作品タイトル不明
ユウの生態観察レポート【オリウル・バタベア】
今日もお料理からにしようかな。
……と、その前に、探索で拾ってきてしまった「これはキッチンに置いちゃダメなやつ」をどうすればいいかシーちゃんに聞いてみよう。
「採取したやつは、どうすればいい?」
「これらの採取品はリサイクル処理を行います。Cにお任せしていただければ、リサイクル処理の後に同等の物と交換を行うことが可能です」
「腐ったミルクを渡したらミルクをもらえる、みたいな?」
「はい、その認識で問題ございません。お渡しするのは明日の朝になりますが」
よ、よかった〜!
正直、あの腐ったミルクとか、芽が出すぎて自己主張を始めているジャガイモとか、キッチンには置いておきたくなかったし、こうやってリサイクルされるなら採取してきたのも無駄にならないからありがたい。
明日はちゃんと畑を拡張しよう。探索に出てみて、あらためてそう思った。野菜は拾うものじゃなくて、育てるものだからね。
さて、まず夜時間なので料理からだ。
ショップの価格と、納品で手に入れたお金を見比べながら、頭の中で簡単な計算をする。
ジャガイモとニンジンは確実に買えるし、卵とかもいける。手持ちの食材だけだと……微妙なんだよね。
「オリーブの塩漬けと、卵一個買ってゆで卵にしてみよう」
そのうち、ちゃんとした食事として何品か毎回食べられるようになれればいいな。
それから、明日の朝イチで食材ガチャだけ回しに行こう。
チュートリアル報酬で食券もそこそこ溜まっているし、ちょうどいいだろう。今のところモンスターの卵が当たっても困るだけだから、食材と卵の混合ガチャはやらない。
三日目、か。
明日の夕方にはフィッシュサトウの卵も孵るのだろうか。
……うーん、考えるのはやめよう! 生まれて来たらそのときはそのときだ。はじめてのガチャ産モンスターに向き合うのは、ちゃんと生まれて来てからにしようね! 決して現実逃避ではないよ!
さて料理の操作は簡単で、指定して放り込むだけだ。オリーブと塩。卵と水を選択して二回やってから出来上がった料理を眺める。
できあがった料理を二皿に分けて、今日もひとつをシーちゃんに差し出してみた。
「業務中ですので、お受け取りしかねます」
……ですよね。
ラップをして取っておき、自分の分を食べる。
素朴だけど、ちゃんと美味しくできている。
卵に関しては調べると農場の広告がずらっと並んでいた。スポンサーが多い。こうやってちゃんと産地を確認することって、そういえばリアルだとあんまりないな……今度からは少し注目してみようか。
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【オリーブの塩漬け】
カリカリとしたオリーブに塩のうまみが染み込んだ素朴な一品。
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【ゆで卵】
良質な卵を茹でた素朴な料理。
つるっとした表面にほんの少し塩をつけて食べるだけで楽しめる一品。マヨネーズ派も存在する。
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頑なに料理を受け取ってくれないシーちゃんにはソファに座ってもらい、ベッド脇でレポートの準備をする。
「すぐレポート書いて寝るから、ちょっと待っててね」
返事はないけれど、それでも一緒の空間にいてくれるのが嬉しかった。
窓から夜のガーデンを眺めながら、図鑑を開く。
まずはオリウルからだ。
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【公式生態観察】
オリウルは、索敵および警戒行動に特化した油脂系モンスターである。
周囲の気配に敏感で、危険度の高い存在を察知すると警告音を発する。
直接戦闘は行わず、攪乱や誘導によって脅威を遠ざける行動を取る。
探索補助能力に優れる一方、ガーデンの防衛力が低下しないよう配置には注意が必要である。
慎重な運用により、安全性を大きく高めることができる。
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さて、いつもの通りに私好みのレポートを書いてみよう。なるべくヒントを盛り込むようにしてっと。
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【オリウルの生態レポート 観測者:ユウ】
このフクロウは気配に聡くてとても神経質で、オリーブの木の上でいつも周囲の気配を探っている。
一見して気位が高いように見えるけど、好物をもらったらすぐ態度を柔らかくして守ってくれようとするので案外チョロいのかも?
オイルの垂れた翼で水浴びをするのが好きなので、オリウルが遊んだあとのモンスターの水飲み場はすぐに片付けてあげよう。
他の子が迷惑そうな顔で見てきてもいいなら放置してもいいけど、掃除は早めにね。
処理できるなら舐め取るのでもいいけど、お腹を壊しても知らないよ。
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よし、次はバタベアだ。
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【公式生態観察】
バタベアは、力仕事と生産補助を得意とする大型の乳製品系モンスターである。
硬い地形の整備や瓦礫の除去を行い、農地の生産効率を高める行動が多く観測されている。
甘い香りを好み、同系統のモンスターがいる環境に定着しやすい。
体表は半流動的だが、生産されるバターの品質は安定している。
初心者のガーデン運営を支える存在として位置づけられる。
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そして、私の番。
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【バタベアの生態レポート 観測者:ユウ】
濃厚なバターの香りが遠くからでも分かるバタベアは、頭から溶けたバターを被っているような不思議な模様をしている。
彼は甘い香りが好きだから、同じスイーツの分類の子達がいる住処を選んでのんびりお昼寝するのが好きらしい。溶けて広がってクマの絨毯みたいになっててもバターの体が溶けてだらけてるだけだから気にしないで。夜になれば元に戻るから!
バタベアはときおり回転する遊具を使って原材料を元にバターを作ってくれる。本人は溶けてるけど、出来るバターはなぜかちゃんと四角いのは学会でも解けない謎のひとつ。本人は溶けてるのにね。
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今日見た生態行動を参考にしつつ、ちょっと面白い感じでまとめてみた。軽くヒントも散りばめられたと思う。これなら、図鑑を見た人たちも回転遊具を置いたりするのを試してくれるかなあ、なんて考える。
シーちゃんから提案があるから、ほとんどの人はやってるとは思うけど、後回しにしちゃったらガーデンアイテムが住民化条件に関わるなんて思いつきにくいだろう。
ま、そもそもこんな序盤にユーザーの図鑑見るような奇特な人がいるとは思えないけど……私? 私はいいんだよ。ゲーム中でも何度も開いて誰か投稿してないかなと確認しているが、いまだ同士は現れない。ぐぬぬう。
ぐでーっとなって絨毯と化しているバタベアのスケッチや、オリーブの木の上に乗っているオリウルのスケッチを一緒に載せて、投稿!
よーし、満足。
やることが終わったので窓からガーデンを眺めてみる。
夜は干渉できないけれどそれでも見ていて楽しいから、しばらく見てから寝ることにしよう。
ワームースが半分埋まって寝ていたり、
バタベアが絨毯になっていたり。
オリウルが木のてっぺんでうつらうつらしてたり。
ワルフルたちが群れで丸まって眠っていたり。
……おや?
「あっ」
ワルフルの防衛、オフのままじゃね?
慌てて操作しようとするが、夜間は干渉不可である。
「あー! お客様困ります! お客様ー! あー! やめて! 荒らさないで! お客様ー!!」
つまり、野生のバタベアや、見覚えのないクマ型モンスターがずかずかとガーデンを汚染しながら横切っていくのを、ただ見ていることしかできなかった。
翌朝。
踏み荒らされた四十タイル分くらいを前に、私はスコップを握りしめる。
……もう一回、頑張ろう。