軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

でも良く言えました

一度王都に戻ろうと考えているのだけれど、ノイエが動いてくれない。

ずっとベッドの上に居て……アホ毛をヘニャッとさせている。

見てて怖いから宝玉はリスに抱えさせている。新規の宝玉はポーラが回収したそうだ。

つまりまたあのスライムが……その様子を見れなかったのは幸運だと思おう。

僕も頭を怪我しているし、何となく体が怠いままだからノイエと一緒にベッドで休むことをチョイスする。王都からはまだドラゴンの来襲を告げる笛は鳴らないし、鳴った所でノイエがこれだから難しそうだ。

「んっ」

「ノイエ?」

アホ毛をクルっと回して、ベッドの上で両膝を抱いていたノイエが起き上がる。

スッと歩いて床へ降りると、窓越しに外の様子を見つめだした。

何かあったのかと僕もベッドを降りてノイエの背後から抱きついて肩越しに窓の外を見る。

屋敷に向かい馬車が来る。荷馬車かな?

「行く」

「はい?」

チュッとノイエが僕の頬にキスして手を掴んできた。

「泣いてるから」

「はい?」

良く分からないがノイエが僕の手を引くからそれに従った。

「何だい。2人そろって出迎えかい?」

「……」

出迎えの形になった僕らに対し、包帯だらけのオーガさんが声をかけて来た。

傍目で分かるほどボロボロで、その顔には疲労の色が濃く浮かんでいる。

「お帰りオーガさん」

「はんっ……何だその顔は? これか? ちょっと無理して回復が追い付かないだけだよ」

「そうっすか」

何処か強がりに聞こえるオーガさんの言葉に僕は苦笑した。

実際は強がりなのだろう。虚勢を張って居るんだろう。

ノイエが軽い足取りでオーガさんの横へと移動した。

「何だい小娘?」

訝しむ彼女はノイエに警戒する素振りを見せる。

普段問答無用で襲い掛かっている仕返しでも恐れたのだろうか?

ノイエはそんなことはしない。何故なら襲われた事実を襲われた瞬間から忘れていくからだ。

ならどうして……そう思い見つめている僕の視線の前で、ノイエはその手を動かした。

「もう大丈夫」

良し良しとノイエはオーガさんの頭を撫でる。

何処か子供にでもするような感じで、ただ良し良しと撫でている。

「子ども扱いするなっ!」

激昂したオーガさんが腕を振るって顔を顰めた。

余程怪我が酷いらしい。化け物じみた回復能力は何処に行ったんだ?

「大丈夫」

「小娘っ!」

オーガさんの肩に乗ってしゃがんだノイエがまた頭を撫でる。

噛みついてくる相手の口を回避し、今度は背中に回ってまた頭を撫でる。

何がしたいのですか? 我がお嫁さんよ?

頭を撫でる。それを振り払う……そんな2人の攻防がしばらく続き、燃え尽きたのかオーガさんが荷車の上で突っ伏して動かなくなった。

それでもまだノイエがしゃがんでうつ伏せに伏しているオーガさんの頭を撫で続けている。

「大丈夫」

「もう……何がしたい?」

どうにか顔だけ起こしてオーガさんが怒りを忘れて呆れ果てている。

気持ちは分かるがこっちに助けを求める視線を向けられても困る。ノイエの暴走は暴走だから止めようがない。自ら止まってくれるまで放置するしか手段がない。

「全く……頭を撫でてくる来なら牛でも捕まえてきて丸焼きにして欲しいんだけどね」

撫でてくるノイエに呆れ果て、オーガさんが僕にそうリクエストして来る。

「お腹空いてるの?」

「ああ。もうずっと減ったままだよ」

「そうっすか。なら牛か豚でも」

メイドさんたちに発注しようとしたら傍にはポーラしかいない。

そして何故か『任せてください』とばかりにギュッと拳を作っている。

君は牛を捕まえてくるのですか? この世界の豚はイノシシ寄りの凶暴な奴だよね? それをどうにか出来るの?

全力で走って行ったポーラの小さな背中がどんどんと小さく……お兄ちゃん。そろそろ自分の妹の方向性が理解できなくなりつつあります。

「ご飯……食べたら何するの?」

「あん?」

妹の暴走気味の成長を見つめていたら、『大丈夫』以外の言葉をようやくノイエが発した。

応じたオーガさんがニヤリと笑う。その笑みは良くないことを考えているな?

「決まっているだろう? 帝都に乗り込んで皆殺しだ。だからそこの王子の許可を」

「喧嘩はダメ」

「……」

抑揚のない声だけれど、ノイエが発した言葉には何か逆らえない雰囲気があった。

「喧嘩じゃない。これは復讐だよ」

けれどオーガさんはどす黒い雰囲気の声を発し来る。

呆れていた表情は消え、彼女は怒りでその顔を歪ませていた。

「帝国を亡ぼす。それをアタシは誓ったんだ」

それをするしかないと言いたげなオーガさんの様子に、ノイエは何処か寂しげな様子を見せる。

「喧嘩はダメ」

「だからこれはっ!」

噛みつくオーガさんに立ち上がったノイエは彼女を見下ろす。

「早く帰ってれば」

「……」

クルっと相手に背を向けノイエが荷車から降りる。

スッと歩いて来て僕の手を取ると、

「お前……スーを知っているのか?」

「知らない」

足を止めて呼びかけて来たオーガさんに振り返る。

「でも泣いてる」

「……何が?」

真っすぐノイエはオーガさんに右手の指を向ける。と、左手は自分の胸に添える。

「ここで泣いてる。貴女のここが泣いてる」

「……」

「だから今はダメ。早く帰って」

言って首を傾げるノイエは自分の言葉を理解していない。

たぶん思いのままを口にしている感じだ。はた迷惑ちゃんである。

ノイエが僕の手を取り屋敷に戻ろうと引っ張って来る。

逆らわずに歩きだすと……ポツリとその声が聞こえて来た。『もう間に合わないんだよ』と。

誰に対しての何に対しての言葉かは知らない。

けれどオーガさんにとっては大切な記憶なのかもしれない。

「ノイエ」

「はい」

「……今日は言い過ぎ」

「むう」

「でも良く言えました」

足を動かし横に並ぶと、僕は彼女の頭を抱くようにしてそっと額にキスした。

アホ毛を振りっと揺らしたノイエは……真っすぐ僕らが借りている部屋へと向かい、らめぇ~! ノイエさんっ! いきなりその気にならないでっ!

肉食を思い出したノイエさんが襲い掛かって来て、僕はそのまま食われ続けました。

ちなみにポーラは牛1頭とイノシシ2頭を捕まえてきて、僕を貪り尽くしたノイエさんがアホ毛をフリフリさせながらオーガさんとのフードバトルに辛勝していた。

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