軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

共犯に仕立てるつもりかっ!

スッと叔母様がグローディアに運んで来た椅子をすすめる。

優雅に腰を下ろした彼女は決してこっちを見ない。

自分の敵は国王だと言わんばかりにその冷たい目を向けている。

「私は昔ある人に教わった。その人は王妃と言う地位に居て子供だった私を抱きしめながらこう告げたのよ。

『ディア。私たちは何を置いても国民を救うことを第一に考えないといけないのよ』と。

彼女はこうも告げた。

『国民を護れない、愛せない、そんな人は王も貴族もしてはダメなの。迷惑だから』と」

パリパリと空気を弾けさせながらグローディアは説く。と言うより脅迫だ。暴君だ。たぶんポーラがここに居たら『かっこいいです』とか言い出しそうだ。

ふと何かを感じで視線を巡らせると、隠し通路の出入り口っぽい所から見覚えのある小さな顔が2人。王妃らしいチビ姫とウチの義妹らしいチビメイドだ。

2人揃って『かっこいい』とその口が動いている気がする。

ああ。陛下専属のメイドに見つかって追いやられたよ。

ってチビ姫は参加しても良いんじゃないのかな?

「私の目の前に居る国王はどちらの王なのかしらね?」

「……」

従姉であるグローディアの問いに、陛下は一度大きく息をして呼吸を整えた。

「グローディア。私は愚かで馬鹿な王である」

「あら? 認めるの?」

「ああ。認めるとも」

グッと強い意志のある目で陛下は彼女を見る。

「両方を救う術がない。アルグスタとノイエと国軍2,000を王都から移動させ……その隙にこの王都で『宝玉』なる物を使われでもしたらどうする? その問いを何度も自分にぶつけ解決策を見つけられない愚かな王だ」

フッと息を吐いて陛下は言葉を続ける。

「それに先日の異なるドラゴンの存在もある。アルグスタたちですら大怪我を負いどうにか退治したドラゴンがまた湧かない保証もない。国王として失格であろうが……私は王都と自治領を天秤にかけ、王都を護る方を選んだ」

ゆっくりと立ち上がり陛下はグローディアだけを見つめる。

「この地には喪いたくない者や物が多すぎる」

「……そうね」

薄く笑いグローディアは、スィーク叔母様からカップを乗せたソーサを受け取る。

「正直に胸の内を告げることをする貴方は国王に相応しくないわ」

そっと紅茶を口に運び、再度言葉を続ける。

「けれど私の従弟としては合格ね。国王になって少しは丸くなったのかしら?」

「丸くか……私の傍にはいつも私を笑わせてくれる王妃が居るぐらいだ」

「あら? 貴方の王妃様にも後で挨拶ぐらいしないといけないかしら」

ひょこっと横合いから顔を出したチビ姫を……金髪のメイドさんがその顔を掴んで押し戻した。

どこかフレアさんに似た感じの容赦のないメイドさんだな。

「でも私は知っているのよ。シュニット」

「何をだ?」

「貴方が……いいえ。王家が、あの術式の魔女を秘匿し続けていると事実をね」

ギュッと僕の手に痛みが走るほど先生が強く握って来た。

議場内が一気にざわつく。

その声を聴けば先生の価値がどれ程の物なのか理解出来る。

他国からも高い評価を得られるからこそ『魔女』と言う称号を得られるのだから。

「言いなさいシュニット。アイルローゼは何処に居るの?」

「……彼女は墓の下だ」

「そう。そう言い張るのね」

クスリと笑いグローディアがこっちに視線を向けて来る。

「"久しぶり"ね。アルグスタ」

「……ええ。グローディア様」

「あら? 貴方なら呼び捨てで良いと、この前言ったはずよ?」

とんでもない爆弾を投げて来たんですけど! 議場内の視線が容赦なく僕に!

「何のことでしょうか?」

「あら? また私の口から言わせたいの?」

「……何を?」

「前王ウイルモットは私に命じたわ。貴方と結婚し互いに見張り合えと。必要ならば殺しても良いと……前回会った時にそう言ったでしょう?」

「……」

何だ。何を企んでいる?

「それに今日のこの話し合いの内容を伝えたのは貴方でしょう?」

共犯に仕立てるつもりかっ!

逃げたい。逃げ出したい。でも……フルフルと震えているノイエの手を振り払えるわけ無いだろうがっ! あの先生が震えてるんだからっ!

「それは言わない約束のはずですが?」

「ごめんなさい。元婚約者を前に奥様と仲良くしている姿を見て……つい口が滑ったわ」

絶対零度のような視線を見るにただノイエと仲良くしている姿に怒っているわけじゃないですよね? ノイエの中の家族の愛の重さに恐怖を覚える時があるんですけどっ!

「まあ本来ならこの場所に私が来ることは無かったわ……」

彼女の視線が僕から外れ、議場内に居る貴族たちに目を向ける。

王都在住の貴族たちはほぼ全員参加しているが、領地から離れられない上級貴族も若干名居るのでそういう人たちは代理を立てている。少しだけ生活が上向いたらしいイネル君の実家は……家督を継ぐ予定の息子が立派に代理を務めている。

話しの展開に付いて行けずに目を回しているようにも見えるけど気のせいだ。

「殺戮姫と呼ばれた実力を披露して……大半は殺した方が良さそうな屑ばかりの間抜けな顔が並んでいるわね」

「「……」」

議場内の空気が格段に下がった気がする。

ニタリと笑うグローディアが軽く手をあげ……本気で掃除するの?

「お前はあの日を引き起こした大罪人であろう!」

声が響いてパチッとグローディアの傍で空気が爆ぜた。

焦げた何かがグローディアの足元に転がっている。装飾品でも投げつけたのか?

「あら何のことかしら?」

「しらばっくれるな!」

もう1人の貴族が吠える。

でもグローディアは優雅に佇んで笑うのみだ。

「私はあの日……他の者と一緒に暴れただけよ? だから咎人として処刑された。まあ生きているけれど」

「嘘を言うな! お前が異世界魔法を使いこの世界に異質な存在を呼んだのであろう!」

3人目が声を張る。

僕が知る限りその3人の共通点は……うん。分かんない。

だがそれ以外に声を張り上げる人物は居ない。他の貴族は『何の話だ?』とか『本当なのか?』と言いたげな表情を浮かべている。一番ポカンとしているのはイネル君だけど。

「どうやら3人だけみたいね」

クスリと笑い挙げていた手で髪を撫でてグローディアは冷たい目を向ける。

「拘束なさい」

「はい」

短い返事を残しグローディアの傍に居た叔母様が消えた。

ついでに騒いでいた3人の貴族も消えた。

分かってます。決して消えたわけじゃ無いってことは。

早過ぎる動きに戸惑っている隙に叔母様が高速移動して3人を確保、連行して行ったんでしょう?

本気で消えるような動きを出来るのは全力のノイエぐらいだしね。

「……今のは何かね? グローディア」

「ごめんなさいね。こっちの都合で議場内を騒がせたわ」

立ち上がりグローディアは陛下に向かい軽く会釈する。

「詳しいことはアルグスタかミルンヒッツァ家のグロームに聞くと良いわ」

「……分かった」

お兄様の目が僕のことをロックオンして外れないんですけど。

「さて……何の話だったかしら?」

また椅子に座り直した彼女が冷たく笑う。

「そうそう。アイルローゼの話だったわね? そうよね……アルグスタ?」

おかしい。今回はこんな展開になる予定じゃ無かったのに……どうやら僕にとってこの議場と言う場所は鬼門なのだろう。

全力で帰りたいんですけどっ!

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