軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

彼女はどうしてあのような嘘を?

スッと動いたポーラが、スィーク叔母様の椅子を準備し窓際に移動して気配を消す。

本当に良く出来た妹だ。ポーラよ……お兄ちゃんはお前を妹に出来たことを感謝します。

神様はどこぞの魔女が滅ぼしたらしいから祈る相手に困るけれど。

「それでアルグスタ様。どうしてわたくしを?」

「ええ。スィーク叔母様にも関係することなので」

「……そうですか」

メイドから貴族の夫人と化した叔母様が静かな目を向けて来る。

「ではまずここだけの話ですが……という前置きから始めて良いですか?」

「好きにするが良い」

代表として陛下の許可を得たので言葉を続ける。

「あの日にあの騒ぎを引き起こした首謀者はグローディアです。これは本人の口から聞いた事実なので嘘や冗談ではありません。それと叔母様。昨日の3人は?」

「ええ。ちょっとナイフを突き入れて脅したら全てを話して下さいました。

何でも『司祭』と名乗る者から『あの日の出来事を引き起こしたのは王家に名を連ねる者』とそう告げられたそうです」

ナイフって突き入れたらヤバいんじゃないの? 場所に寄りけりですか?

何処なら安全に入れて脅すことが出来るのか……想像したらお尻がキュッとなりました。

やはりあの『司祭』とか名乗る半竜半人たちが暗躍しているっぽいな。

それとも前に姿を現しフレアさんをあれした三下か?

「その噂が広がるのを封じるために、昨日スィークは動いたのか?」

「ええ。グローディアからの指示でもありましたが……それが正しいと判断し自分の独断で実行しました」

「良い」

頭を下げようとする叔母様を制し、お兄様が隣に座る弟に目を向ける。

「適当な罪を背負わせ彼らを廃することは可能か?」

「あの3人か……まあ出来なくは無いな」

「平気です。ついでに自身が行っている悪事も吐かせてありますので」

「手際が良いな?」

「ええ。ちょっとナイフを捩じるように出し入れしたら、涙ながらに白状してくれましたので。後で押収した資料を渡しましょう」

「で、あるか」

何故か3人が納得して頷き合う。こうして悪がまた潰えた。

と言うか、どこにナイフを出し入れしたの? ねえ? そしてどうしてウチのポーラは『頑張ります』的な表情を浮かべて両手を硬く握りしめているの? ねえ?

ダメ~! メイド長は特別な修行を受けてる人だから! 見習ったらダメ~!

「つまりその司祭が言いふらしているようにグローディアはあの日を引き起こした。確か『異世界から異質なものを呼んだ』とか言っていたな?」

「はい」

話を進めるお兄様に便乗する。

「異世界召喚を行い、どうやら魔竜とか呼ばれるものを召喚したようです」

「その魔竜とは?」

「申し訳ありません。情報が少なく正体までは全く」

仲間になれと脅迫して来るあのへっぽこ賢者も魔竜の正体は知らない様子だし。

「で、アルグ?」

「はい?」

「何であの姉はそんなのを呼んだんだ?」

もっともな質問である。

ただ馬鹿兄貴も義母さんには甘いからな……ウチはマザコン率が高いのか?

「ラインリア義母さんの体を元に戻し、その命を救うためですよ」

「「「……」」」

その言葉を受けて3人が沈黙する。ちなみにノイエはずっと沈黙したままだ。

本人なのか別の誰かが振りをしているのかは分からないけれど、とにかく静かだ。

「グローディアは義母さんがドラゴンに襲われ大怪我を負ったその日から、彼女の傷を癒す方法を魔法に求めたんです。けれど魔法では治療が出来ない……それは有名な話なので全員知っていると思いますが」

