同時に【グローリア】の全身が、その身を覆う黄金の鱗の全てが―― 発光(・・) する。

「――」

その瞬間に、フィガロは回避行動をとっていた。

相手に致命打を与えられる瞬間に自身の安全を優先した、のではない。

このまま進めば自分だけが死ぬと、本能が察していた。

それは正しく、彼が寸前までいた空間を――輝く【グローリア】の腕が 超音速(・・・) で通過した。

先刻までとは比べ物にならないほどの速度。

それは管理AIの課していた速度制限が外れていることを意味している。

そしてそれ以上に、輝く鱗――光のブレスと同質の光を全身に纏う【グローリア】が脅威だった。

「……それが、切り札か」

然り。その姿こそは、【グローリア】第一の首の最終兵器。

名を――《 極竜光牙剣(ファング・オブ・グローリア) 》。

全身を守護する絶対の鎧であり、触れるもの全てを消滅させる最強の剣。

「自身にブレスが効かないことは知っていたけれど……そういう使い方もするのか」

クレーミルの戦闘での光の乱舞の中で【グローリア】自身も発射口から放たれた光を浴びていたが、全くダメージを受けていなかった。

多くの者……フィガロですら、それは全身を覆う鱗があのブレスへの完全耐性を備えているからではないかと考えていた。

しかし、正解は異なる。

【グローリア】の鱗こそが、光のブレスの力を最大限に活かすためのものだった。

全身を覆う鱗に、光のブレスを伝導させている。

『FLUWOOOOOOOOO!!』

攻防必殺の全身発光、【グローリア】にとって最大の攻撃手段。

この力は、管理AIですら把握していなかったもの。

常識で考えれば討伐すら不可能になるその切り札を、制限が外れた本来の神話級ステータスで【グローリア】が振るう。

一日を費やした再生によって、既に喪失した翼や尾の傷口までも鱗で覆いつくしている。

この戦いの最中にできた傷からは、今もブレスを放出し続けている。

さらに瞼までも閉じて急所への攻撃を防ぎ、《絶死結界》に感じる気配だけで敵を追う。

ゆえに……一分の隙もない。

今の【グローリア】こそが、紛れもなく最強の【グローリア】。

あるいは事前にこの力を知っていれば、管理AIですら投下を躊躇ったかもしれないほどの、最強のモンスター。

それを前にしてフィガロは、

「体が地に着いていない。翼がなくても、僅かに浮くくらいは出来るのか」

ただ冷静に、そんな分析をしていた。

超音速の攻撃を回避しながら、ひたすらに【グローリア】を観察して、勝機を狙っている。

そう、絶望的な【グローリア】が更に力を増したが、フィガロの目は決して怯えていなかったし、心も折れていなかった。

常人ならばとうに諦めているであろうこの瞬間にも、彼は冷静に勝ち方を考えていた。

まだ自分は【グローリア】を倒せると、確信していた。

それには幾つか理由があるが、最も大きい理由は【グローリア】が動き出した瞬間に 見たもの(・・・・) だ。

全身が発光してフィガロを攻撃する直前まで、【グローリア】は確かに【拘束】されていた。

それが《繋留影針》の【拘束】を解いて動いたのは、【グローリア】自身が発光体と化したことで…… 影が消えたから(・・・・・・・) だ。

パワーアップしたからといって、他の特典武具の効果を無視したわけではない。

因果関係があっての突破であり、逆に言えばまだ世界の法則に囚われた存在である証左。

理不尽な怪物ではあるが、無敵の怪物ではない。

(相手の攻性防御を突破してダメージを与えられる特典武具は……ない。空間をワープして相手の体内に直接攻撃できる特典武具でもあれば、話は早いのだけど)

回避しながら、フィガロは既に殆どの装備を外している。致命を避ける【救命のブローチ】すら、全身を必殺の光に包まれた【グローリア】相手では大きな意味を成さないと外している。

装備数反比例強化である《武の選定》によって、パッシブのAGI強化を持つ武具の性能を引き上げて回避に専念している。

加えて、体感時間ではなく現実時間では数分と経っていないが、その分だけ《生命の舞踏》の効果も強まっている。

それもあって【グローリア】が超音速機動を始めても、フィガロはまだ速度優位を保っていた。

(二度目の《燃え上がれ、我が魂》も解けて、使えるのはあと一度。それもHP残量を考えれば、効果の途中でデスペナルティだ。……あれが周囲にも熱を放つ光でなくて良かった、かな)

