軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アタシが求めていたのはこれなんだよ!

「空馬だけが戻っただと?」

「はい。馬はアルグスタ様がお乗りになってここから出て行ったものに違いありませんが」

城門を警備している兵士たちが手綱を掴まえて落ち着かせようとしているが、暴れ狂う馬は一向に落ち着く様子を見せない。

計算外の出来事が起きたことは間違いない。

「シュゼーレ大将軍。敵国の工作員に対しての制圧任務の一環として王国軍に命ずる」

「はっ」

「全て駆逐して来い。これは国王よりの厳命である」

「このシュゼーレ……命に代えても必ず」

若き宰相に 頭(こうべ) を垂れた大将軍は、待機させていた兵士100に対して行軍を命じた。

先陣を務めるのは、自分の後任として地位を譲ると決めている信の置ける者だ。

「シュゼーレ。ハーフレンの計画が狂ったと思うか?」

「……仮に相手を帝国と定めていたのなら多少の誤差はあれども、アルグスタ様が捕らわれると言うことはあり得ないはずです。

帝国からの人や物の出入りは厳しく確認しておりますし、街道でも無い野山を来る命知らずなど考えられない。そんな自殺行為が出来る者は、この国でも1人ぐらいです」

「確かにな」

野山にはドラゴンが巣を作り居座っている都合、そうやすやすと他国からの侵入など出来ないのが現状だ。

行商の中に交ざり密偵活動をする。情報収集や小規模の工作などは行えても、敵国でちゃんと警護されている要人を簡単に攫うことなど出来るはずが無い。

「だが何かが生じて計画がズレた可能性もある。シュゼーレ」

「はっ」

「アルグのことを憎く思っているかもしれんが、全力での救出を頼む」

だが老いた大将軍は、深く息を吐き頭を掻いた。

「……シュニット様。自分はアルグスタ様のことを少なくとも"憎い"とは思っても居ません」

「ほう」

「……10年前に生じたあの件は、その時から現役をしている者の心に巣食う悪夢にございます。誰もが彼らの行動を怪しみながら、でも結局何もしなかった。その罪を指摘した彼をどうして非難できましょう?」

「で、あるか」

「彼は正しくあり、そして妻を愛している若者です。老いた我らはその若者を救い朽ちて行くべき存在です。若木を育てる為の栄養となるのであれば、この老体など喜んで差し出しましょうぞ」

「……」

分かっている。将軍たちは償える場を求めているのだ。

その場を今と見ているのかもしれない。

「だがシュゼーレ。朽ちるにはまだ早い」

「は?」

「何よりアルグが許さんよ」

らしくない笑みを浮かべ、シュニットは視線を街道の先へと向ける。

「あれはお人好しの馬鹿者だ。死んで償うなどと言ったら怒るに決まっている」

「……」

「生きて償えと、最も酷な命令を下すだろうさ」

「そうですか。ならその無茶を聞くために今一度頑張りましょう」

集結を進める本隊に向け、大将軍は急ぐよう命じた。

巨躯の眼前にまで接近した閃光は、問答無用の右ストレートを放つ。

相手の中心……割れた腹筋がはっきりと見える場所へ。

「ぐふっ! ……良いね。中々響いたよ!」

相手が体を捻るようにして拳を振るって来る。

ノイエは自分の腕を戻し……腹筋に挟まり抜けない事実に気づいて、相手の拳に対して左手を向ける。

魔力の塊と拳がぶつかり合って……ノイエは吹き飛び地面を転がった。

「あはは! これだよ……アタシが求めていたのはこれなんだよ!」

全身の血肉を滾らせオーガが吠える。

その咆哮に乗じて彼女の体がまた一回り膨らんだ。

ノイエはそれを冷静に見つめ、フワッと反動も無しに立ち上がる。

ようやく相手が"人"では無いことに気づいた。

「硬い」

プルプルと殴った右手を振って、ノイエは不満げに呟いた。

完全に手首の骨が砕けているが、見る見る治癒を済ませ元に戻る。

犬歯を覗かせ笑う大女は、迷うことなく標的へと突進した。

「はっはぁ~っ!」

「っ!」

笑いながら向かって来る"敵"に、ノイエは地を蹴り体を捻って回し蹴りを見舞う。

だがその体型からは想像できないほど機敏な動きでオーガは地に伏せると、彼女の攻撃を頭上に受け流す。

「ノイエっ!」

血を吐く思いで上げた彼の声に、彼女は反応出来なかった。

体の下から草木が生えるかのように伸びてきた太い腕に胴体を掴まれたからだ。

「放し、ぐっ!」

「あはっ! このまま押し潰されな!」

ミシミシと鎧と肋骨が悲鳴を上げる。

危ないと判断し、ノイエは魔力を手に集めるとそれを相手の顔面目掛けて振り下ろす。

数多のドラゴンを屠って来た彼女の必殺の攻撃……だが相手は、顔面を潰しながらも牙の様な歯を剥いてノイエの首筋に噛みついた。

「あぐっ!」

ガリッ……プシュッ!

白い彼女の首筋が食いちぎられ鮮血が宙を舞う。

「プリプリとして美味い肉じゃ無いかっ!」

口から血液をボタボタと溢しながらオーガは笑う。

「かはっ」

噛み切られた首を押さえ、ノイエは自分の足を振り上げて相手の顔面に踵を落とす。

一瞬の力の緩みを逃さず、左の拳で相手の顔面を殴り……どうにか万力のように締め上げて来る相手の手から逃れた。

「あはは……最高だね。良いよ。こうでなくっちゃ!」

プッと口の中の肉を吐き出し、オーガはまた拳を振り上げた。

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