軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おねーちゃんが王妃です~

「お腹が空いたですって? 愚民は雑草でも食べれば良いのよ」

「判定を」

「面白みに欠けます」

「オバサンの判定が、ふな~です~」

スッとチビ姫の背後に姿を現した叔母様の拳が、彼女の頭をグリグリと挟む。

「もっとこう心に訴えかける言葉を言えないのかしら? この王妃は」

「全くです」

まだ足が万全ではない叔母様が椅子へと戻る。

「さあ王妃様。もっと王妃様らしく振る舞ってみなさい」

「負けないです~!」

やる気を出してチビ姫が椅子に座り直した。

「愚民は息を吐くでない。臭くて敵わないわ」

「判定を」

「それは貴族の豚共に言うべき言葉です」

「このオバサンは~です~」

またチビ姫の背後に立った叔母様が……以下略。

「ここはアルグスタ様に見本を」

「うむ。だがここは敢えてポーラに」

「ふえっ?」

何となく一緒に居たポーラに矛先を向けてみる。

ワタワタと慌てた彼女は、身を竦ませて小さく口を開いた。

「いっいうことをききなさい」

「判定を」

「愛らしいから許しましょう」

「横暴です~。このオバサンは、なふ~です~」

背後に立った叔母様が……略。

「ではアルグスタ。どうぞ」

「うむ」

ポーラのふんわりした空気で場を和ませハードルを下げる。

そしてここはあの歴史上の伝説の名言を!

「パンが無い? ならケーキを食べれば良いのです」

「判定です~」

「流石アルグスタです。合格をあげましょう」

「はう~。負けたです~」

ガクッと床に崩れ落ちたチビ姫が石床を叩く。

流石は伝説の名言だ。異世界でも最強か。

「……にいさま。せんせい」

「「はい?」」

ポーラの言葉に僕と叔母様が、小さな義妹メイドに目を向けた。

「これはなんのしけんなのですか?」

「「……」」

はて? そう言われれば、チビ姫がどれ程優れた王妃か確認していたはずだ。

ただ何気にこのチビ姫は礼儀作法とか完璧だったので、判定を王妃らしい振る舞いへと変化した。

最初は僕らが国民となり、王妃様に陳情を申し出ていたのだが……叔母様が『面白くありません』と言い出して変更になった。

で、気づけば傲慢な王妃らしい振る舞い試験となったのだ。

「うむ。結論としてチビ姫はつまらない王妃と言うことで」

「なふ~です~。酷い結果です~」

床に転がりジタバタとチビ姫が不満を体現する。

今日の下着は青か。下着の色としては合格だが、チビ姫の体形からするとアウトだな。せめて水色にして欲しい。

「そうです~。ノイエおねーちゃんです~」

ムクッと起き上がったチビ姫がノイエの元へと駆け寄った。

「……なに?」

「次はおねーちゃんが王妃です~」

「……」

「さあどうぞです~」

勝手に話を進めているがノイエがこんな遊びに付き合う訳が無い。と言うか理解できる訳が無い。

だが何故かスッと背筋を伸ばしたノイエが、若干不機嫌そうな感じで僕たちの方を見た。

「くだらない遊びをして王家の価値を蔑む愚か者どもに死を」

「「「……」」」

辛辣を通り越して死刑判決にも似た言葉に僕とチビ姫は自然と正座した。

これは仕方ない。だってノイエが怖かったんだもん。

その証拠に叔母様も背筋を伸ばして身構えているしね。

「……アルグ様」

「はい」

「お腹空いた」

普段のノイエに戻った彼女はノイエだった。

たぶん誰かが出て来たのかもしれないが……誰だったんだろう?

「流石は王女様ね」

「煩いわよ歌姫」

「あら?」

クスクスと笑う相手にグローディアは鋭い視線を向けた。

現在ちょっとした理由でノイエの中の者たちが一か所に集まっている。

お蔭でグローディアは、誰にも見られずに中枢へとやって来た。

「アイルローゼは?」

「ここを気にしている気配はあるけれど、王女様が来たからのんびりしているわ」

「のんびりしていて欲しくないのだけれど?」

「それは酷な話よグローディア」

自分より年下なのに姉のような振る舞いが似合う歌姫にグローディアの視線が増々厳しくなる。

「ここを陣取って暴れたいだけの馬鹿者が外に出ないようにするのが、彼女があの術式を作った時の条件でしょう?」

「そうね。でも今は宝玉もある。それの管理の取り決めはしてないわよ」

「……そうだったわね」

認めグローディアは視線を巡らせる。

ノイエの左目……特に魔力が良く集まるこの場所に色々な術式や魔道具が置かれている。

最初は魔女が描いた外に出るだけの術式だけのはずだったが、今ではおかしな物が増え過ぎている。

「でも暴れたいだけの人が外に出たら大変でしょう?」

「そうね。でもたぶん平気よ」

「あら? その根拠は?」

促されてセシリーンは苦笑する。

「暴れていた人たちは行き場のない感情の捌け口を探していただけ。でも今は全員の首に鎖を巻かれている」

「鎖?」

「ええ。刻印の魔女と言う存在よ」

その言葉にグローディアも納得する。

あの化け物を相手に誰もが敗れたのだから。

「だからもう暴れないと?」

「暴れても無意味でしょう?」

「それもそうね」

納得しグローディアは歩き出す。と、その足を止めた。

「ところでみんなは何で集まっているのかしら?」

「知らないの?」

「何を?」

ずっと魔法の研究と並行して、どうノイエに謝ろうか考えていたグローディアは何も知らない。

たぶん外の様子を見たくないと……自分以外の仲間と仲良くする彼を見たくないという理由でここを離れているアイルローゼも知らないであろう衝撃の事実をセシリーンは口にする。

「ノイエがファシーを『ファ』と呼んだのよ」

「……へ~」

その声はとてつもないほど冷ややかだった。

「それはちょっと話を聞きたいわね」

「……お手柔らかに」

「ええ。大丈夫よ」

何故か指をバキバキと鳴らしてグローディアは歩き出す。

「何をどうやったのか直接吐かせるから」

「……」

胸の内でファシーに手を合わせ、セシリーンはそっと意識を外へと向けた。

内に向けると……ファシーの悲鳴が聞こえて来そうで嫌になったのだ。

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