軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あれは楽しかったわ

大陸中央・ブロイドワン帝国西部戦線

皇帝の弟であるキシャーラ大将軍の粛清失敗を機に、帝国は各所で反乱や侵攻の憂き目にあっていた。

誰もが不可能だと思っていたことを東南に存在する小国ユニバンスがやってのけたのだ。

『あの帝国領に攻め入り領土を奪い取った』

その事実に帝国から虐げられていると者たちが立ち上がった。

事実立ち上がった彼らはそれほど虐げられている訳ではない。特権を失い贅沢を奪われたぐらいだ。だが一度味わった甘い蜜を忘れることなど出来ない。彼らは兵を起こし内乱を始めた。

最初は優勢だった。

優勢に事が進み帝国に奪われた領地を全て奪還できるはずだった。

気づけば優勢が互角になり、そして劣勢に変わった。

広げた領地は見る見る萎み……最初から帝国に対し不満を持たない市民などからは掌を返された。

失うのは、転げ落ちるのは、あっと言う間だ。

ある反乱軍は山城1つに兵を集め籠城を続けたが……援軍の予定ない反乱軍は包囲されているだけで苦しくなっていく。脱走兵の数も増え、遂には降伏を申し出た。

多少の罰は覚悟の上だった。

けれど彼ら反乱軍の首脳たちを待っていたのは多少では無い罰だった。

グツグツと煮立っている大釜に仲間であった男が投げ込まれる。

絶命の悲鳴を口にし辺りに響き渡る。

手足を縛られている状況から窯の外へ逃れることは不可能だ。

つまり待っているのは煮殺されるという残忍な未来だ。

「どうかっ! どうか御慈悲をっ!」

仲間たちの絶命の声に耐えられなくなった者が、地面に頭を擦り付け懇願する。

相手は帝国軍師だ。

プラチナ製の全身鎧を身に纏った騎士のように見える相手。ただ発する声からして女性と思われる。

「慈悲と? 帝国民として十分な慈悲を皇帝陛下はお前たちに与えて来た。それなのに歯向かい逆らった。そんな愚かな虫にどんな慈悲を与えろと?」

「……せめて慈悲のある死を!」

吠える男に全身鎧がカタカタと震える。

「死に慈悲など無い。誰にも平等に与えられる権利だ。それはお前も私も変わらない」

「あのような殺され方は武人として許しがたい! どうか刃による死を!」

吠える彼に仲間たちが顔を見合わせる。

彼は将として確かに立派に戦った。けれど彼の作戦が全て相手に封じられ負けたのだ。

それなのに格好良い死を望むのは虫が良すぎる。

「刃による死か。分かった」

軍師は軽く頷いて部下に指示を出す。

控えていた兵に命令が与えられ……彼の手足に穂先がねじ込まれた。

「あがっ! ……何故?」

「刃による死を望んだのはお前であろう? だから与えた」

クスクスと笑い軍師は、愚かな男を甲冑越しに見つめる。

「さあ死ぬが良い。少々時間はかかるだろうが望んだ死に方だ。満足して、死ね」

「痛い。痛い……どうかひと思いに!」

「それは知らん。私の趣味じゃない」

言い捨て軍師は次に窯に入れる人物を適当に選んだ。

「次はその太った男で良い。ちゃんと煮て殺してやれ」

男たちは気付いた。自分たちはこの軍師の命令により嬲り殺されるのだと。

「……この時期に釜茹では避けるべきだったわね」

メイドたちの手を借り軍師は纏っている鎧を外して行く。

別に彼女は戦場に出て最前線で戦うわけでもない。

実母が心配するあまりに身に纏っているのだ。

一つ一つの部品が外され……そして1人の女性が姿を現す。

身長は女性としては高い方か。全体的にスラリとした印象の美しい女性だ。

長いこげ茶色の髪は尻まで届き、汗を拭くんだ肌着が肌に吸い付いている。

「拭いなさい」

メイドに命じれば肌着が脱がされて一糸まとわぬ姿を晒す。

丁寧に拭かれ彼女は着替えを済ませた。

「軍師様」

「何かしら?」

「帝都よりの使者にございます」

「そう。通しなさい」

「はい」

椅子に腰かけ軍師は足を組む。

やって来たのは冴えない様子の文官だった。

「お久しぶりですセミリア様」

「ええ。用件は?」

どうやら相手の言葉から察するに初見では無いらしいが、軍師……セミリアの記憶の中には彼のような凡夫の存在は残っていない。

「皇帝陛下よりのご指示でございます」

「また? 連戦続きで大変のなのだけど?」

「はい。ですがどうしてもと」

「……仕方ないわね」

苦笑し軍師は足を組みかえる。

20代中頃の見目麗しい女性の素足に一瞬使者の目が釘付けになった。

「次の戦場は何処かしら?」

「はい。東南の地……元アルーツ王国領にございます」

「実の弟を私に殺せと?」

「はい」

「自身の失敗を私に押し付けるだなんて陛下も酷い人ね」

ちゃんと大将軍を殺せる策を授けたのに、あの日皇帝は自身の身の回りを固める近衛兵を動かさなかった。

結果として兵の数が足らずに大将軍たちはまんまと帝都から逃げ出したのだ。

「なら捕らえた大将軍は私の好きにしても良いと言うことかしら?」

「はい。ただし頭だけは届けて欲しいと」

「分かった。だったら首から下は私が弄んであげる」

クスクスと笑い軍師は座っていた椅子から立ち上がると歩き窓へと向かう。

この屋敷を自身の仮宿にしたのには意味がある。

高台にあるその屋敷からは街の外が一望できるのだ。

パンッと両開きの窓を開けセミリアは外へと目を向ける。

自身の最大戦力であるドラゴン騎兵が食事をしていた。

遠目からもドラゴンたちが十分に煮立った人間を食らっているのが見えた。唯一残っているのは血が抜けて絶命している死体ぐらいか。あとは本当に美味しそうに食べている。

「ああ……あの大将軍をどう殺してあげましょうか?」

窓枠に腰を下ろして軍師は笑う。

「移動中はそれを想像して楽しむこととしましょう」

本当に楽しそうに笑う美女の様子に……使者は恐ろしくなって視線を足元へと向けた。

女狐。冷酷の軍師。冷血の軍師などと彼女を指す言葉は多いが一番知られているのは……死を弄ぶ狂女だ。彼女は自身が狩った相手をどう痛めつけて殺すのかを考え戦う。

元とから狂っているのだろう。けれどその能力の高さは比類なき存在だ。

「生きたまま枝に吊るして飢えた豚に食わせようかしら? 良いわね。あれは楽しかったわ」

どうやら一度はやったことのある処刑法を思い出し本当に楽しそうに彼女は手を叩いた。

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