あのキルイーツ先生が挑み続けて挫折した魔法だ。

リグという一部成功した例もあるけれど、あくまで一部だ。

何よりリグの魔法でも義母さんは救えなかっただろう。

「だからグローディアはあの日、異世界召喚を行いました。

ただ彼女は……あんな出来事が起こるとは想像していなかったようです」

「少し良いですか。アルグスタ」

「何でしょうか? 叔母様」

話の区切りに叔母様が口を挟んで来た。

「ならばあの日……ラインリア様があのような姿になったのは?」

「異世界から召喚した魔竜の力だと思います」

「なら……カミューが施した呪いでは無いのですね?」

「はい」

断言する。

義母さんがあんな姿になったのはグローディアが呼び出した魔竜のせいだと思う。だから半竜半人の容姿が理解出来る。

何よりあのカミューが呪いとかあり得ない。

あれはそんな手を使わず直接殴って殺す類の暴力女だ。

「では……彼女はどうしてあのような嘘を?」

「嘘とは?」

僕の問いに叔母様が静かに頭を振る。

「彼女はラインリア様に『呪いをかけた』と言い張り処刑台に昇ったのですよ」

「そうですか……」

言いようの無い感情が渦巻く。

あの狂暴女はどうしてそんな嘘を?

「わたくしは最後まで自分の弟子を信じられなかった愚か者ということですね」

寂しげな表情を浮かべる叔母様の言葉に僕は心底納得した。

たぶん今思うべき言葉では無いのだろうけれど……納得した。

カミューのあの狂暴な部分は叔母様直伝なんだ。心の底から納得だ。

「ただ……」

ポツリとノイエがその口を開いた。

「彼女は護りたかったのだと思う。王妃を」

「どうして?」

目を閉じている彼女の呟きに僕が続きを促す。

「……自分が呪いをかけたと言い張れば、呪いを解けば元に戻るとみんなが思うはずだから。

だから彼女は自分が死ぬことになってもその嘘を言ったのだと思う」

「そう言われると納得できますね」

あの狂暴女がそこまで深慮深いとはとても思えないのだけど。

チラリと僕に顔を向け左目を開いたノイエの瞳には金色の五芒星が描かれていた。

つまらない事には自ら進んで出て来る賢者だな?

「それで貴女は誰ですか? ノイエではありませんね?」

「……今は内緒。無理に探ろうとすれば貴女を消すから宜しく」

クスリと笑ってノイエが無表情になる。

一瞬辺りを見渡し僕の腕に抱き付くと……スリスリと頬を擦り付けて来た。

「アルグスタ?」

「秘密ということで。あれは言ったことを実行するので」

後で苦情を言って良いよな?

お兄さま方は『何も聞いていない』と言いたげに視線を逸らして誤魔化しているしね。

「そうですか。ならば今は詮索などしないこととしましょう」

納得はしていないが叔母様も渋々認めてくれた。本当に助かります。

「ならアルグスタよ」

「はい」

叔母様が静かになった瞬間を見逃さず、お兄様が声をかけて来た。

「あの日の行いはグローディアが起こしたということで良いのだな?」

「起こそうとして起こした訳ではありませんが……結果起してしまったということなら彼女の罪でしょう」

「ではあの日、暴れた者たちは?」

「グローディアのせいと言えます。彼女が義母さんを見殺しにして何もしなければ起こりえませんでした」

間違いなくそれは起きなかっただろう。

ただ王妃が1人……亡くなったと言うだけだ。

「あ~。全く!」

腕を組んで黙っていた馬鹿兄貴が頭を掻くとパンパンと手を叩く。

扉が開いて……良くポーラと一緒に居るメイドさんが入って来た。

「お呼びでしょうか?」

「ああ」

馬鹿が苦笑する。

「グローディアに関する調査や捜索の停止を命じる」

「宜しいのですか?」

「構わん。もう探すな……時間と労力の無駄だ」

言い切って馬鹿兄貴はまた頭を掻く。

「あれを探すなら別のことをした方が良さそうだしな」

何を企んでるのは知らないが、気持ちは分かる。

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