【グローリア】の光は、光の中でしか熱を持たない。

そうでなければ、周囲に伝わる熱によるダメージでフィガロは既に息絶えていただろう。

だが、相手の光に触れていなくとも《燃え上がれ、我が魂》の反動は大きい。

既に六割が焼かれたHPに加え、副次的に生じた傷口からの傷痍系状態異常がフィガロのHPを減らし続ける。

通常ならば使用する状態異常耐性や回復系のアクセサリーも、今はステータスを優先して装備していない。

ゆえに、このまま僅かに時が経てばフィガロがデスペナルティとなるは明らかであり、フィガロに残された攻撃のチャンスは決して多くはなかった。

(あと数度の攻撃で……あの一本角の首を落とさないと)

それは《極竜光牙剣》さえなければ、可能であっただろう。

だが、今の光の防御は完璧だ。

今のグローリアには文字通り一分の隙も――

「――――」

―― あった(・・・) 。

ただの一点。

しかし、絶対の防御にして最強の攻撃の中に……隙がある。

「フォルテスラ……」

ただ一言、友の名を呼んで……フィガロは最後の攻撃を決意した。

そうして、目指すべき一点を見据える。

『FLUUUOOAAAAAA!!』

《絶死結界》越しにフィガロの決意を感じたのか、【グローリア】もまた吼える。

どちらもが既に知っていた。

これから起こる超音速の交錯こそが、獅子と竜の戦いの終焉である、と。

終わり、極まる、その一瞬に、

「――往こう」

フィガロは……新たな武具を纏う。

その武具の名は――【絶界布 クローザー】。

彼が討伐した、最初の<UBM>の特典武具。

絶対の守りを有するそれを取り出した理由は光への防御―― ではない(・・・・) 。

彼は、この戦いで身を守るために力を使うつもりはなかった。

この決戦に、彼が使うスキルは、

「――《断命絶界陣》」

かつて己が戦った最初の強敵の最終奥義。

宙に浮かぶは盾にして、矛である無数の結界刃。

そして、彼が空中を駆けるための―― 足場(・・) 。

「――――!!」

瞬間、フィガロは刃の道を疾走する。

かつてそうしたように、刃の腹を己の足で蹴り立てて、敵手の首目掛けて駆け抜ける。

光に包まれた【グローリア】の首を狙うならば、空に足場をかけるまで。そう言わんばかりに、彼は空中を、刃の道を駆け抜ける。

空中を自由自在に、上下の区別すらもなく駆け抜ける。

その速度は、今の【グローリア】のステータスをもってしても目で追うことができない。

それでも、敵手が来ることだけは【グローリア】にも理解できた。

『…………GUUAAAAAAAAAA!!』

ゆえに、その行動は必然。

超音速の動作で、最強の光を纏って、全てを巻き込むのみ。

それ自体が光の嵐と化した【グローリア】に触れた結界刃は、蒸発しながら数を減らしていく。

『FLUUUUUSSHEEEAAAAAAA!!』

【グローリア】の思考を人の言葉にすれば、こうなるだろう。

――奴の行動は元より終着点のない疾走

――どこへ駆けようともこの体には一分の隙もなく

――何者であろうと破れない

――故に、このまま道を消していけば

――最後には宙から帰る術すらも失くし、屠られるのみ

それは誤りではない。

誰よりも自身の力を理解し、相対している敵の力も把握した【グローリア】の結論。

そうであるならばやはりなんの間違いもなく、一分の隙もない。

フィガロと【グローリア】の戦いに、フィガロの勝利の目は存在しない。

だが、それは――二人だけで世界が完結していればの話だ。

「――今」

それはまるで飛んで火にいる夏の虫、という言葉のように。

フィガロは輝く【グローリア】へと踏み込んだ瞬間。

【グローリア】がフィガロの蒸発を確信した瞬間。

その決着の瞬間に、

フィガロは――発光する一本角の頭部に 着地した(・・・・) 。

『――――?』

【グローリア】にはきっと、理解できていなかった。

なぜ、そんなことが起きているのかを、理解できていなかった。

なぜなら、彼には見えていない。

三本の首は全て目を閉じていたから。

見えるはずもない。

気づけるはずもない。

自らの展開した《極竜光牙剣》に、一分の隙があるなどと。

一本角の頭部に―― 鱗で覆われていない(・・・・・・・・・) 部分があるなどと。

