軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番犬

確りと相手の言葉を記憶しろ。

ちゃんと仕事をして後でずさんな計画を立てた馬鹿兄貴に文句を言い募ってやる為にもだ。

ただ今彼女は何と言った?

別の場所から呼ばれた的なことを言っていた。つまりそれは召喚術式だ。

「異なる世界から呼ばれたって訳だ?」

「そう言う話だったね。まああっちの世界はこっちより遥かに劣悪だったから、呼ばれたこと自体に文句は無いよ。

でも毎日が暇なんだ。アタシはね……ただただ戦いたいんだ。全身の血が燃え上がるほどの熱い殺し合いをしたいんだよ!」

そんなバトルマニア的な発言は遠慮被ります。

大きな体躯の化け物って……確かゲームとかだとオーガとかトロールだったっけかな?

名称が同じとは限らないけど、"ドラゴン"が居るなら可能性はあるはずだ。

「実はオーガとかトロールとか言いませんよね?」

「……」

ギロリと睨まれた。大丈夫……まだちびってない。

「オーガを知っているってことは、ヤージュの言った通り……お前、中身が違うな?」

「まぐれ当たりです」

「……別に良いよ。難しい話は勝手にどうぞだ」

右手で僕を掴む彼女はその手を持ち換え……僕の左腕を右の指で握った。

「こんな風に持っても肋骨が折れないなんて意外と丈夫だね」

「何を?」

「……もう一度言う。呼べ。呼ぶ手段とかあるんだろう? 番犬を」

「いえ。基本放置なんで」

「呼べ」

ギリギリと左腕に圧が掛かる。骨が一気に悲鳴を上げる。

痛い。痛いなんてもんじゃない。

「呼べ」

「……呼ばない」

ボキッ

ハッキリとその音が僕の左腕から発せられた。

「ぐあっ! ぁ……ぁあ~っ!」

「痛いだろう? 潰すぐらい圧を掛けたが折れれば痛いよな? お前が番犬を呼ぶまでこうして骨を砕き続ける。

生きて攫えば良いんだから、腕や足が使えなくても問題無いはずだ」

「はぁぁあああっ!」

折れた所を触れられ激痛に涙がこぼれる。

痛い……熱いぐらいに痛い。

「さあ呼びな」

折れそうだ。心の何かがボキッて。それぐらい痛い。

でも……ノイエの心はこれ以上に傷ついてるんだ!

「死んでも呼ぶか! この化け物女がっ!」

「……まだ元気みたいだね。なら次は肩でも砕いてやろうか」

「来いよ!」

左肩を掴まれ、

ポンッ!

相手の左腕が突然破裂した。

「うわ~。わたしより大きい人とか初めて見ました~」

気の抜けそうな掛け声と共に、鋭く放たれた矢がオーガ目掛けて飛来する。

だが彼女はその矢を右手で掴み……そして破裂した。

「この経費って誰に回せば良いんですかね?」

「……馬鹿兄貴にしといて」

「ってアルグスタ様! ズタボロじゃ無いですか!」

馬から飛び降りた巨乳娘ことルッテが弓を構えながらこちらに擦り寄る。

骨折はあれのせいだけど、ズタボロになったのは至近距離で破裂した術式矢のせいだと思うよ。

「フレアさんとミシュは?」

「フレア先輩は待機所から部下たちを連れて来ます。わたしとミシュ先輩とで先に馬で走って来たんですけど……色々と話が違いますよね?」

「それも筋肉兄貴に回しておいて」

怒った様子で弓を構える彼女は、ゆっくりと起き上がった相手を見て驚く。

小型のドラゴンなら当たり所さえ良ければ一発で仕留める術式矢を、2本も受けたのにケロッとしているのだ。

「アルグスタ様! あの化け物は何ですか?」

「……10年後の君ってことで」

「嘘です! あんな姿になったら、ミシュ先輩のように売れ残り確定じゃないですか!」

そっちを心配するとかどうなの?

必死に体を起そうとして、込み上がって来る咳に息が詰まる。

口の中が血の味しかしない。

「カルシウム足らないわ~」

「変なこと言ってないで次の作戦とかは?」

「無いよ。つかミシュは?」

最終手段。ミシュを餌として提供して逃げようとしたが餌が居ません。

「先輩なら苦戦している騎士たちを助けると途中下馬しました」

「恩を売って交際を迫る気だな」

「いえ……結婚を迫る気でいるんです」

騎士の人たちみんな逃げて~!

どうにか立ったけど……結局じり貧だ。

「術式の矢はあと?」

「今番えているので最後です」

「もっと持って来ようよ」

「在庫が無いんです! 文句ならフレア先輩の彼氏さんに言ってください!」

ああ。実在するんだ。出来たら一度会ってみたいものだ。

全身の埃を払い立ち上がったオーガが……あれ? 大きくなってない?

「大きくなったように見えるんですけど?」

「奇遇だね。僕もだ」

「逃げた方が良いってわたしの勘が告げてるんですけど」

「あはは。僕もだよ」

ヤバい。目の前の化け物は僕らが背伸びしてもどうにかなる相手じゃない。

何よりこっちは僕って言う荷物まで居る。

「面白い玩具だね? お姉さん……少し頭に血が上ったかな」

「ルッテ。君が悪い」

「って、助けに来た部下に対して良くそんなことを言えますね!」

言うだけなら幾らでも。

指をバリバリ鳴らしながらオーガが一歩踏み出して来た。

このままだと確実にヤバい。

「……何だ。呼ばなくても勝手に来るのかい? お前の番犬は」

「えっ?」

僕らでは無い方向に向けられた視線。

追うようにして向けると……その先には白い姿が見えた。

ユニバンスが誇る大陸屈指のドラゴンスレイヤーが確かに居た。

何で? 呼んで無いのに……どうしてノイエが?

「ダメだノイエ! 来ちゃっ」

カフッとこみ上げて来た血の塊が声を詰まらせる。

崩れるように地面に膝を突く僕の様子をまるで合図にでもしたかのように……白い閃光がオーガに向かって放たれた。

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