軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

はじめてのガチャ

食堂は、空中都市のランドマークである。

外観は大きなドーム状になっていて、壁は半透明の素材らしく、外の光をやわらかく取り込んでいる。

天井は高く、ところどころに吊り下げられた照明が昼下がりみたいな色で空間を照らしていた。

……と、現実逃避しても仕方ない。なんとかやたらと親近感というか、身近な感じがする券売機に並ぶ。番号札を取るまでは列に並ぶ必要があるらしい。

食券を投入すればすぐに番号札は出てくるので、並ぶのはそう長くないのだけれど。

ただ、番号札兼、レシートとなっているものを真剣に見つめてその場で一喜一憂する人も当然いるため多少列の流れが悪くなることもあった。あんまりガチャ結果が察せられるような反応はしないほうがいいと思うんだけどな……ガチャ結果の悪かった人とかに絡まれる可能性があるわけだし。

「もうちょっとかな」

列の流れに沿って歩く。

並んでいる間に眺めていると、引き換えカウンターに番号札がピンポーンと呼ばれるのもそう長い時間ではないらしい。

もはやBGMなのかと思うくらいしきりに聞こえてきているくらいだ。どれだけの人がガチャをまわしにきているんだろうと呆れる。まあ私もそのうちの一人なんだけども。

チラッと食堂内の人たちを観察していると、普通に長椅子に座って食事をしている人もいるし、カウンターでアイテムを引き換えている人もいる。あと、変わり種だとプレイヤー同士でアイテム交換をしているらしき人たちもいた。

ネット上でのやり取りなら私もフレンドとかを作ったりできるが、こうしてVR上だと難しいかなあ。トラブルとか怖いし。

「トレードできるの?」

「はい、食堂では料理の提供による休憩や、アイテムの補給。そしてガーデンテイマー同士の取引が行えます」

やっぱり私には縁のない話だったかも。

「取引の内容は?」

「汎用アイテムの交換や、未発見の図鑑情報の一項目ずつの情報交換などです。治安維持のため、モンスターの卵の交換をすることはできません」

「……! 図鑑情報の交換もできるの!?」

「はい、相手様の知らない情報を交換することが可能です。一日一回と制限はございますが、金銭での情報売買も可能です」

「金銭……なるほど、相手の情報を全て知っている状態でも、情報を渡してあげることのできる機会があるんだ」

「はい。治安維持のため、制限させていただいておりますが、ガーデンテイマー同士の交流は推奨されています」

先輩プレイヤーから初心者プレイヤーに対して教えてあげる〜みたいなことができるってことだよね。

でもこういうのって外の掲示板とかでやり取りされちゃうと防げないと思うんだけど、そこはどうなんだろう。みんなの知らない情報を知っていて、レアなモンスターをすでに住民化している場合とか、絶対自慢する人がいると思うけど。

……私には関係ないか。

「料理はどんな効果?」

「ご自身で開発していない料理であれば、何度か同じ料理を食べることで確率でレシピを閃くことが可能です。ガーデンの拠点では所持しているアイテムから自動で『現在作成できそうな料理』が開発として選べますが、複雑な料理などはレシピを先に取得することで安定した品質のものが作成できるようになります」

「つまり、レシピがないと品質が安定しなかったり、料理が失敗したりする?」

「その通りです」

レシピを取るために食堂通いするだけなら、視野に入れてもいいかなあ。

料理開発がどんなものか分からないけど、持ってる食材で料理を閃く的な要素になってるなら、食材が揃っていないとレシピは出てこないわけで。

でも、こうして食堂でレシピを手に入れることができれば、そのレシピに必要な食材が分かるようになるってことだよね。

それくらいならしてもいいかなあ……食堂通いか。どんなメニューがあるのか今から楽しみだ。あとで覗いてから帰ろう。

順番が来たので、食券を指で挟みながら機械の前に立った。受付番号とレシートの出るガチャの機械は衝立があって、周囲からはちゃんと見られないようになっている。

これも治安維持のためだろう。VRでガチャ要素があると揉めるからね。

「……よし」

小さく息を吐く。

さっさとやっちゃおう。はじめてのガチャはやっぱり緊張するけど……って、これってもしかしてチュートリアルガチャなのかな。

ガチャのある最近のゲームだと、チュートリアルガチャの引き直しのためにリセットして最初からを繰り返す人が多いんだろうけど、これだけチュートリアルガチャまで長いとリセマラするとしたら大変だなあ……。

食券を機械に投入。

すぐに出てきたレシートを受け取ってガチャの前からどいて次に譲る。そしてレシートを見ると……なんと、レシートが金色だった。ガチャ演出は特になくてレシートがレアリティで光るって、こと!?

ええと、結果は……。

――――――

食品券でのお買い上げ誠にありがとうございます!

以下の商品が引換できます。

番号を呼ばれ次第、このレシートをカウンターまでお持ちください。

受付番号 No.521

1.玉ねぎ【N】

2.白米【R】

3.トマト【R】

4.卵【R】

5.ミルク【R】

6.小麦粉【R】

7.フィッシュサトウの卵【SR】

8.にんじん【N】

9.じゃがいも【N】

10.塩【N】

おっ、白米がある! 卵もあるし、かなり食品としてはいい結果なんじゃ……なに? なんか変なのが見えた気がする。

フィッシュサトウの卵。

気のせいかな。

目をゴシゴシしてもう一度よくレシートをよく見る。

>>フィッシュサトウの卵<<

見間違いじゃなかった!?

「あ、当たり……?」

「おめでとうございます」

いやそれよりも。

「なに!?!?!?」

突然現れた意味不明なネーミングに私の思考は停止した。