今フィガロが立つその場所だけは、光を放つ鱗がない。

それは、【グローリア】の右目があった場所。

【剣王】フォルテスラが自らの力の全てで攻撃し続け、

――放たれたブレスで 神話級金属(ヒヒイロカネ) の大剣が融解した場所である。

【グローリア】のブレスであっても、神話級金属は蒸発させられず、融解が限界だった。

そうして融解した神話級金属が傷口の上で冷えて固まり、傷口を塞ぎ、 瘡蓋(・・) となってその部分だけは鱗が再生しなかった。

超高熱でありながら熱を光の外に漏らさない。【グローリア】の光の性質ゆえに、光の当たらない場所にあった瘡蓋が溶けることもない。

そう、【剣王】フォルテスラが最後の瞬間まで護ろうとして抗った証こそが――最強の光に生じた一分の隙だった。

【グローリア】とフィガロだけの戦いであったのならば、【グローリア】は勝利していただろう。

だが結局、これはそうではなかったのだ。

元よりこれは……フィガロとフォルテスラの決闘だったから。

「――――《 燃え上がれ、我が魂(コル・レオニス) 》」

フィガロは三度目の……最後の必殺スキルと共に、最後の《瞬間装備》を使用する。

左手に振動する拳甲、古代伝説級武具【震慟拳 ブル・ラメント】。

そして、右手に虚空の如き闇を込めた短槍――神話級武具【滅竜槍 ドラグフィン】。

己の誇る最強の武器を、フィガロは装備していた。

『――――F』

一秒に満たぬ間隙に、【グローリア】は頭上のフィガロを払おうとしたのか、落とそうとしたのか。

しかし――既に決している。

「――《ラメント・クラッシュ》」

振り下ろされた【震慟拳】が神話級金属の足場を――頭部ごと超振動の拳で粉砕する。

神話級金属が塵にまで粉砕されるのと同時に、一本角の頭部も上顎と脳髄が完全に吹き飛ぶ。

それでも、まだ【グローリア】の全身は光を纏い、

「――《 終末の涙(ドラグフィン) 》」

――フィガロもまた、攻撃を緩めることも、神話級武具を惜しむこともなかった。

上顎を失った頭部に向けて放たれた【滅竜槍】は、【グローリア】の喉へと落ち――一本角の首の全ての細胞を汚染する。

自滅因子(アポトーシス) と呼ばれる生体の仕組みを、強制的に発動させる【滅竜王 ドラグフィン】の力の具現。

完全破壊と引き換えに放たれたその滅びは、【グローリア】をも瞬く間に汚染する。

『――GUU』

ゆえに、 三本角(・・・) の首の判断は早かった。

汚染が体に広がる前に、自ら一本角の首を引き千切った。他の体までも汚染されないために。

逆に言えば、既に一本角は手遅れだった。

一本角の首は崩れ去り――言葉一つ遺すことなく光へと変わって消失していった。

◇◆

そうして【グローリア】は己の首を、最大の武器である《終極》と《極竜光牙剣》を喪失した。

だが同時に、フィガロもスキルの反動でHPが燃え尽きようとしている。

一本角の首と、フィガロは刺し違えたのだ。

「フォルテスラ……」

その決着は同時に、ある二人の決闘ランカーの……決着でもある。

けれど、

「……これは、どちらの勝ちになるのかな?」

一本角の首を討伐したのはフィガロ。

けれど、そのためのデータも、最後の勝機も、与えてくれたのはフォルテスラだった。

「これを僕だけの戦績とは、言えないよ……」

ゆえに、このタイムアタックは勝者なき 無効試合(ノーコンテスト) 。

そして……。

「もう一度……決闘をしよう」

二人の約束の決闘はここではないと、フィガロは言う。

「いつの日か、またいつの日か……君がこの世界に戻ってくるその時に、……本当の決闘をしよう」

そんな日がいつか来ることを願うフィガロのアバターも、光の塵へと変わっていく。

《燃え上がれ、我が魂》が彼のHPを焼き尽くしていたから。

フィガロもまた、光となって消えていく。

ただ、その消滅の間際に、フィガロの視線は<峡谷>の外を見ていた。

そこにいる誰かを……自分の決闘を見守ってくれた人物を想う。

「僕はここまで。だから、後は……君に任せるよ、シュウ」

もう一人の親友に戦いの行方を託して……【超闘士】フィガロは【三極竜 グローリア】との戦いから退場した。

To be continued