軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

絶望的にまっ平だね

「南部は……ここまで来ると何も言えんな」

「そうですね」

纏められた報告書の山を流し読みしたシュニットは、苦々しい表情を浮かべる。

その報告を届けに来たイールアムは、何とも言えない表情を浮かべた。

前国王の味方となって領地を得た貴族たちは、他の者たちよりも優遇されていた。

もっとも優遇されていたルーセフルト家が潰えたとはいえ、他にも優遇している大貴族は居る。

「ハーフレンでは無いが、全員集めて始末したいほどだな」

「国王としては問題発言かと」

「こんな愚痴など"家族"にしか言わんよ」

「そうして下さい」

苦笑しイールアムは深く椅子に腰かける。

「ですが陛下」

「何だ?」

「我が父の蛮行を知り……それでも自分を家族と呼ぶのですか?」

「蛮行か」

顎に手をやりシュニットは小さく頷く。

「日々のアルグスタを見ていると、ウイルアム殿の行為など可愛い気がするがな」

「あれと比べてくれますな。彼はその……異常です」

「否定は出来んな」

夫婦そろって異常すぎるのがドラグナイト家だ。

何より彼らは多くの秘密を持ち……問題はまだ隠していることが多い。

「どうにかしてあの夫婦を大人しくする方法はない物か?」

「それこそ不可能にございましょう」

「そうだな」

これ以上の厄介事は勘弁して欲しいとシュニットは願わずには居られなかった。

「おねーちゃんとお出かけです~」

「……」

チビ姫の全身を使った愛情表現に対し、ノイエの反応は冷ややかだ。

本日のノイエは真っ赤なドレス姿だが……アホ毛には宝玉を乗せ、左肩にはリスが乗っている。

宝玉が無ければどこの〇の谷かと言いたくなる。

このネタが通じたのは腹を抱えて爆笑した馬鹿賢者だけだったが。

「ところでチビ姫」

「なんです~?」

「ミルンヒッツァ家の当主であるグロームさんは間に合ったの?」

「はいです~」

てっきり長男のココノさんが主催しての集まりかと思っていたが、当主であるグロームさんが出張って来たらしい。

まあ王都に来たのは宝玉と例の施設に関しての報告だろうけど。

ただ結構な強行軍らしい。

明日には登城し、陛下に謁見したら帰宅とか。

今頃陛下は明日の質問に使う資料と睨めっこをしているだろうから、本日チビ姫が代理として出席なのだ。

「会いたくないのです~?」

「あ~。何となくね」

多分今回僕ら夫婦が呼ばれたのは、共和国での一件を聞きたいからだろう。

そうなると……一応ホリーと相談して何パターンか対抗策は捻り出してあるけど。

ただ出て来たホリーは物凄く投げやりで直ぐに戻ってしまった。

何故だろうと思い色々と声をかけたけど、誰も出て来ない。

ノイエの中で何が起きているのだろうか?

「おに~ちゃんです~」

「何よ?」

「ボーっとして無いで、話し相手をして欲しいです~」

「チビ姫のキャンキャンとした声が耳に響くから却下です」

「む~です~」

拗ねたチビ姫が沈黙した。

「コホン……なら王妃として振る舞いましょう」

「お~。長く続かないんだから無理するな?」

「ええ。だったら手短に」

クスリとチビ姫が王妃様チックに笑ってみせる。

頑張ってる頑張ってる。

こうやってチビ姫も王妃様のように振る舞えるように教育するかな。

「アルグスタ様とノイエ様は何か隠しているのですか?」

「ふむ。チビ姫よ」

「はい」

「夫婦の間には秘密がいっぱいなのだよ。言えないことが多いのです。特に寝室関係は極秘なのです。分かりましたか?」

「……」

ヤバッ……寝室ネタはスベったか?

「でしたらのアルグスタ様とノイエ様は、これからどうする気なのですか?」

「どうするって?」

「2人……特にノイエ様の力はこの国に収まる物ではありません。望めばもっと大きなことが出来るかと?」

「あ~。そう言うのは面倒臭いので却下で」

「大陸を制覇できるとしても?」

「出来ないよ」

天下統一なんて漫画やゲームだけの話だと僕は思います。

何よりその後のことを考えると……ノイエとラブラブ出来ないから却下です。

「大陸制覇なんてするぐらいなら、僕はノイエを完全制覇したいです」

「……コホン。それは難しいと思うです~」

認めるなよ。

ノイエだけでも大変なのに、中の家族まで含んだら難攻不落の強者だよ?

大陸を制覇するよりも本当に難しいと思うよ。

「……アルグスタ様は本当に食えないですね」

「何か言った? チビ姫」

「気のせいです~。おねーちゃんの谷間を見つめるです~」

「それは許さん」

転寝しているノイエの正面から谷間を覗こうとするチビ姫の首根っこを掴んで引き寄せる。

思った以上に軽いチビ姫がコロコロと馬車の中を転がり……何故かドレスの上が開けて、ポロッと白い布の塊が2つほど転がり落ちた。

パットと言う名の詐欺の証拠か。

「絶望的にまっ平だね」

「うがぁ~! 国家機密を見られたです~!」

王妃の胸がまっ平が国家機密になるような国なんて……ユニバンスって本当に平和ですね。

キャンキャン怒るチビ姫に耳を塞いでスルーする。

ただ余程煩く感じたのか、目を覚ましたノイエがチビ姫を捕まえてその口を掌で物理的に塞いだ。

「あ~ノイエ」

「……」

口を塞いだままでまた船を漕ぐノイエ。

ってチビ姫の顔色が大変なことにっ!

「そうか。ドラグナイト夫妻は来ていただけるか」

「はい」

報告に来た執事の言葉に外を見ていた男性……グローム・フォン・ミルンヒッツァは、その目をまた遠くへと向けた。

「確認せねばいけませんよね……ウイルアム殿」

亡き共謀者に対し彼はそう告げた。

(C) 2021 甲斐八雲